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ホタルノヒカリ

西暦2235年。この世代の人間たちは夏の夜、光り輝くホタルを知らない。

南の町ロウアーシティ。そこに住む少年・カルマはその昔、夜空を光で彩ったホタルに並々ならぬ興味を抱いていた。


「本当にその虫は光り輝くのだろうか?」


カルマは是非ともこの目でその虫を見てみたいと思っていて、この日も図書室でホタルに関する沢山の

本を読みふけっていた。


………すると。




「あー、いた!!」

「……あ。」


一人の少女が、図書室に入ってきた。

彼女はミライ。カルマの幼馴染である。


「またこんなところでそんな本読んで…!!」

「だって…」

「だってじゃない、最近いっつもホタルの本ばっかりじゃん!」

「気にならない?ホタルだよ?光るんだよ???」

「でも昔の生き物よ?今はいるわけないじゃない。」


ミライは現実主義である。

昔の生き物に思いを馳せるのは夢物語と思うのも無理の無い話なのかもしれない。

だが、カルマはずっと黙っていた。




家に帰ってから、カルマは庭に広がる森を見つめていた。

その場所は「ホタルの森」と呼ばれていて、かつてホタルが住んでいた所だったのだ。

カルマの視界に、祖父の姿が目にはいった。






「じっちゃん。じっちゃんはホタルって知ってる?」

「ん?」

「ホタルだよ、昔いたんだろ?」

「んー…。」


祖父はなんだか会話をはぐらかしている感じだった。

だが、カルマの祖父は知っているはずなのだから


なぜならこの日の夜、祖父は人知れず森へ出かけていったからだ。

何も知らないのならなぜこのような事をする必要があるのだろうか?


カルマは、こっそりと祖父の後をつけてきた。

だが、そんなカルマの肩ととんとんとたたいたものがいた。



「……!」

「わたしよ、カルマ。」

「あ・・・なんだ。」

「なんだじゃないわよ。」


カルマの後ろにいたのは、ミライだった。


「あんたが森の方に行くのみたからついてきたのよ!」

「なんで?」

「つれてかえるため。」

「はぁ?」

「こんな時間に森に行くなんて危ないし、こんな所に来たってどうせいないんだし。」

「ホタル?」

「そうよ、だからさ、帰ろう?」

「やなこった。」

「カルマ!!」



踏み出そうとしていたら祖父はとっくに居なくなっていた。


「あー!!」

「何よ?」

「じっちゃんがいない!!」


祖父がいなければ身動きが取れない。


「ちょっと、どーしてくれるんだよ!!」

「私のせい?!!」


二人は喧嘩を始めたが、騒いでいると

後ろから大きな音がした。


ゴロゴロ…というおおきな物音である。



「な…なに?」



音の正体は、大きな岩がこちらに転がってくる音だった。


「ちょっと、なによアレ!!」

「走るぞ!!」


「え…うん。」


ミライは突然カルマに手を握られドキっとしていたが、カルマは気づいてないのか構ってないのか

そのままミライの手をひいて走った。


そして二人は全速力で走った。

森の奥まで全速力でずっとずっと……。



「きゃ…」




だが、ミライは転んでしまう。

それでもカルマはその手を離さず手を引いておこしてくれた。


そして…。



「大丈夫、ミライ?」

「……うん、…アリガト。」



…と、その瞬間。

周りが淡い緑色に包まれた。


緑色の正体はホタルだ。

ホタルが現れて、元気に飛び交っていた。

まるで…素直にありがとうを言った、ミライの言葉に反応するかのように……。



「きれい…これは…?」

「ホタルだ!」

「え?」



呆然としている二人に突如、声がかけられた。


「お前たち、そこで何をしている?!」

「「!!」」



声の主はカルマの祖父だった。


「じゃっちゃん!!」

「…カルマ……。」




祖父がここにいることで、すべてを証明している。

彼は知っていたのだ。


ホタルが絶滅などしてはいないことも、

この場所でしっかりと僅かではあるが頼もしく生きていることも……。



「お前たち、ひとつたのまれてやってはくれないか?」

「何、じっちゃん?」

「ホタルのことは、誰にもいわんといてくれるか?」

「どうして?」

「この森を他の連中にはいられたくない。ホタルたちを静かに暮らさせてやってくれ。」


その言葉にミライは気がついた。


「じゃあ、あの大岩…。」

「ありゃ、わしが仕掛けたトラップや。」

「ひっでー、俺たち危うく下敷きになるところだったんだよ?!」

「勝手についてきたくせに何を言う、ドアホが。」


「まぁまぁ、いいじゃない。ホタルのことは誰にも言わない。

 あんなすばらしいものが見れたのだもの……それに……。」


ミライはその先は言わずに頬を染めていた。

だが、カルマは気づいていない。


「なに?」

「別に。」

「うそ、なに?」

「言わない!」

「……なんだよそりゃ。」






こんにちは☆

あさくまめぐみっす(笑)


これは、漫画に起こそうかと暖めておいたの話なのですがそのまま放置されていたやつをアレンジして書き起こしてみました。


少し不思議な気分になるようなイメージで書いたんですが、楽しんでいただけたら幸いです☆



では、短いですがこれで。

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― 新着の感想 ―
[良い点] とっても心にしみる良いお話でした。 結局ホタルが森の中へ行ってしまったのも 人間が原因なんでしょうね。 [気になる点] カルマは是非ともこの目でその虫を見てみたいと思っていて、この日も図書…
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