60話 「お友達の優しいゆずきちゃん」2
「ゆずきさん……ユニコーンを所持したテイマーでしたね」
「うん……あれ? お母様、よく覚えてたね」
「ええ、少々気になりまして……」
ユニコーンって名前のお馬さん。
おまんじゅうちゃん。
なんていうか、日曜日の朝楽しみにしてるアニメとかに出て来る、魔法少女たちの横に居そうな見た目のモンスター。
モンスターって呼び方が全然似合わない、かわいいぬいぐるみさんみたいなの。
ふかふかしてて柔らかいし、きゅいきゅいかわいいし。
……どう見てもまだご本に出て来るような神話のお馬さんとは似てないけど、なんでも「お姫様」じゃないと懐かないって言う神獣さん……のモンスター版なんだって。
まだほとんど確認されてなくってよく分からないモンスターさんなんだって。
「あれ? でもひなた、ユニコーンって名前、この前思い出せなくてお話しできなかったのに……」
「……テイマーさんは、珍しいのでしょう? ですから、調べたんですよ」
「へー」
そうだ、私も調べようって思って忘れてたんだった。
でも、あやちゃんとりおちゃんが教えてくれたからいいや。
「……あ! あのねあのねお母様、ゆずきちゃんってば高校生さんだったんだよ!? ひなたより2歳くらい上なのかなって思ってたけど高校生さんだったんだって!」
「……先日は、6年生か、中学生くらいと……」
「そうなの! そう思ってたの! どう見てもそうなの! なのに違ったの! あれで高校生さんなんだって!」
初めて聞いたときのびっくりさが戻って来ちゃった。
だって、ゆずきちゃんだよ?
いつも……まだそんなに会ってないけど……ぽわぽわしてて、話してる途中でも気が付いたら遠く見てて、話し聞いてないことあって。
しゃがんでるって思ったら「地面の形見てた」とか言うし、はぐれかけたら「なんかこっちにある気がして……」とか言うし。
ほんとにもう、年下の私でもはらはらするもん。
そんな子が……高校生さんなんだって。
あんなにランドセルが似合う子なのにね。
電車で、私とおんなじ制服着てぼーっと立ってても違和感ないのにね。
「後輩さんだって言うりおちゃんが高校生さんだから、ほんとに高校生さんなんだって思うけど……でも、どう見ても中学生さんか、6年生さんって感じなの!」
だって女の子なのに、あんなに綺麗な髪の毛なのにまとめたり綺麗なカットお願いしてないし、理央ちゃんみたいにおしゃれな香水とかつけてないし。
あ、でも、前髪のヘアピンはかわいくて似合ってるけど。
お洋服だってかわいい系だし、お胸無いし、ふともも細いし、だから絶対私とそんなに変わらないって思ってたし、今でもそう感じるもん。
「ひなたさん。 人の外見をそこまで言ってはいけませんよ」
「あ、ごめんなさい。 悪い意味じゃないの、ただ本当にかわいくって」
「……恐らくは、新設の飛び級制度の対象なのでしょうね。 ひなたさんの場合は、おばあ様が『健全な精神を養うために』と学校にお断りしましたけれど、ひなたさんだって強く望めば、今ごろは最大で3学年飛び級していましたし」
「だってお友達がみんな居なくなっちゃうし、周りはみんな中学生さんだもん……」
「ええ、分かっていますよ」
お母様が言った飛び級って言葉で、なんかしっくり来た。
そっか。
ゆずきちゃん、私とは違って飛び級したんだ。
……周りにお友達がいないのに、それでもお勉強がんばりたかったんだ。
「ゆずきちゃん、偉いんだね」
「ええ。 ですから見た目と年齢のことはあまり。 ね?」
「はーいっ」
ゆずきちゃんは、何学年飛び級したんだろ。
私みたいに3年くらいかな?
あ、でも、りおちゃんが「せんぱい」って呼んでるから、最低でも高校2年生さんだよね……じゃあ4年くらいかも?
「……4年も飛び級とかってすごい!」
「ええ。 ひなたさんも、負けていられませんね?」
「うん! 先生に、もっと先のところまで宿題出してもらうように頼んでみる!」
そう言えばゆずきちゃん、話す内容、頭良いもんね。
話し方はのんびりしてるけど、結構難しいこと話してることあるし。
あれは頭良い子の話し方。
お友達の、よくご本呼んだりしてる子の感じ。
「……あ。 お母様、実はね」
「あのこと」を思い出しちゃった私は、お母様に向き直って叱られる準備。
お母様はとっても優しいし、優しく叱ってくれる。
だからこそ、こうしてちゃんと顔を見なきゃいけないんだ。
「私。 ゆずきちゃんが、生活に困ってるって聞いたんだ」
「……それで?」
「うん。 だから、私のおこづかい……今年に入ってからあんまり使ってなかった分も、それ聞いてすぐにまとめて渡しちゃった。 なんにも考えないで」
「………………………………」
そうだ。
そうだよ。
お父様やおばあ様たちがくれるお金が多いし、学校のお友達もおんなじくらいだから忘れてたけど……ひなたのお家、お金持ちなんだった。
「ゆずきちゃんが、これで元気になれば良いなって思っちゃって。 ……よく考えたら、まだ会ったばっかりの子なのに。 よく考えたら、あんなお金、お友達でも簡単にあげちゃびっくりされちゃう金額なのに」
偉いとか悪いじゃなくて、単純にお金があって、ひなたにくれる。
使ったお金は、ときどき報告させられる。
「それをどう使うかまでが、おこづかいです」って。
「……学校の子たちも私も、普通の家の子じゃないんだって……ゆずきちゃんのお話聞いたばっかりのときは、忘れちゃってたの」
私たちは、行く学校とかお仕事も、ある程度決まってる。
同級生の子によっては、小学生でも結婚相手も決まってる。
中学とか高校で留学決められてたり、髪型とかお休みの日の服装までなにもかも。
そういう子だって多い。
私だって、それなりに窮屈。
……その代わりの、貰えるお金。
良い悪いじゃなくって、それが私たちの人生。
それは、分かってた。
……分かってたのに忘れちゃって、ひなたは――。
「……それで?」
「そしたらね。 ゆずきちゃん、お金、すぐに返してきたの。 『このお金は、受け取れない』って」
そこから私は、思い出せる限りにがんばって、ゆずきちゃんが言った言葉をお母様に話した。
お友達なら、そういうことはしちゃいけない。
お友達だからこそ、しちゃいけない。
お金をあげてもらう関係は、お友達じゃなくなっちゃう。
お友達には、そう言うことをしちゃいけない。
「……だから……だからっ」
「……がんばりましたね」
言ってるうちに涙が出て来て、止められなくて。
でも、ゆずきちゃんが教えてくれたことは絶対に伝えなきゃって、つっかえつっかえになっちゃったけど、がんばって言い切った。
「うぇっ……おかぁさまぁ……」
「ダンジョン。 良いお友だちと会えて……とても、良いお勉強をしましたね。 学校では学べない、大切なことを……ね」
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