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466話 バレる前に退散

「……はい。適性がある――モンスターと対峙して、自分でなんとなくそう感じるなら――人は、数人単位で。近距離、防御、魔法とか遠隔、治癒……敵性が分かった人たちでバランス良くパーティーを組んで、ダンジョンに潜るんです」


小学校。


道すがらで見つけた人たちをかき集めてきた僕は、今どき――11年後なら小学生でも知っている基礎の基礎を伝えていく。


基礎は、大事。

自然に入っている知識だからこそ、僕みたいなのでもやってこられたんだ。


「魔力は、ひと晩ちゃんと眠れば回復します。使い切りそうになったら……バスで酔ったり、人によってはお酒に酔ったりする感じになってふらふらします。使い切っちゃうと、回復に時間が掛かります。……治癒魔法は万能じゃないので、大ケガしそうかどうかだけ、気をつけてください」


この時点では、まだリストバンドは存在しない。

あれはダンジョンを1回静かにさせたあとに開発されたもの。


――魔王さんの言ってたことが本当でも、この世界から人が消えちゃうのは確かなことなんだ、それに大ケガとかすっごく痛いはずだから。


「聖女様……」

「サキュバスって聞いたけど……」

「何でも良い……こうして俺たちを導いてくださっているんだから」


なんだか――未来では、僕はちょうちょとか不名誉なあだ名をつけられているからか、基本的に子供扱いしかされなくて、それが嫌だった。

けども――僕の前で膝をついて祈ったり涙を流したりしてる人を見ると、やっぱりまだ子供扱いの方がずっと良かったな。


そう思うんだ。


「あと……チョコ」

「ぴ」


ふるふる。

僕の手のひらでぷるんと動く、チョコ。


「……確率は低いですけど、適性の中にはテイマー……倒したはずのモンスターを仲間にできる人も居ます。そういう人が居ても、嫌がらずに居てあげてください。テイマーの仲間になったモンスターは、ある程度言ってることが分かる……友達、なので。いじめたりしなければ、攻撃はしてきません。ね?」

「ぴ♪」


こっそり僕の汗とか剥がれ落ちた細胞、髪の毛――あとは……うん……おしりとか前の穴から中身を吸ってたらしいチョコは、シルバースライム。


……具体的なイメージで、細長い管でちゅーちゅーされてたのは忘れたい。


そんなチョコはスライムの中でもさらに無機質で、だから怖いって感じるだろう子だから、みんなに見せておく。

この子で大丈夫なら、他のモンスターはもっと大丈夫なはずだから。


「それは、魔族――サキュバス様でなくても?」

「はい。人間だってです。あ、そうだった」


もう「様」付けされるのは諦めたけども、ふと思い出す。


「僕、半分くらいがサキュバスで半分くらいが人間なので」


言ってから「サキュバスじゃなくってインキュバスなんです」って言えば良かったなぁって思う。


「!?」

「つまり……」

「人を襲ったサキュバスは、人との子供を……!?」


「インキュバス! インキュバスは居るんですか! お、男専門の!」

「先生……」

「そうか……星野先生にもお子さんが居ると聞いていたが……」


あ、それが僕なんです。


なんてのは……すっごく言いたいし、ついでにインキュバスだし僕はお母さんみたいにえっちじゃないって伝えたいけども、11年前のこの世界でそれを伝えちゃったら絶対大変なことになる。


特にお母さんがやらかしたことは隣町の先生たちに――いや、その学校に通ってたお母さんの当時の友達とか先輩とか後輩とかを通じて、隣町とか他の町で働いてる大人にも広まっちゃう。


それは良くない。

どうせバレるにしても、バレるんなら11年後、配信中の方がまだマシだ。


『――――――――【急募】』


『【help】』


『【座標:】』


ん?


誰かの声――や、テキストメッセージ?


「……別の場所で、人に呼ばれてます。僕は、そろそろ」


ふわり。


たぶんこのままだとこの町の人たちから離してもらえなさそうだった僕は、これ幸いと羽を広げ――普通の人間からは手の届かない高さへ飛翔する。


「ああ……」

「天使が、行ってしまう……」

「おかあさん、ちょうちょがみえるよ」

「私たちは、これからどうしたら……」


「――大丈夫です」


僕は、この先のことを思い浮かべて、笑顔を作る。


「人間は、しぶといので。ダンジョンを攻略して、周りを少しずつ落ち着かせていけば、やがて他の町とか国とかと連絡が取れるようになります。幸い、この近くはそんなに強いところはなさそうですし」


――ここから見ての隣町――つまり僕の町は、壊滅していた。


でも、そこに居たはずのモンスターたちは、お父さんが勇者になって倒してくれた。


僕の、かっこいいお父さん。

久しぶりに見て――やっぱりかっこ良かったお父さんだから、信じる。


「あ、そうだった……あの、みなさん、お願いが」


危ない危ない、これを忘れたら「この先」が変なことになっちゃう。


「今から――えっと、11年後?くらいまで。たぶん見てたら分かるんですけど……その。隣町で『ユズ』って子の配信が始まって、ひと段落つくまでは、今日のことは内緒にしておいてください。お願いします」


僕はSFものの本とかが好きだけど、その中でもタイムトラベル系は何回も読んでいる。

その中では過去を変えて誰かが消えちゃったり、過去から戻ったらおかしなことになっちゃって――ってのがあったから。


「えっ……」

「ユズ――確か、柚乃さんの……」


あっ。


「――そういえば貴女……柚乃さんの妹さんって言ってたけど……」


やばい。

お父さんのことを知ってた先生が、何かに気づいちゃった。


「……柚乃さんがサキュバスさんで、星野先生は普通の人間のはず……つまり、その子供は半分――」


「そ、そういうのも全部、全部、いろいろ終わるまで内緒にしてくださーい!」


慌てた僕は、もう見なかったことにしてお願いだけをして飛び立った。


……うん。


僕、SFものとか推理ものの主人公さんたちみたいにかしこくないから、絶対こうやって逃げるしかなくなっちゃうんじゃないかな。


なら、やっぱりちょうちょ扱いで主人公さんのそばでぼーっとしてる方がずっと楽だなって――そんなことを思った。


「え? えっと、応援してくれると嬉しいです。具体的には最下部↓の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】に、まだの方はブックマーク登録……なにこれ、理央ちゃん」

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