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イモータルニート ~異世界でも働きたくないのでネオニート目指します~  作者: 狛月ともる
第一章

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第3話

 森を抜けた先に見えた街は石とレンガで造られた城壁に囲まれており、城門は5メートル程の高さとそれなりの横幅がある大きさだ。

 遠目から大きな街だとは思っていたが、近づくにつれて城壁が中々の高さであることに驚いた。

 この立派な城壁の中に街が広がっているのか。

 いわゆる城塞都市というやつだろう。


 門は開け放たれており、そこを馬車と人が行き交っている。

 兵士が門の出入りをする者達の検問をしているようだ。

 検問の順番を待つ列の最後尾に並ぶ。

 並んでいる人達の髪色が色とりどりだ。

 パステルカラーの人がいるとファンタジーって感じがするな。

 それだけを見ると自分の黒髪が浮きそうだと思ったが、黒や茶といった暗い色の人もいるから特に髪色で悪目立ちすることはなさそうだな。


 順番を待っている間に聞こえてくる言葉は、何故か日本語に聞こえる。

 見た感じ西洋風の顔立ちの人から日本語が紡がれると、思わず日本語上手だと称賛してしまいそうになるな。


「次の人、どうぞ!」


 久しぶりの人類との邂逅にそわそわしていると、兵士さんが俺を見て手を挙げている。

 自分の番が来たようだ。

 兵士さんのところまで行くと、俺の顔をじっと見てくる。


「この辺りでは見ない顔立ちをしていますね。どちらから来られたんです?」


 ああ、なるほど。

 周りが西洋風の顔立ちばかりのようだから俺のような生粋の日本人顔は珍しいのか。


「あー、俺は東方の島国から来ました。海を越えてこの大陸に来たので、この辺りには俺のような見た目の者はいないようですね」


 本当は世界を越えてきたがな。


「そうなのですね。初めて見る顔立ちでしたので、おそらくあなたと同郷の者はこの領都ガルドニアにはいないでしょうね」


「そうですか」


 ここはガルドニアというらしい。

 領都というと、地方領主の中心都市みたいな認識かな。

 周辺で一番大きい都市なのだろう。


「見たところ旅をされているようですが、冒険者の方でしたらギルドカードを、そうでない方はその他に身分を証明できるものを提示して頂ければお通しできます。ない場合は一万ゴルドでガルドニア通行証を発行するか、通行料千ゴルドを支払うかですが……」


 やばい、身分証も金も持ってないぞ。

 持っているのはリンゴと今まで倒した魔物から手に入れた黒い石だけだ。

 それに貨幣の価値の尺度が分からない。


「申し訳ありません。身分証は持っておらず、この国の貨幣制度が分からず、お金も持ってないんです。道中魔物と遭遇して倒した際にこの石を手に入れたぐらいで……」


 そう言って兵士に大量の黒い石の入った小袋の中身を見せる。

 小袋の中身を見た兵士は、驚いた様子で目を見開く。


「これは魔石ですね。この量の魔物をお一人で討伐されたのですか……なるほど。このぐらいの大きさなら一個千ゴルドとして支払えば通行料の代わりになります。魔石の買取は冒険者ギルドでもやっていますし、魔物を単独で討伐できるような力量をお持ちなら、冒険者として活動されてはいかがですか?」


 やっぱり冒険者ギルドがあるのか。

 異世界転生といえばやはり冒険者だよな。

 とりあえず他にしたい仕事なんて思い浮かばないし、魔石を買い取ってくれるなら行ってみよう。

 まずは生活費を稼がないとな。


「ご親切にありがとうございます。冒険者ギルドに行ってみます」


 丁寧に接してくれた兵士さんに魔石を渡し、感謝から頭を下げる。


「いえ、腕の立つ方を遊ばせておくのは勿体ないと思っただけですので、お気になさらず。では――ようこそ、ガルドニア辺境拍領、領都ガルドニアへ!」


 人好きのしそうな顔立ちを笑顔に向けてから、兵士さんは次の人の対応に行ってしまった。

 異世界に来て、最初にコミュニケーションを取った相手があの人で良かった。

 優しい世界じゃないか、と気分良く街の中に溶け込んで行ったところで、大事なことに気付き立ち止まった。


「冒険者ギルドの場所、聞いてないじゃん……何やってんだ、俺」


 溜め息を付きつつも、今更戻って聞きに行くのも格好がつかない。

 兵士さんとのやりとりでほっこりしたのに、そこにケチが付くのもなんか違う気がした。

 ここは通りすがりの人に聞くのがセオリーだな。


 そう思いながら大通りを見渡すが、元来人見知り故に声をかけづらい。

 勇気を出して何人かに声をかけてみたものの、気付かれなかったり舌打ちして無視されたりした。俺、お前らに何かしたか?

 目の前を狼の顔をした人が通り過ぎていく。

 実際に見る獣人って迫力あるな。ビビッて声もかけられない。


「おい」


 革製の防具をつけて武器を腰に吊り下げてる風貌からして冒険者っぽい。

 よくよく街中を闊歩している人々を眺めるとそういう身なりをした人が多い。

 獣人がいるなら、エルフやドワーフといった種族もいるのだろうか。

 想像していた異世界に来たって感じがしてワクワクしてきたぜ。


「おいってば!」


「ん?」


 声と同時に腰に衝撃がきて振り返ったが、誰もいない。


「ここだよ!」


 真下から声が聞こえ、目線を下に向けるとこちらを見上げている翠眼が見えた。

 サラサラとした銀髪のショートカットの子供だ。


「な、なんだい?」


「……これ、落としたよ」


 子供が手に持っていたのは、俺が腰に括り付けていた魔石の入った小袋だ。

 いつの間にか落としていたらしい。

 きっと兵士さんに見せてから再度括り付けたのが緩かったのだろう。


「うわ、気付かなかった。ありがとう! これが無かったら一文無しになるところだったよ」


「……別に、目の前で落としたところ見ただけだし。それよりも、気を付けなよ。そのまま盗まれても文句言えないぞ!」


「そうだよな、本当にありがとう」


 小袋を受け取り、苦笑を浮かべる。

 しかし、落としたものを追いかけて渡してくれた上に、親切に忠告までしてくれるとは。

 失礼だが見たところ、この子は裕福そうには見えない。

 服は所々ほつれているし、少々薄汚れている。


 なのにも関わらず、そのまま持ち去ってもバレなかったものをわざわざ本人に声をかけてまで届けてくれたのだ。

 それはこの子の紛れのない良心から取った行動なのだろう。


「――そうだ。物のついでなんだが、今から冒険者ギルドに行きたいんだけど、ここに来たばかりで場所が分からないんだ。道案内をしてもらいたいんだが頼めるかな?」


「まあ……いいけど」


「本当か? 困ってたところだから助かるよ……これを買い取ってもらったらそれなりの金になるらしいから、報酬はそれからでいいか?」


 小袋を揺らしながら言うと、子供は驚いた様子で目を見開いた。


「え……お金くれるの?」


「え? そりゃもちろん。頼み事するんだから対価は必要だろ?」


 労働には対価を。タダ働きなんてあり得ないよなあ?

 俺がそう言うと、子供は少しの間逡巡した後、真剣な顔で頷いた。


「分かった。冒険者ギルドに道案内するよ」


「よろしく頼む。俺は来栖庵……いや、こっちだとイオリ・クルス、かな。君の名前は?」


「ボクは……リディ、だよ」


「そうか。リディ、よろしく」


 手を差し出すと、リディは少しはにかみながら差し出された手をそっと握った。


「……うん、よろしく」

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