435話 【勇者たちの聖女奪還作戦】
「教官さん。私たちの意思は、柚希さんと一緒に潜ったときから変わりません」
頭には黄金のサークレット、首にも同じく特大の宝石が埋め込まれたネックレス。
最もバリエーションの多い中装備の中から選ばれた、やはり黄金の鎧一式。
それを見に纏った――まさに「勇者」な格好の優が、答える。
「……分かりました。間に合う場合にはリストバンドへ私たちから緊急離脱を強制的に行わせます……が、そうなることのないよう、先んじて柚希さんの元へたどり着けると信じます」
【優ちゃん……】
【教官さんも……】
【かっこいい……】
【男でも憧れるかっこよさ】
【抱いてほしい】
【ダメだよ ユズちゃんがクリティカルなターゲットだから、どんなにかわいくても女の子だろうとかっこよくても男だろうと見向きもされないよ サキュバス状態のユズちゃんが言ってたから間違いないよ】
【草】
【草】
【もうやめたげてよぉ!】
【優ちゃん……かわいそうに……】
波の荒い海の中、彼らの周囲は軍の船9隻で厳重な輪形陣――飛行系モンスターの襲撃があれば、囲む船が引きつける囮ともなるために――固められており。
青い森から出航して数時間――陸地に近づいてきてからは、それらの対空火器により出海道の大地を覆い尽くす暗いドームの中へと、絶え間のない射撃音と煙が耳をつんざく。
「モンスターを引きつけはしますが、同時に弾幕にもなるはず……これなら!」
「煙幕を展張! この先、視界が限られます! みなさん、乗り込む準備を!」
【ガチの作戦だな】
【ああ】
【今回は本気でユズちゃんに接触してあの子に止めさせないと】
【俺たちの出海道が、完全にダンジョンになっちゃうもんな】
【ダンジョンならまだ良い 魔界ってのになったら、それこそ……】
「……つまりはこの前と同じように、理央さんたち――全員が理想ですが、難しければ誰かひとりを彼――こほん、彼女の元へと届ける作戦ですので、場合によっては私も足止めの方に回ります」
優の決意は、硬い。
「――ユズちゃんお迎えに行くの、優でも良いんでしょ?」
そんな優の決意を遮る声。
「え? う、うん……だけど……」
「てかレベルと職業的にはゆうか理央ちゃんのどっちかが突破できそうだしー?」
「そーそー、4人も居れば誰かは届くっしょ!」
「優が行かなきゃ始まらないっしょ、その子たちとさ」
だが、彼女の元パーティーメンバーが引き受ける。
優もまた、柚希の元へ走れと。
「……分かりました。可能な限りに指揮と補佐に努めますが、状況次第では私も――みなさんを見捨ててでも、柚希さんの元へ」
「そーそー」
「恋人どころか家族だもんねぇ、優たちは」
【優しい】
【これが……友情……!】
【感動した】
【男除けとはいえ、男装してた優ちゃんとパーティー組んでた子たちだもんな……!】
「――ドームの中に入る! 衝撃に備えてください!」
「ここから先は魔王の支配領域! 総員、対空監視を厳に――ダンジョン潜りさんたちを護るぞ!」
【!】
【いよいよか】
【こわいよー】
【このドーム……無事すり抜けられるのか……?】
船に乗る全員が身を固くし、可能な限りに身を小さくする中、船は速度を落として最初の1隻からゆっくりと――――――通過、した。
「……異常なしと報告が! 速力を上げ、全速で突っ切ります!」
艦隊は速度を上げ、一気に海に降りている半透明のスクリーンを突破。
――したとたんに景色は暗く、まるで月の明るい夜のよう。
【おお】
【通り過ぎるタイミングで攻撃とかなかったか】
【上でもミサイルとか戦闘機とか普通に通過してるから大丈夫だとは思っていたけど】
【やっぱどきどきしたわ】
【分かる】
蒼い海から一転、黒い海に変貌した海面、青い空から一転、黒と紫に富んだ空。
――――――赤黒い、異様に大きく見える満月。
そしてその手前には、数時間前に移動してきた先の、七領郭から飛び出したダンジョンの上で静止している――魔王城が乗ったダンジョン。
まさに吸血鬼の居城――魔王の支配地、そのものだった。
【ひぇっ……】
【こわいよー】
【これは怖い】
【マジで魔王だなあの子】
【ああ……ちょうちょのせいで無駄な戦いを始めているかわいそうな子だ……!】
【草】
【草】
【かわいそう】
【おいたわしい……】
【ユズちゃん……どうして……】
「え? えっと、応援してくれると嬉しいです。具体的には最下部↓の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】に、まだの方はブックマーク登録……なにこれ、理央ちゃん」




