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ダヴォス会議はウサン臭いのよ

作者: 一色強兵

自ブログ用記事の転載です。

毎年この時期になるとニュースメディアが必ず取り上げる「ダヴォス会議」である。

日本でこのイベントが有名になったキッカケは、環境問題に世間の注目が集まった京都議定書関連の世界の反応を巡ってだろう。だからかれこれ30年ぐらいの寿命を持つブランドだ。


ダヴォスというのはスイスの東寄り南寄りのイタリア国境に近い小さな町らしい。

地図で見てもダヴォスにつながる道はとても幹線道路には見えないものなので、相当小さい町のようだ。

こういう町を舞台にして国際的なイベントを開催するところこそ、実にスイスらしいのである。

国際関係をビジネスにすることを発明したのはスイス人だと多くの人は信じている。

有名なのは国際連盟の本部をスイスが誘致したことだ。

欧州諸国がほとんどだった加盟各国は欧州のほぼ中心になるからいいだろうとこの提案をすんなり受け入れた。

が、加盟各国の多くはその後スイスのとった行動に驚かされることになる。

連盟本部用として割り当てられた場所は、首都ベルンではなく、フランス国境に近い辺境の地ジュネーブだったからである。

当初、スイスが連盟本部を引き受けることを了承したヨーロッパ各国はスイス政府は当然首都ベルンに国際連盟本部を構えるものと想定し、在ベルン大使館に国際連盟代表の役割を任せるつもりだった。

ところがそれがジュネーブになった。

ドイツに近いドイツ語圏にあるベルンからフランス国境に接したフランス語圏ジュネーブに至る経路は長く、そんなに簡単に行き来できるものではなかった。

だいたい言語が違うからさすがに外交という万全を期さねばならないところで、同じ人材で対応するというのも無理がある。

ということで、加盟各国は国際連盟専用の大使館を新たにジュネーブに構えることになった。

かくして辺境の町ジュネーブには国際連盟加盟各国の大使館が軒を揃えることになったのである。


要するにスイスの思惑は、国際連盟本部誘致によってジュネーブ地区の村おこしをしたかったわけだ。


このコンテキストを知っていると、ダヴォス会議の本質がよくわかる。

毎年こんなド田舎に世界の著名人を招き会議をやる最大の意義、それは村おこしなのである。


この会議を主催しているのは民間のイベント企画会社だ。

見本市などのプロデュースに長けた会社は欧州には多いが、そのうちの一つである。

いわば現代最新の知見という情報を商品に見立てた展示会と思えばいいだろう。

まったくうまいことを考えたものである。


情報の発信者として世の中には二種類の人間がいる。

情報を求められる人と求められない人だ。

例えばG7主要国の首脳の出す声明は価値が普遍的にあるが、そういう価値を持てる人は限られている。一方、その他多くの情報発信者は自分の情報を出したいとは思っているものの、それがなかなか多くの人に行き渡らないことを嘆いている。

なら、見本市として一同に並べるようにすれば、その問題に関する地球上のすべての好奇心を集められ、金を落とすのではないか、と考えたわけだ。

なので、このダヴォス会議は、ほんのわずかな無料招待される著名人と、高額な参加料を支払って世界中からやってくる一応それなりの著名人が集まるものとなっている。

いくら多いと言っても著名人だけなのでそれほど大きな人数ではない。警備などの都合を考えても大都市でない方がいろいろ対応しやすいということもあるのだろう。

そして出席者以上の人数でやってくるのが世界中のメディアである。もちろんこれも有料。行ってみれば見本市にやってくるお客さんだ。

かくて情報を商品とする見本市として、国際会議は商売になると示してみせたわけだ。

実は以前働いていたところで、このダヴォス会議の開催案内パンフレットが送られてきて、その出席料金の高さに驚いたものだった。当時は情報の値段なんて全く意識していなかったし、ダヴォス会議のこともそもそも全く知らなかったのである。

スイスにある自社の関係先にこのイベントは何だと聞いてみたら、スイス人は全然誰も知らないイベントなので無視していい、みたいな返事をもらったものである。そう、ダヴォス以外のスイス人の多くには関係のないイベントとなっていることが多いのだろう。


こういうイベントを成功させてしまうこと自体、国際関係を手玉にとるスイスのしたたかさの面目躍如ということなんだろう。


ところでじゃあ、ダヴォス会議で取り扱われる情報ってどうなのよ、が次の問題である。


政治家という商売は、誰に向かって何を言うかを常に計算している生き物なので、母国にいる時は慎重に言葉を選ばざるを得ない。が、外国で、しかも外交関係とかを全く考慮しなくていい場となると、相当タガが外れる、と見ていいだろう。出身党の地元県人会に出る気安さとまではいかないだろうが、本音に近い発言がでやすかろう、というものだ。首脳クラスともなればまず間違いなく無償の招待出演なのでテーマとか意義とかについて、それが重要だと語るぐらいの役割依頼はあるかもしれない。つまり会議自体の価値ランクの保証である。

なので彼らの発言はほとんど全部リップサービスになる。もちろん誰かに何かを約束するような話は絶対にない。

そして有償で発言機会を得た財界人、学者、作家などの著名人の皆さんは、もう、最初に高い出演料を払ってる時点で、何らかの経済的利益に結びついて、この場に登場していることは間違いない。

つまり最初から何らかのバイアスのかかった意見を吹聴しに来ているわけだ。

どこにどういう意図があるにせよ、あるテーマに対して知識が深まるのは悪いことではない。一般的には、だ。

だからこの会議はその価値が認められその動向が世界各地に報じられるのである。


が、これには弊害もある。

特定の政治的動機を持つグループがあたかも全世界の潮流になっているかのように演出ができる、ということだ。

その代表例が地球環境問題における二酸化炭素規制、化石燃料規制である。

科学的知見として確立してるわけではないが、確立していることにしよう、という政治的意思の現れと見ていいだろう。

ダヴォス会議での議論から国連が一連のSDGキャンペーンを大々的に始めたことはまだ記憶に新しい。

なぜ国連がこれほどまでに二酸化炭素にこだわるのか、逆に不思議になったほどだが、とにかく世界の多くの人に地球の温暖化と二酸化炭素の排出量の間には明確な関係が認められているんだ、と誤解させたことは間違いない。


普通は客観的かつ普遍的なデータがないと公論にはならないのだが、このダヴォス会議の胡散臭いところは、ロクなデータが無くても公論化できる、ということは覚えておくべきだろう。





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