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 ヒューマン、エルフ、コボルト、オーガ、ドワーフ

 これら5種族が国を作ることとなった。


 これからは多様性の時代だ!


 自分たちの国を欲したヒューマンたち

 途方もなく永く続く因習の数々に疑問を呈したエルフたち

 毛色が違うと差別されてきたコボルトたち

 力だけですべてが決まるルールに疲れ切ったオーガたち

 洞窟の外で暮らしたいと願ったドワーフたち

 

 それぞれのはみ出し者たちが一堂に会し、共に住む国を作り上げることとなったのだ。


 まず初めに、それぞれの種族のリーダーたちが集まって、国のシンボルを決めようという話になった。


「多様性の象徴として、虹はどうだろうか」


 ヒューマンのリーダーがそう提案した。エルフ、コボルト、オーガのリーダーたちは賛成した。

 しかし、ドワーフのリーダーは反対した。


「多様性の象徴は地脈の宝石だろう」


 そう言って譲らなかった。


 他の4種族は、多様性の象徴である虹に理解を示さないドワーフを許すことができず、ドワーフと争いになった。

 

 そうしてドワーフは国からいなくなった。


 国のシンボルが虹に決まった。


「では国の旗に虹を描く為に塗料を用意しよう。」


 そう言ってヒューマンは必要な色を挙げていく。


「まず、一番外側にくる赤色の塗料が一番沢山必要だ。そしてその次にくるのは橙色で……」


 ヒューマンがそこまで言った時、オーガが口をはさんだ。


「赤色の次に強いのは青だろう。橙色にするべきではない」


 そう言って譲らなかった。


 他の3種族は、多様性の象徴である虹に強さを持ち出したオーガを許すことができず、オーガと争いになった。


 そうしてオーガは国からいなくなった。


 赤の次の色は橙色になった。


「それでは気を取り直して他の色も挙げていこう」


 そう言って、ヒューマンは橙色の先を続けた。


 黄色、緑色、水色、青、紫。

 

 すべての色が出尽くした、と思ったところで、今度はコボルトが口をはさんだ。


「あれ、虹には灰色も入っているよね?灰色も入れるべきだよ」

 

 そう言って譲らなかった。

 

 他の2種族は、多様性の象徴である虹に他の色を入れようとするコボルトを許すことができず、コボルトと争いになった。


 そうして、コボルトは国からいなくなった。


 虹の色は七色に決まった。


「じゃあ、実際に旗に描いていこう」


 ヒューマンはそういうと、塗料を使って、旗にアーチ状の虹を描いた。

 描かれた虹を見たエルフは口をはさんだ。


「虹は聖霊樹様の御後ろに環となって現れるものです。かような形ではありません」


 そう言って譲らなかった。


 ヒューマンは、多様性の象徴である虹の形を変えようとするエルフを許すことができず、エルフと争いになった。


 そうして、エルフは国からいなくなった。


 そしてとうとう国のシンボルができあがった。


 赤色、橙色、黄色、緑色、水色、青、紫。この七色が重なったアーチ状の虹が描かれた旗を見てヒューマンの長は満足そうに微笑んだ。多様性の象徴である虹を正しく描くことができた。これからはこの虹が、この国を正しい多様性へと導いてくれるだろう。

 

 虹が描かれた国旗は、多様性の名のもとに高々と掲げられた。

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