62話 お肉パーティーとお風呂
「お、おおおおおお母さんどうしようどうしよう……」
「あああああ慌てないのよゆず、慌てないの、お肉は逃げないわ……!」
「……きゅい……」
ダンジョンといろんなことでテンションがおかしくなってた僕。
帰り道、スーパーで食材買おうとしたときに「今日くらい豪華で良いんじゃないですか? 初任給ってやつみたいなもんですよ?」って光宮さんにそそのかされたんだ。
あれは悪魔のささやきだったんだ。
や、あのときの彼女の目つきは小悪魔だった。
だって、そんなのを目の前に――特売のお肉が並んでいるところで言うから。
しかも、平べったくって1枚がでっかいお肉が。
「半額……半額……」「お肉……お肉……」「じゅわっと肉汁が……」って耳元でささやかれ続けて、気が付けばカゴに一緒の野菜とかを放り込まれてた僕に、抗うすべはなかった。
なかったんだ。
「で、でででででもこれ、2人の1食でい、いいいちまんえん……!」
「だ、だだだだだ大丈夫よゆず、お店で食べたらこの何倍になってドリンク代も請求されるわ……!」
「きゅ……」
僕たちは戸惑っている。
だって、万超えの食事なんて……1ヶ月分の食事代だもん。
普段は近所の人からもらったりするお米やお野菜とかとスーパーの安いのでうまくやりくりしてるのに。
あと、普段はお母さんが具合悪くってろくに食べないから、実質1人前と半人前くらいだし。
「お、おおおおお母さん焼くよ焼いちゃうよ、1枚換算何百円の薄くって平べったいお肉を……!」
「れ、れれれいせいによゆず、お肉は逃げたりしないわ……!」
「きゅひ」
ああ。
こんなときに光宮さんが来てくれてたら、上手に焼いてくれてたのに……シフトあるからって帰っちゃったから。
うぅ……光宮さんのいじわる。
あとで食べる前の写真、送りつけてやるんだから。
◇
「ふわぁぁぁぁ……」
「ふわぁぁぁぁ……」
「きゅひ……!」
お肉を1口……お箸で半分に千切れる柔らかさのそれをほおばったお母さんが、田中君が持ってるようなえっちなマンガに出て来る顔してる。
田中君はそういうのが好き。
だって家に遊びに行ったとき、あちこちに落ちてたもん。
興味深くって読んでたら怒られたっけ。
あれがえっちなのっていう顔なんだ。
なんで女の子たちがあんな顔するのかさっぱりだけど、男と一緒に裸になるとああなるんだよね。
でも、今はただ食べてるだけのお母さんは、そんなえっちな顔してる。
しょうがないよね。
だっておいしすぎるもん。
おいしくてもえっちな顔ってのになるんだ。
「んぅ……ゆずぅ……」
「おかあさぁん……」
「き゛ゅ゛っ……」
自然と出る涙、真っ赤になる顔、にやけちゃうほっぺた。
多分僕も、今、おんなじ顔してる。
だって僕はお母さん似で、よく姉妹に間違われるんだもん。
だからきっと、僕も多分えっちな顔してるんだ。
でも男のえっちな顔なんて需要無いはずだから大丈夫。
お母さんのはあるだろうから、早く再婚相手見つけてほしいなぁ。
「うぅ……こんなの、もう10年ぶりよねぇ……」
「僕はもう初めてだよぉ……おいしいよぉ……」
「……! ……!」
食べるたびに流れる涙。
きっと、食べてる味はちょっとしょっぱい。
「ゆず……嬉しすぎておかしくなっちゃうから、野菜で気を確かにするのよぉ……」
「うん……がんばる……がんばるよぉ……」
「………………………………き゜ゅ゜……」
◇
「……お母さん、生きてる……?」
「生きてるわぁ……」
僕たちは何回も意識を飛ばしつつお肉を平らげた。
1万円を平らげたんだ。
「お母さん汗びっしょり……」
「ゆずも……」
「 」
涙と汗でぐしょぐしょになってる体も、おいしさの後で気だるくてなんだか気持ちいい。
「このままお風呂入ってくる……気持ち悪いし……」
「あ、じゃあ私も……」
「 」
「 」
「………………………………」
「……!?」
僕たちはふらふら歩きながらお風呂場へ。
「おかあさぁん……つえ、なくて平気ぃ……?」
「だいじょうぶよぉ……言ってるでしょぉ、妙に元気なんだってぇ……」
「きゅっきゅっ」
ばさっと服を脱いで洗濯カゴへ。
隣ではお母さんもおんなじことしてる。
「……ゆず、すっかり女の子ねぇ……」
「だって、おまんじゅうに吸われて乳首痛いし……お母さんと光宮さんにぱんつだって……」
「きゅきゅきゅきゅ」
ああ、お風呂、入れといて良かったぁ……。
「……ゆず?」
「? なに?」
じゃばあー。
2人で狭い湯船に浸かって、ほぅっとする。
「きゅひ」
……ついでにおまんじゅうも、いつの間にかお風呂に入ってきてて、いつもみたいにお湯に浮かべたタライの上で、こっち見てる。
「……その……おっぱい、大丈夫……?」
「え? あ、うん。 おまんじゅうに噛まれたからちょっと痒いけど……季節の変わり目とか、いつもあることだし」
お湯でしばらくとろけてた僕たちは、だんだんと普通になってくる。
真正面に座ってるお母さんは、普通を通り越して心配そうな顔をしてくる。
あー、うん。
男のおっぱいがこうなってたらねぇ……小学校のころの光宮さんみたいだもんね。
「それにしては……その……」
「毎晩噛まれてるからねぇ……虫刺されみたいになってるんだ。 赤くて膨らんでるけど、ちょっと腫れてるだけだよ」
しかもいちばんじんじんするとこを刺された感じになってるから、いちばんじんじんじくじく痒いんだ。
「……下は……ちゃんとついてるわね……」
「もう、お母さんってば。 今朝も光宮さんと見たでしょ」
普通の家は、男子は、こういう話をお母さんとしないらしい。
さらに言えば、お風呂にも入らないらしい。
友達に「高校生になっても一緒に!?」ってびっくりされてようやく知ったんだ。
でも。
僕にとって、たったひとりの家族だから。
光宮さんの家族やご近所さんたちも優しいけど、でも、やっぱりお母さんは特別なんだ。
あと、お母さんってこと除けば僕のお姉ちゃんみたいな見た目だし。
僕を何歳か成長させた……いやいや違う違う、あくまで女の子として成長した場合にってことで。
「? ゆず?」
うん。
どう見ても高校生女子だもんねぇ、お母さん。
光宮さんの制服、似合いそうだし。
光宮さんより胸が小さいから大丈夫なはずだし。
「……それにしても……おひげもそうだけど、お毛毛も生えないのは私の遺伝のせいなのかしらねぇ……」
「下は別にいいけど、ひげさえ生えたら男に見られるのになぁ……」
「ぎゅい」
「……お母さんはこの見た目だから、男の人捕まえるの苦労したわぁ……お父さんも、捕まえたけど逃げちゃうし……」
「止めてよ、ロリコンのお父さんなんて気持ち悪いし」
「きゅい゜!?」
お風呂でのんびり。
こういうのも、たまには良いよね。
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