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436話 魔王城――下

七稜郭。


かつての城の跡は、今や七角形に空へ突き出た何十層もの塔。

その遙か上――以前は地上にあったはずの場所の直上へは、さらに巨大な多層構造の浮遊構造物。


魔王城が鎮座しており――その真下は完全な暗闇。


ただでさえ薄暗い空間であり、真上を眺めると魔王城の周囲からはみ出て見える――本物の月の数倍のサイズで、数倍の近さに浮いている赤黒い月が、根源的な恐怖を与える。


【こわいよー】

【怖すぎる】

【なぁんでこんなものが……?】

【なぁにこれぇ……】


「あれが魔王城……!」

「ゆずきちゃん……あんなに近いんだ」


ごくりと少女たちの飲み込む音は、周囲の人々と合わさる。


――これまでのように「足の下」にあったはずのダンジョンが、人類の脅威が空高くそびえている――その恐怖は、尋常ではない。


「私たちを誘っている……のかは分かりません。けど、上陸作戦でたどり着ける場所に居てくれるのなら、もう、行くしかないんです……!」


気丈に振る舞うあやも、足元は震えている。


――震えていない者など、存在しなかった。


「……あの魔王の口ぶりから、彼女は政府などとの交渉を今後一切打ち切ったとしても、私たち一般人となら――たどり着けたら、対話をしてくれる可能性がある。……正直、魔王という存在に対しては楽観的で希望的観測過ぎる結論ですが、もう、柚希さんにたどり着くにはこれくらいしか……!」


「だね。空は飛行系モンスターばっかりで飛行機ではとても向かえないし、昨日の夕方に観測されたっていう強力なビーム兵器?で撃墜されないとも限らない……んだよね、りおちゃん」


「うん。だから、私たちが行くの。魔王さんがRPGで出てくるような魔王さんだったら、ラストダンジョンを攻略してくる勇者たちがたどり着けるかって、じっと観察してるって信じて。……囚われの姫な柚希先輩を傷つけないように、待ってくれてるって」


【ああ、ちょうちょ姫か……そういや今回は特別にかわいかったもんなぁ……】


【草】

【草】

【あ、ちょうちょー】


【お前!!】

【だって……】

【ダメだ、力が抜ける……】

【シリアスすぎるけど「ユズちゃん」ですべてが台無しに】

【ユズちゃん……どうして……】


――海から侵入し、数百メートルの陸地を駆け抜けてダンジョンに入るのなら、空を無数に占拠している飛行系モンスターとの戦闘を回避できる「かもしれない」。


七領郭ダンジョン――中級者に人気だったその中身は変わらずに居てくれるおかげで、優たち以下中級者~上級者パーティー数十人なら――突破できる「かもしれない」。


その頂上、本来なら入り口、1階層のあるその先の屋上すれすれで静止している、つい数十時間前に理央たちが最深部まで攻め込んだダンジョンへ侵入できる「かもしれない」。


――そこからまた何十層と駆け上がり、完全に攻略しかけた先の出口にある魔王城まで妨害も「かもしれない」、魔王城で魔王が待ち構えて「くれている」「かもしれない」。


かもしれない、かもしれない――いくつもの願望の乗算。


控えめに言っても、ただの無謀な突撃作戦だ。

それも、民間人を煽動しての特攻作戦と言っても良い。


でも、


「……あの子、言ってたもん。ゆずきちゃんが――たぶんいつもみたいに適当にふんふんはいはいって頷いちゃって、それで盛大に勘違いしてるんだとは思うんだけど。ゆずきちゃん、ぼーっとしてるときはなんでもうんうんはいはい言ってて……だから便利なんだけどね、お着替えとか好きにできるんだけど、良くそのせいで言った言わないでりおちゃんとかと軽いケンカになってるし……」


「ひ、ひなたちゃん! 今はそのことは良いの!!」

「け、ケンカと言ってもほほえましいものですから……」


【草】

【草】

【ひなたちゃんが毒舌で草】

【便利なのか……】

【そして理央様といちゃいちゃしてると】

【かわいいね】

【かわいいね】


【ああ、この子的にもそういう判定なのね……】

【だってユズちゃんの百合ハーの一員だからな!】

【脳が……溶けていく……】


「――でも、あの子、泣いてたもん」


ひなたが、元気な声を潜めて言う。


「ゆずきちゃんが『なにかとてつもなくひどい目』に遭ってるって、思い込んじゃって、本気で。……きっと、いい子なんだ。ただちょっと、ゆずきちゃんの適当さで……うん……ひなたも慣れないうちはいろいろ勘違いしてたし、今でもときどきゆずきちゃんのことがよく分からなくなるんだし……ひなた、奥さんになったのにときどき分からなくなっちゃうくらいだから……あれ、なんでだろ、ひなた、悲しくなっちゃった……ゆずきちゃん、未だに結婚とかよく分かってないみたいだし……あれ? ひなた、奥さん? 奥さんだよね……?」


ひなたが、静かに涙で瞳を濡らす。


「だ、大丈夫! 私も! 私も分からないときあるから! 10年以上の幼なじみでもさっぱり分からないこと、結構あるから! なんなら今回のもさっぱりだからぁ!!」


「りおちゃんもりおちゃんで当てにならないよぉ……」

「うっ」


理央が賢明に慰めようとするも――効果はなかったようだ。


【草】

【草】

【ユズちゃん……どうして……】

【本当にどうしてあのロリっ子は……】


【ひなたちゃんがやさぐれている】

【そらそうよ……】

【かわいそうに……】


【常時えっちモードなら……ダメだ、そうしたら百合ハーが全員ダウンしてしまう……!】

【それはそれで】


【\500000】


【!?】

【草】

【わかる】

【えぇ……】


「え? えっと、応援してくれると嬉しいです。具体的には最下部↓の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】に、まだの方はブックマーク登録……なにこれ、理央ちゃん」

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