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家に着いたようだ
3階建てのアパートの2階
辺りは静まり返っている
ポケットから徐に鍵を取り出し開けた
彼女はドアを開いた
金木犀の甘い香りがふんわりと漂った
部屋に入ってすぐに私は風呂場まで連れていかれた
石鹸を泡立て優しく擦っている
暖かいシャワーを浴びせてくれた
汚れが全て落ちてゆく
心も身体も浄化された気がした
蝶柄のタオルで私を拭い
リビングまで連れていった
白と黒で統一されたシンプルな部屋だ
5cmほど開いた窓から夏の夜風が流れ込む
彼女は私をソファの上に置き
キッチンへと向かい歩いていった
1、2分ほど経っただろうか
食べやすいよう4等分にされたトマトと
皿に移されたミルク
私は貪るようにトマトを食べた
口の周りがほのかに赤くなった
ちゃぷちゃぷと舌で器用にミルクを舐めた
ほんの僅かな時間で全て平らげてしまった
もっとゆっくり食べればよかったと後悔した
初めて満腹というものを知ることが出来た
しかし私はそれ以上に
心の底からの幸福を感じている