517話 停滞した戦場を打開しよう
――ぱしゅうううっ。
「みさいる」
「かくれる」
通路の先から――絶え間なく飛んでくるミサイルが、巨人さんたちに何本か当たりながらも空中を飛翔する。
「ユニコーンせーんぱいたち♥」
「がんばれ♥ がんばれ♥」
「「きゅひひひひ……!」」
ぴーっ……どぉん。
【迎撃率80%】
「2割は残った……おやびんさん!」
「おうよ! ……近づかせないでブレスだお前ら!」
――ごぉっ……どぉん。
【迎撃率100%】
【第10波もクリア】
【次のポップまで予想リキャストは2分です】
「……まずい、かな」
ぽつり。
僕は、渇いた喉につられてさまよった手のひらを見下ろして、言う。
「? 何故でしょう? ユズ様の軍勢は、ダンジョン……?内の魔力で次のリキャストまでにワタシたちの治癒魔法にダンジョン内の自然魔力でHP、MPともにほぼ最大値まで回復。それに幾度の迎撃で効率化し、今やパーティーの半数ずつが対応に当たれば問題なく、したがって交代でこなせば敵の魔力が尽きるまで問題なさそうですが」
「さきゅばす……の、でかいほう」
「……エリーと申します」
「ん、えりー。たぶん、まおうさま――ゆずのいってるの、ちがう」
そうだ。
なまじ賢いから大半の指揮を――細かいところをお願いしてるエリーさんだからこそ、戦場の効率化でどこか満足げだけども。
賢い人ほど、足元が見えない。
賢い人じゃない僕だから、分かったこと。
「このままだと――僕たち、千日手だ。たぶん、あっちも魔力は回復するし、こっちは迎撃するだけ……出口が1本しかないこの部屋に閉じ込められた僕たちは、このままだとずっと出られないんです。体力と魔力的に消耗はなくたって」
「あっ……」
「むふん」
地形は、僕たちへ有利であり、不利だ。
何回もUIに表示されるマップ情報を確かめたけども、このフロアは、行き止まりになる数本の通路の先のちっちゃな小部屋たちを除けば、この部屋ともうひとつの部屋のみ。
こちらが中サイズの部屋とすれば、魔王軍が陣を敷いていると思しき通路を挟んだ反対側に大サイズの部屋があって――幸か不幸か、細い通路と小部屋はどれも、その通路から分岐している。
「……もういちど聞きますけど、この場所、エリーさんにも」
「え、ええ……申し訳ございません。まったく知識のない場所です……そして、ワタシの転移魔法でも異世界を渡る力でも、元の世界への道筋は。そもそも、魔王軍に完全に属していないギガント、タイタンたちが残っていただなんて……神族の加護がまだ現存していたのにも驚きですが……」
考えるときの癖なのか、ぱたぱたと羽を小さく揺らめかせながら悩んでいるエリーさん。
それにちょっとだけどきっとするけども、今はそんな場合じゃないんだ。
「それに、このダンジョンに充満する魔力……無論『魔力』である以上には魔物、魔に属する勢力ではありますが……同時に、かすかではありますけれども今では珍しい『神力』も感じられます。……ここは、先ほどの黒き女神の守護範囲? それとも……」
「さきゅばす、むずかしい」
「大丈夫です、僕も分かりません」
ひとまずはこの空間が異質であって――守るだけで時間を浪費するよりは、攻勢に出て通路を突破し、何か大きな気配のある大部屋を攻略しないことには始まらない。
「……この巨人さんたちをいじめてた魔王軍を倒すか、女神様のお友達だし、僕もお友達になった巨人さんたちを連れて帰るか……せめてその片方はしないと、あの女神様も……なによりも、巨人さんたちが安心できませんから」
「ゆず……♥」
「……ユズ様の妻候補が新たに登場したのは置いておきまして、その通りですね」
「?」
上を見上げると、熱でも出てきちゃったのか、ぽーっとして僕を見ている巨人さんの女の子。
……ツマコウホウ?
まぁいいや、大事なことじゃないんなら、今はどうでも。
「……攻勢に出るとしたら、次のミサイルの後でしょうか」
「そう……ですね。ユニコーン様たちに迎撃していただいた後の2分間で突破できたなら」
僕は、ユニコーンさんたちを見る。
「 」
「きゅひひ……!」
「きゅひぃ……」
……この子たちはスケベだけど、強い。
強いけど、スケベってのは何度も同じ刺激を受けると飽きるものらしい。
田中君も友達と言って捨ててたもん、「この本じゃもう受けねぇ」って。
分かる、おんなじギャグマンガも何回も読んじゃうと笑えなくなるよね。
「ワタシたちがひと肌ふた肌脱げば、あと数十回は期待できますが」
「ううん。どの道、ここには水も食料もないんだ……魔王軍からはドロップアイテムもほとんどないし、僕もそうだけど巨人さんたちも、近いうちに干上がっちゃう。エリーさんたち魔族の人たちとモンスターさんたちはともかく、僕は――最大でも3日で」
人は、水がなければ3日で、死ぬ。
それを思い起こし――ダンジョン内で遭難した人の末路を叩き込まれた、小学生時代を思い出す。
「……かしこまりました。サキュバスインキュバス隊、ワイバーン隊へ情報共有を」
「さすがに巨人さんたちには待機しててもらわないとかな」
「むぅ……あのあな、ちいさい……」
遠くにある通路――かなり広いけども、それだって上下左右を考えると、僕のそばに居てくれてる彼らの中で最小のこの子でも丸まってぎりぎり通れるかどうか。
そんな耐性だったらそもそも戦えないし、何かあって急に撤退しようとしたら完全にスタック――邪魔になっちゃうから。
「……そもそも君たち、どうやってここへ来たんですか?」
「ん」
彼女が、上を指す。
「?」
それにつられ、僕も真上を見上げる。
「……ダンジョンの、天井? 上の階層?」
「ちがう。わたしたち、まおうさまから、おろされた」
降ろされる――魔王から?
「ん。――だんじょんのてんじょうをはがして、ぺいっていれられた。つよくておおきいまものたちに、あんないされて」
「………………………………」
僕は、ダンジョンの天井――ばかみたいにサイズが大きいけれども、それでも見慣れたダンジョンの「非破壊オブジェクト」を見つめる。
あれが……剥がれる?
そんなこと、あるはずが……。
「え? えっと、応援してくれると嬉しいです。具体的には最下部↓の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】に、まだの方はブックマーク登録……なにこれ、理央ちゃん」




