512話 【ユズワールド、とうとうエリーちゃんを消滅させる】
「………………………………!!」
エリーは、自覚した。
――自分の主が、自分を喚んでいると。
遙かな遠く、おぼろげなシグナル。
けれども――自分を求めていると。
「……ああ……ああ……!」
真っ白になり、灰と同化していたはずのエリー。
立ち上がった彼女は――ふらふらと、さまよい始める。
【!! おい、あやちゃんのカメラ!】
【どうした?】
【おっぱいが揺れたか?】
【草】
【お前……】
【ユズねぇの痴話喧嘩から頭振って離れた、常識人過ぎるあやちゃんがどうしたって?】
【草】
【あれはマトモなほど効くからねぇ……】
【ユズワールドに汚染されるのはいつだって真面目な人なんだ】
【あやちゃん……常識的なJDなゆえに影まで薄くなって……】
【ぶわっ】
【賢いロリのひなたちゃんは?】
【ロリっ子同士だからか耐性があるらしく、ユズねぇの近くで見物中】
【なるほど】
【草】
【そういや汚染度合いはかなり低いよな】
【日向家に代々伝わるなにかがあるやもしれんな……】
【ひぇっ】
【あっ】
【本当だ】
【詳しく】
【はよ】
【理央様、お首かくかくしてるから視点が安定しないんだ】
【ユズちゃんの配信はテーブルの上に置きっぱで絶妙に見づらいし】
【草】
【草】
【おいたわしや理央様……】
「エリーさん……エリーさんっ! ど、どうしましょう……」
【それでな、あやちゃんも困っているんだけどな】
【おっぱいは?】
【困って震えている】
【\50000】
【草】
【草】
【話が進まないからはよ】
【部屋の隅っこに居たエリーちゃんが……!】
【エリーちゃんがどうした?】
「ワタシを……ワタシたちを……」
「エリーさんっ! み、みなさん、ごめんなさいっ! エリーさんが錯乱して……」
あやが慌てながらエリーを支え、引き戻そうとするも――ふらふら、ふらふら。
右へ行き、左へ行き――焦点が合わず、瞳は虚ろ。
まるで魂の抜けたようなサキュバスの放浪っぷりに、
「可愛そうに……」
「幼き聖女を想って……」
「淫魔族は愛情が深いからなぁ」
「他種族――人間とも、良く駆け落ちするくらいだからなぁ」
周囲の魔王たちも、心配の声もかけられないようだ。
【エリーちゃんが……錯乱してる ユズちゃんとユズねぇの非道っぷりに、とうとう心を壊して……】
【ぶわっ】
【かわいそう】
【本当にかわいそう】
【白くなっただけじゃなく、とうとう精神まで……】
「――――――あ゜っ」
びくんっ。
サキュバスの肢体が、跳ねる。
「!?」
【!?】
【!?】
【えっち】
【えっち】
【ふぅ……】
【待て、なにが起きた】
【ちくしょう、ギガが足りないからちくしょう!】
【草】
【こんなときぐらい金払ってでも2窓しろ!!】
あやの配信に常駐していた視聴者、そして彼らから伝播された情報で集う、その他大勢。
彼らは続々とあやの画面からエリーをひと目見ようと集まってきて――
「――――――ユズ様。ワタシ――ただ今、参ります」
「エリー、――――――!?」
――――光が爆ぜたかと思うと、あやがつかんでいたサキュバスの腕が――いや、1秒前まで存在していたはずのサキュバスの肉体が、完全に消滅している!
エリーは――なにかしらの原因により、この世界から消滅した!
「あ゜」
「み゛っ」
――しゅんしゅんっ。
エリーの近くで侍っていたサキュバス、インキュバス――そして魔王城の別室で情勢をうかがいつつ魔王たちから情報収集を行っていた彼らもまた、やはりなにかを受け取った瞬間に――消失した。
【えっ】
【えっ】
【え、今】
【消えた……!?】
「エリーさぁぁぁぁん!?」
あやの、絶叫――それに、さすがの柚乃たちの視線も集まる。
「あやちゃん、エリーちゃんは?」
「エリーさんが……エリーさんが……!」
「エリーちゃん、しんじゃった?」
「そ、そんなはずは……! で、でも、さっきまで真っ白になっていたので、もしやHPが……! そ、それに、魔力を供給するはずの柚希さんがずいぶん離れているので……!」
「エリーちゃん、しんじゃったんだ。かわいそうだね」
ひなたは――静かにしゃがみ込み、床に集まっていたチリを集め始めた。
「だいじょうぶ。ゆずきちゃんが、きっと生き返らせてくれるから。このへんの埃の中に、きっとエリーちゃんも残ってるはずだから」
それは、きっとひなたなりの優しさなのだろう。
だが――
「うぅ……!」
「あのサキュバスは、どう見ても本体で来ていた……つまり」
「なんと言うことだ……魔王様のせいで、尊いサキュバスが1人、死んでしまった……!」
「あの人間の幼女……なんと優しい心を……!」
人間の幼女――もとい少女が、まるで死人の骸をかき抱くかのような厳粛さで、どこかから獲得したらしいちりとりでビニール袋へ床の埃を集める姿を勘違いした魔王たちが、事態を勘違いし。
【悲報・エリーちゃん、消滅する】
【草】
【えぇ……】
【ついにストレスで……】
【ユズワールドの犠牲者が】
【ユズねぇ……お前……】
【え? まじでエリーちゃん、死んじゃった? ギャグじゃなくて?】
【知ってるか? 人ってな、精神的なストレスで死ぬんだぞ?】
【そして魔族だから死んだら肉体も存在しなくなる……】
【肝心のテイマーなユズちゃんが居ない以上、もう復活は……】
【周りの魔王たち……泣いてる……】
【え、じゃあ本当に?】
【ああああああ】
【そんなぁぁぁぁぁ】
――全世界が泣き始めた。
理不尽に翻弄された、若いサキュバスの消失に。
「しょうめつ、ちがう」
ぽつり。
エリーがいきなり――跡形もなく消え去った空間で、何度目かの混乱に叩き込まれた魔王城や配信先の人間たちが阿鼻叫喚の中。
「……んむ。ちがうのに」
女神は1人、ぽつぽつと説明しようとし――口ベタな上に小さすぎる声を誰も聞いていないのを知り、ちょっぴりしょんぼりした。
「え? えっと、応援してくれると嬉しいです。具体的には最下部↓の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】に、まだの方はブックマーク登録……なにこれ、理央ちゃん」




