第二話 本
1月12日、午後2時30分、天気曇り。僕らは、
『愛知県精神医療センター』に到着した。ハリアーから1歩外へ出た瞬間、異様な緊張感と、心地の良い静けさを感じた。父が前を歩き、その後ろを母と僕がつられて歩く。入り口の自動ドアが音を立てて開き、中に入った。
入った瞬間、そこが受付で、イスは4つほどしかなかった。父が受付をしている間、母と僕は先にイスにこしをかけた。父が受付をすまし、父も僕の隣に座り、僕は父と母に挟まれた。なぜかは覚えていないが、僕は大谷翔平の本(不可能を可能にする大谷翔平120の思考)を手に持っていた。父が言う。
「それ、自分で買ったのか。」
僕が答えた。
「うん、そうだよ。」
「たぶんおれ速読でね、まず目次を見るでしょ、そこで大体の本の構成をつかむんだ。そこからパーッと全体に目を通して、必要な情報と、気になった部分だけちゃんと読むようにしているんだ。」
父と母は口をポッカリ開けて、聞いていた。(?)
待合時間は長かった。体感でいうと30分くらい待った。ガラガラと扉の音がして、「どうぞ。」と受付の人が言った。ようやく僕らは診察を受けに中に入ることができた。
扉の奥に入ると、そこには白衣を身にまとった医師が、パソコンが置いてあるデスクの前に立っていた。その医師はマスクと黒いメガネを身につけていて、いかにも怪しい雰囲気がぷんぷんとしていた。
「どうぞ、そちらに座ってください。」
僕はデスクの前のイスに堂々と座った。その後ろのイスに父と母が座った。
「まず、ここに来た経緯を教えてください」
この一言を受け、僕は思いを言葉に"重く"乗せて、語り始めた。




