433話 朝ごはんを食べてたら転んじゃった
【悲報・出海道、取り戻せても今後はダンジョンから直接飛行系がわらわら飛び立つわ、よりにもよって最下層から強い地上系モンスターたちから大地という大地に出てくる魔境へ】
【……島で良かったね!】
【本当にな……】
【これが陸地、大陸とかでやらかされてたら……】
【本当にな……】
【モンスター、海にだけは出現しないからな……】
【マジで首の皮一枚ってやつだな……】
【青函トンネルとか爆破されそう だって陸づたいでモンスターが……】
【人類のために爆破されそう】
【あーあ】
【大損害で草】
【ユズちゃん……どうして……】
◇
「? 花火大会?」
おいしいご飯を食べていた僕は、ふと冷静になると感じる重低音に耳を澄ませる。
……どぉん、どぉん。
おしりの下からびりびりとくる振動。
「確かに今の時期は良くあるけど……こんな昼間に? 不思議だなぁ……」
まぁいいや。
そんなことよりも、どれも見たことない食材の料理と味付けが……うぇっ!?
しまった……紅しょうがだ!
「くぴくぴくぴくぴ……!」
「かわいいですね」
「かわいいですね」
「なるほど、あの食材もNGと……涙を流しながらも食べ切ろうとされる姿がかわいいですね」
「ですが昨晩のように……ええと、『からし』だかと『わさび』とは違い、どうしても受け付けないわけではないと……それにしてもかわいいですね」
「先ほどもありましたように、えずくほどでしたらお止めしませんと行けませんね」
「食物を無駄にしない……聖女様としての高潔さか、それとも厳しすぎる生育環境か……おのれ人類……!」
「ふぅ……」
おいしいジュースでお口をリセットした僕は、巨大なテーブルの先に投影されているモニターを眺める。
ここは素敵な場所なんだ。
だってメイドさんたちは基本的に少し離れたところでおしゃべりしてるだけで、僕の邪魔をしてこないから。
けども僕がなんとなくしゃべりたくなったら、すすすっと近づいてきてくれる気遣いの達人なんだ。
……メイドさんって、すごい。
『――――――5万年前、そのように初代魔王様は誓われました。勇者との和解をきっかけに、その世界の人類国家との対話……さらには不倶戴天であったはずの神族とも面会をなさり、世界別の限定ではありながらも互いに干渉しない代わりに互いの種族を尊重するという条約を――――――』
「もむもむもむもむ」
画面では、昨夜もあった女の子――吸血鬼さんな魔王さんだってね――が、教科書とかで見たことあるみたいな神様みたいな人たちと……ああいや、本当に神様、神族っていうんだっけ?……と握手をしている。
「はぇー」
なんだかかっこいい。
歴史の教科書みたい。
「 」
「1名補充を」
すごいなぁ。
だって魔王さんってあれでしょ?
エリーさんとかみたいに優しい人ばかりじゃなくって、おやびんさんみたいに自称でもケンカして負けたら素直に言うこと聞くとかなくって、この前のヘビさんみたいに問答無用で他の世界を襲うタイプも居る……っていうか大半らしいのに。
それなのに、いや、それどころか人と和解して――だから魔王さんの支配してる世界では、普通に僕たちみたいな人間とかエルフ、ホビットさんとかタイタンさんとかが暮らしているらしい。
ちょっと映像見せてもらったけども、完全にファンタジーな世界だった。
ああいうのって良いよね。
で、こういう小学校の自習とかの授業で流れてそうな映像を――暇そうだからって見せてくれているんだ。
ごはん食べてるときって、そのときの気分でテレビとか動画を観たりしたくなったり、逆に静かに何も見ないで食べたいときってあるよね。
不思議だよね。
あ、そういえば学校のみんな、元気かなぁ。
なんだかすごいことになっちゃって、みんなでまるごとお引っ越しして学校ごとくっついちゃうし、優さんとかあやさんまで高校生の制服着たりすることになってるけど、あれはあれで楽しいもんなぁ。
だって学校全体で、小学生から大学生まで合わせて数千人だっていうし。
「ほえー?」
やっぱりすごいよなぁ……。
「 」
「何やらに納得されていますね」
「かわいいですね」
「かわいいですね」
「補充を」
いろいろあったけど、僕、また学校に通えて良かった。
それにお母さんも元気になったし、お金も――
「はむっ」
「 み ゛」
あ、お椀とかお皿、和食以外じゃ持ち上げるのはマナー違反だっけ……やっちゃった。
ともかく、こうしてお皿に残った一かけですら貴重だった生活から、なんなら通学路の雑草とかも大切だった生活から普通な感じになったから。
……すっごい高いマンションのいちばん上を全部、お風呂は最初すけすけだしベッドもたくさんあるし、1階の玄関の周りに武装した兵士さんたちが常駐してる物々しいとこは普通とはちょっとだけ違う気もするけども、ともかくみんなから「貧乏でかわいそう」って思われてる生活からは抜け出せたんだ。
それもこれも、おまんじゅうの――――――いない!?
「!?」
がたっ。
思わずで立ち上がっちゃった僕は、テーブルでふとももを思いっ切り打って――
「ふぎゅっ」
べしゃっ。
何がどうしてこうなったのかさっぱりだけども、僕は床に倒れ込んだ。
「聖女様!?」
「まさか食物アレルギーが……!?」
「それともトラウマを……早く治癒魔法担当を!」
「一時的に寝かせて精神汚染を緩和させる必要もあるかと!」
「え? えっと、応援してくれると嬉しいです。具体的には最下部↓の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】に、まだの方はブックマーク登録……なにこれ、理央ちゃん」




