426話 シスターさんコスさせられた
「ヴッ」
「み゜っ」
「……やはり、とてもお似合いです聖女様……v∑っ」
「……えっと、僕、こんな服……恥ずかしいんですけど……」
快適な目覚めのあと、僕は朝風呂に案内された。
僕は、もともとお風呂が大好き。
少なくとも去年まではガス代と水道代を節約するために何日も同じお湯――夏場はお水のままで――を使ったりしていた。
ちょっと臭くなっちゃうけど、毎日新しいお湯にしたいなんて、そんな贅沢は言えなかったから。
幸いにして――小学生までときどき理央ちゃんちで理央ちゃんのお母さんとかお父さんとかおじいさんとかおばあさんとか、近所のお姉ちゃんとかお兄ちゃんとかと一緒にお風呂入ってたから知ってるけど、普通の大人にはワキとかおまたにもっさもさ毛が生えるらしい。
けども僕もそうだけどお母さんもつるつるだから、その点でもお湯は長持ちしたんだ。
毛がないって楽で良いよね。
お母さんも、「こればかりはこの見た目で嬉しいわぁ」って言ってたし。
あと、介護するときは生えてるのを剃ったりしないと大変らしいけどもお母さんはつるつるだったから、お風呂に入れない体調のときに体を拭いてあげたりトイレのお世話してあげるときも楽だったし。
そのときに比べると、お母さんもすっごく元気に――なりすぎてるから、もうちょっと落ちついてほしいのは内緒。
でも毎日、大好きなお酒飲んで僕にウザ絡みしてきてからかってきたりして、おしゃれな服をたくさんとっかえひっかえしたり、買い物とかお出かけのお手伝いとか護衛とかしてくれてた男の人たちに色目使ったりして……おげぇぇぇぇぇ……ダメだ、やっぱりいくら好意的に前向きに見てあげたくっても、実の母親が20代の男の人とかにきゃぴきゃぴしてるのは辛すぎる。
トラウマ過ぎる。
……やっぱもうちょっと落ちついてほしいなぁって思う。
けども、そんな状況も去年からは変わってきて、お風呂だって毎日新しいお湯を――節約のために胸元あたりまでしか入れないなんてさもしい真似をせずに、贅沢にもあったかくて綺麗なお湯に浸かることができていた。
けども、確率で理央ちゃんがすっぱだかになって突撃してくるから、小さいころからお風呂ってのは常に警戒すべき場所で、ぼーっとしてたら危険だったんだ。
気を抜いたらやられるんだ。
まるで獣みたいな顔した理央ちゃんに食べられる気がするんだ。
それに比べると、ここは天国だ。
メイドさんたちはよくできたメイドさんたちで、絶対に覗いたり入ってきたり触ってきたり触らせてきたり揉んできたり揉ませてきたりしようしたり吸い付つかせたり吸い付いてきたりなんて、絶対に絶対にしてこない常識人なんだ。
だから、外敵を警戒しなくて良いお風呂を――しかもいい香りのシャンプーとかを使わせてもらって幸せだったんだ。
そしてお風呂から出ると、昨日僕が着てきたぱんつとシャツが綺麗に畳んであって――けども、一緒に置いてあった服は。
「……シスターさんの服?」
「聖職者、その中でも女性の服ということであれば肯定します」
「それは異なる世界のものですが、『その世界で最も清き乙女』が身につけていた伝統的なものでございます。確か、宗教国家でした……まぁ先代が征服しましたので、今は主様の代行として存続しているだけですが」
「ほへー?」
「gnl;」
「み゛っ」
鏡の前で、ぽけーっと立っている僕。
その服は……「清楚だけど実はえっちな女の子」ってのが大好きな田中君のお宝にあったみたいな、聖職者って感じの白と青と黄色な、それでいておしゃれな服。
肩からすとんって足元まで完全にすっぽりと覆うデザインで――だけども腰のとこがきゅっとなってるから、僕のコンプレックスなちょっと大きいおしりがはっきり出ちゃっててちょっと嫌。
……まぁ大きいって言ってもひなたちゃんと同じくらいだし、別にいいけどさ。
それよりもなによりも、背が低いことがコンプレックスなんだから。
頭からは同じ白い布でできたのをぶら下げてて真横が見えなかったりするけども……これはこれで僕としては人の目が気にならないから良いのかも。
「?」
小首をかしげてみる。
シスターさんって感じの僕が、鏡の向こうできょとんとしている。
「 」
「 ゛ 」
……伸びきった前髪と顔以外は隠れているからか、なんだか僕じゃないみたい。
「聖女様――ユズ様。朝ごはんのお時間です」
「ごはん? はぁい」
ま、昨日の夜の――きっと吸血鬼さん特有の、限りなく裸に近い紐とぱっくりな服装よりはよっぽどマシだし、別にいっか。
それよりもごはんの方が気になるかも。
朝ごはん、どんな料理が来るんだろうって。
「え? えっと、応援してくれると嬉しいです。具体的には最下部↓の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】に、まだの方はブックマーク登録……なにこれ、理央ちゃん」




