518話 ひなたちゃんが来た
――ぴこん。
ダンジョンの中で、電子音が鳴る。
【モンスター討伐Pと交換可能です】
「? なんだろ、これ」
どこかで反撃に転じなきゃいけないって分かりつつも、僕は新しく解放された要素に目を奪われる。
ゲームとかって最初はできることが少ないけどもだんだんとアンロックされていく要素があるよね。
僕はそういうのが好きなんだ。
「……ユズ様?」
「みえないめがみから、こえ、きいてる」
目の前のUI画面をタップしてスクロールしていく。
モンスター討伐P――ポイント。
気がつけば魔王軍のモンスターを500、ミサイル(ブレスみたいに遠距離攻撃扱いらしい)を同じくらい迎撃してたらしく、ずらっといろんな効果が並んでいる。
その数……少なくとも数十。
「すぐには決められなさそう……僕、こういうのを書き出してバイト中に見ながら考えるの好きだったし……」
――ぴこん。
【おすすめ機能に従いますか?】
おすすめ。
この、ゲームみたいなシステムさんからのおすすめ。
……これは、あの女神さんが作ってたゲーム――に関係があるもの。
あのゲームもなかなかに歯ごたえもあったし、オート配置とか戦闘とかも普通に良かった気がする。
それに、あの子が悪いものを作るはずがない。
だから、
「はい、おすすめで」
【了解しました】
ぴこん。
僕は、どこからか聞いているらしいUIさんへ返事をした。
◇
「うん、そーっと、そーっとね」
――そっ。
ひなたたちが「エリーの遺灰」を、丁寧にクーラーボックスへ収納していく。
「ごめんなさい、魔王様たちの私物をお借りしまして」
「良いんだ、嬢ちゃんたち。……久しぶりに心が洗われた」
「やはり魔王様の宥和政策は正しかった……ああ。人も魔も、心が在るのだからな」
幼くして慈母の瞳をたたえるひなたがエリーの灰(ただの埃)(数年分の埃の山)を収めたクーラーボックス(異世界産)を撫でる姿を、周囲に集まり――それを提供した魔族たちが、静かな目線を送る。
【魔王たち……】
【やさしい】
【強いからこそ余裕があるってやつか】
【あー】
【まぁあの魔王ちゃんに従ってる連中だしなぁ】
【それにしてもひなたちゃんが健気すぎて】
【ぶわっ】
【なかないで】
【ただただ、エリーちゃん(灰)を慈しんでる……ママかな?】
【ままぁ……】
【サキュバスなユズちゃんと幸せな生活をしていただけのひなたちゃんが、どうしてこんな目に……】
【あの 百鬼夜行】
【お前には人の心ってのがないのか?】
【この悪魔め】
【魔族よりも心が無いだなんてかわいそうだな】
【そこまで言う!?】
【草】
【ごめんね】
【でも、ひなたちゃんがあんまりにもかわいそうでね……】
多少は落ち着きを取り戻したものの、柚希に従っていたエリー――サキュバスにして魔王の末席には手の届く存在が、一瞬で灰になったという衝撃は、なおも魔王城と配信先を動揺させ続けている。
【あ、また出海道の浮遊ダンジョンたちが】
【特に悪さしないみたいだからほっといていいだろ】
【そうだけど……】
【さっきみたいに、空に浮かび上がったダンジョンが回転してモンスターたちが地面へ雨のように降り注ぐ絶望の光景はもうないんだ】
【草】
【悲しいけど笑っちゃう】
【映像見たら吐き気と嗚咽を引き起こすがな】
【そらそうよ……】
【あんなむごいことを……ユズちゃん、どうして……】
【子供って残酷だからね】
「……女神は?」
「それが……メイドたちが、見失ったと」
「城内の索敵網にも引っかかりません。……敵対的でないということで、戦闘警戒には入っておりませんが」
一方で、魔王サイドの大半は城じゅうを駆け回っていた。
「ちょうちょに導かれてふわふわひらひらと歩き回った挙げ句に消えた女神」のことを。
【ちょうちょか……】
【ちょうちょだもんなぁ……】
【ちょうちょならしょうがない】
【とっくに羽ばたいてそう】
【まぁあの黒ロリ女神、来たのもわりとノリみたいなとこあったし】
【草】
【子供は純粋だからね】
【ユズちゃんの友達だからな!】
【すげえよ、ユズちゃん……羽ばたいた先で神様とお友達になるだなんて】
【だから早く帰ってきて……あとエリーちゃんどうにかして……】
【草】
【なかないで】
【あんのちょうちょ……どこまで行ってるやら】
「――――――あ」
「ひなたさん……?」
「そっとしておいてあげましょう、あやさん。ひなたさんは、エリーさんに懐いていましたから……」
ひなたがおもむろに――「何か」に気がついて立ち上がる姿を、引き留めない判断をした優たち。
【ぶわっ】
【ひなたちゃん……】
【優ちゃんたち大人組の愛情が光る】
【おっぱいとロリ趣味男装っ子だからな……】
【草】
【やめたげてよぉ!】
【あっ……ひなたちゃんが、見えないエリーちゃんに手を伸ばして……】
【もう見てらんない】
ふらふら。
ひなたは、何かを見つめたままに手を伸ばし――
◇
「……ゆずき、ちゃん?」
「あ、ひなたちゃんだ」
「……エリーさん……も……?」
「ひなた様? なぜ泣いていらっしゃるので……?」
僕の前に――「おすすめ」で召喚されたひなたちゃんは、なぜか表情を変えず、ただただ涙を流していた。
「え? えっと、応援してくれると嬉しいです。具体的には最下部↓の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】に、まだの方はブックマーク登録……なにこれ、理央ちゃん」




