474話 【シリアスとユズワールド(姉)】
「魔王様」
「ならぬ」
――ぎんっ。
王の横に侍っていたメイドが――別れの挨拶のように深い礼ののち一瞬で自らの胸に刃を突き立てようとしたのを、素手を突き出し、手のひらで刃物を受け――当然のように傷1つなく静止する魔王。
「ですが私のせいで――聖女様を早合点で保護してしまった私のせいで」
「過ちは己の身で挽回せよ――メイドであれ、貴様も我が魔王軍の配下。死をもって償うなどという職務放棄は許さぬ。失敗以上の働きをもって応えよ」
【ぶわっ】
【優しい】
【ダダ甘でもないし厳しすぎもせず、けどやっぱ優しい魔王軍】
【私、こんな会社に入りたかった……】
【俺、こんな会社なら管理職になりたかった……】
【ぶわっ】
【魔王ちゃんのカリスマも規律も、このままこの星を統治してほしいレベルで素晴らしい魔王軍】
【あの、履歴書持っていけば人間でも採用してもらえますか?】
【草】
【裏切り者だ! ……ずるいぞ、みんなで採用してもらうんだ】
【感動した】
【草】
【人類4千年くらい << 魔王軍何万年+だもんねぇ】
【たった1人の慈悲深くて聡明な指導者による統治だ、比べるなんておこがましい】
【恐怖による支配ではなく確固たる倫理観と社内規則での統治……そら続くわな】
【良いなぁ】
【こうなったらもうさっさとユズちゃん捕まえてもらって魔王軍就職を目指そう】
【草】
【しかもかわいい】
【聞く限りエターナルロリだぞ】
【それは大切だな】
【ああ……!】
【支配者のビジュアルは統治の安定に直結するからね】
【かわいいは正義、銀髪ロング吸血鬼っ子は正義】
【過酷な統治でも許される見た目だな!】
【草】
【見切りを付けられて滅ぼされそうなんですけど、うちの人類】
【それはそれで】
【えぇ……】
「うーん……あのメイドちゃん、まじめさんなのよねぇ。家族の私が気にしないでって伝えたのに」
「無理もないだろう……聖女の母親が怒るでもなく簡単に許してくれているのだから」
くぴくぴ、ごくごく。
そんな緊迫した空気を――酒のつまみに眺めながら語り合う柚希の母親、柚乃と酒好きの魔王たち。
「私、本当に怒っていないのにねぇ」
「貴女はおおらかというか聖女の母親であるからか鷹揚だが、普通の母親は怒るものだぞ……自分の子供が連れ去られたら」
「貴女でも怒るの? 子供がそうされたら」
「我が種族は動けるようになったら適当な異界に投げ捨て、這い上がるのを待つのが伝統だから分からんな」
「ああ、ライオンさんだものねぇ」
「魔族なのだが……生態は動物のそれと大差ない」
くぴくぴ、ごくごく。
酒盛り連中は――ウワバミなのか顔色一つ変えないが、話の内容は明らかにすっかりできあがっているようだ。
【草】
【温度差ぁ!】
【だってユズねぇだもん】
【ああ……ユズねぇも「ユズ」、つまりはユズワールドを展開できる能力を備えているからな】
【もうだめだ……】
【草】
【けど、母親……?】
【こんなJCな母親が居てたまるか】
【現役JKの私でもため息が出る肌の綺麗さなのに】
【サキュバス属性だから仕方ないよ】
【ユズねぇ、結婚願望あるかな?】
【でも母親設定だぞ?】
【そこはほら、再婚っていう設定で】
【でかした!】
【草】
【ユズちゃんも百合ハー作って結婚したし、そろそろ自分の未来を考えても良い頃合いだよユズねぇ】
【そうそう すでにユズちゃんがなんかもういろいろおかしすぎてひらっひらしてる存在になっちゃったから一生働かなくて良いっていうかマトモな場所で働かせられないっていうかお願いだからダンジョンのそばでおとなしくしててって政府から懇願されるだろうからもうお世話焼く必要はマジでないんだぞユズねぇ!】
【草】
【草】
【ユズちゃんがダンジョンに潜って学費稼げたってあのときまでは素直に感動できたのに……】
【どうしてこうなった】
【※エリーちゃんがちょっかいかけてきたせいです】
【あっ】
【草】
【なおそのエリーちゃん】
【ユズちゃんが見つからないままだから定期的に部屋の隅に行って吐いてるよ】
【おいたわしい……】
【ちょっかいかけたにしては余りにも残虐な仕打ちだ……】
【かわいそう】
【かわいそう】
【ユズちゃんに関わっちゃったばっかりに】
【エリーちゃん+優ちゃん+教官ちゃんが唯一の希望なんだ……これからもがんばってね、エリーちゃん】
【草】
【ほ、ほら、こうなったらもうユズちゃんの百合ハーに入っちゃえば……】
【そもそもとしてユズちゃんのすさまじく良いらしい匂いに釣られてきたんだもんな!】
【いろいろ掘り返されてかわいそうなエリーちゃん】
【過去の過ちはね、事あるごとにえぐってくるんだよ】
「え? えっと、応援してくれると嬉しいです。具体的には最下部↓の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】に、まだの方はブックマーク登録……なにこれ、理央ちゃん」




