50話 初めての報酬
「ひ……ひゃ、ひゃくっ! り、理央ちゃんっ!」
「落ち着いてください柚希先輩……ダンジョンでの報酬がすごいってのは知ってましたよね?」
気が付いたら、僕はゲートの前の待機所で寝かされてた。
なんでも、何かを話してる途中で寝ちゃったらしい。
……何話してたんだっけ?
まぁいいや、忘れちゃってるってことは大したことじゃないんだろうし。
あ、そういえば助けてくれたお兄さんたちは、ゲートまで送ってくれたあと、普通に攻略に行ったらしい。
今度会ったらお礼しないとなぁ……。
【ようやくお目覚めなユズちゃん】
【ユズちゃんおはよー】
【けどユズちゃん、配信切らなきゃ】
【あー、これ、ユズちゃん以外みんなで同時に切ったから、ユズちゃんのカメラのことがすっぽ抜けてますねー】
【えぇ……】
【なんでユズちゃんが絡むと事故起きるの……?】
【ユズちゃんだからだよ?】
【ユズちゃんだもんなぁ】
【ユズちゃんだし】
【もはや完全に定着したこの流れ】
【ユズちゃん、これが事実上の初配信なのに……】
【さすがは無自覚で2回も配信やらかしてた幼女だ、次元が違う】
「大丈夫? おまんじゅう」
「きゅひ……」
僕と一緒にすやすや寝てた……良かったぁ、潜り込まれてブラずらされてなくって……おまんじゅうを持ち上げると、ものすっごく眠そうな目と声。
「あはは、ごめんごめん、かわいくって」
「きゅひ」
「疲れちゃったよね。 今日はありがと」
「きゅひっ」
【かわいい】
【かわいい】
【でもユズちゃんも眠そうじゃない?】
【これ、まだ半分寝ぼけてるな】
【これがユズちゃんの破壊力……!】
【タダでさえぼさぼさな髪の毛まで】
【天然系で自然系 それがユズちゃんだ】
【でもおまんじゅうちゃんもめっちゃ疲れてる】
【そらそうよ、あんだけばかすか撃ったんだもん】
【威力、普通に……属性分かんないけど、無属性だとしてもレベル15の魔法クラスあったもんな】
【ユズちゃん守るために必死だったんだろ】
【ぎゅっとされるのに必死だったのでは?】
【「潰されて中身出ちゃう前に……!」ってことでは?】
【生命の危機感じちゃったのか】
【大好きなユズちゃんからの危機で、思わず……】
【草】
【そら必死にもなるわな】
普段よりもうとうとしてて、心なしかちょっと重いおまんじゅう。
……がんばってくれたんだね。
「……柚希先輩、そろそろ戻って来てください」
「あ、うん。 ……あ゛! ひゃくまんえん!!」
【草】
【ユズちゃん、その声】
【どっから出してるの……】
【マジで忘れてたのかよ草】
【ユズちゃん……】
【ユズちゃんは1度に1個のことしか覚えてられないんだ……察してやれ……】
【もしかして:おバカキャラ】
【天然ちゃんだから……】
【ロリっ子だからね、しょうがないよ】
「けっこーすごいよねぇ。 1回、しかも今回って1時間だけでしょ? それでこれだけって」
「ええ……私の1年分以上のアルバイト代です……そこまで熱心にしていないのもありますけど……。 4人で割っても何ヶ月分です……」
「……時給、4人でひゃくまん……経費とかいろいろあるって言っても……」
【改めてすごい効率】
【まぁ、今回のはまぐれだからな】
【中級者ダンジョンの1階層、入った直後にモンハウでモンスターざっくざっく、しかも戦ったのがモンクの理央ちゃん】
【しかも理央ちゃん、自分用のヒールも使えてたしな】
【武器防具の消耗がほとんどないのがデカい】
【道具の消耗もな】
【しかも下の階層のが紛れてたから】
【あー】
【理央ちゃん以外は初心者支給の装備、ひなたちゃんの大剣はちょっと心配だけど、それ以外はユズちゃんのユニコーンもあやちゃんの魔法もMPしか使ってないもんな】
【あれ? このパーティー、コスパ良くない?】
【ユズちゃんと理央ちゃん居れば、もうこのまま中級者ダンジョンの1階層でレベリングできるな】
【ひなたちゃんの大剣とか防具にだけ注ぎ込めば普通に行けそう】
【あの……1時間までまでこの子たち、レベル1だったんですけど……】
ひなたさんとあやさんが、換金所のカウンターに置かれた札束をぱらぱらめくって遊んでる。
……そんなお金、リアルで見たことないよぉ……。
「うぅ……お金怖い……」
「もう……怖くなーい、怖くなーい」
【あっ(尊死】
【これは尊すぎる】
【なにこの子、ユズちゃん、お金見て泣いちゃったの?】
【えぇ……】
【いやまぁ普通の金銭感覚あったらびびるって、札束が置いてあるって】
【それな】
【まぁ現金でもらうことは無いんだけどな】
【儲けを実感してもらうための、換金所の粋な計らいな見せ金だしな】
【防犯面からもねぇ……】
【じゃなきゃダンジョン前なんて悪い奴がたかろうと入り浸るし】
【ダンジョン前は警備隊が居るからまだしも、そこから家まで付けられるとなぁ……】
【特に初心者は獲物だもんなぁ】
僕がずっと欲しかったお金、でもいざ積み上がったそれを見ちゃったら……なんだか涙があふれてて。
そんな僕を、気が付いたら理央ちゃんが抱きしめてくれていた。
……理央ちゃんの胸、あったか……じゃない!
「わっ!? ご、ごめんねっ!?」
「? いつもみたいにもっと泣かないんです?」
「い、いつもじゃ――あ、あれ?」
何かがおかしい気がする……何だろ。
その正体をたぐろうとしたら、ひなたさんたちが歩いてくる音。
「? どうしたのユズちゃん……泣いてる?」
「どうかしましたか?」
「……ううん、なんでもない……です」
ウソついちゃったけど、恥ずかしいからしょうがないよね。
僕は急いで後ろを向いて……ちょうど良いところになったおまんじゅうの毛皮に涙を吸い取ってもらう。
「きゅひ……!」
なんか悶えてる……ごめんね、涙なんか吸い込ませて。
今日もお風呂で洗ってあげるから、我慢してね。
【あやちゃんにひなたちゃん……見てたのに】
【1回後ろ向いてから、今気が付いたみたいにして……】
【見て見ぬ振りをする……良い子たち】
【ああ……】
【しかもこれ、誰も配信してるって気づいてないんだろ?】
【ああ、この子たちの素だぞ】
【尊い……】
「で。 ……今のところ他に人も居ませんから、ここで分配とか決めちゃいましょう。 お金のことは大事です」
「あ、うん。 待ってる人もいないし、2人とも良いでしょうか」
【居るよ?】
【めっちゃ居る】
【ここに居るぞ!】
【いるよ! めっちゃ居るよ!!】
【さっきのダンジョン内ほどじゃないけど、ずっと残ってる視聴者まだまだ居るよ!!】
【草】
【ユズちゃん……君って子は……】
札束が、でんと乗っかってるテーブル。
その金額を想像するだけで震えてくるけども……今はがんばろう。
そうだ、お金は大事だ。
そもそも僕たちは結成して数時間……どころじゃなくまだ1時間、信頼も何も無いんだ。
あやさんもひなたさんも、2人とも……優しいから顔に出さないだけで、きっとやっぱりお金の大きさで心配なはずだもん。
ここは男として、しっかりしたとこ見せないとね。
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