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417話 優と教官の戦い

「――状況は、切迫しています」


首相を始め、陸海空――地<ダンジョン>防衛大臣、幕僚長が揃う会議の場にて。


「国連――及び合衆国より、通称『サキュバスユニコーンちょうちょ聖女ロリユズちゃん』のときよりも――いえ、『彼』の時以降駐留しています、全艦隊が出海道に向けて出撃。また、各国の部隊も次々と緊急出動し、我が国を目指しています」


「今回は……一応は我が国の国民であったと明確であった『彼』が羽ばた――こほん、攻撃の意図の無い大魔法を展開したのとは異なり、完全なる侵略――しかも魔王による、全世界を滅ぼすという明確な宣戦布告があり、我らが国民の生命と財産が脅かされています」


「現在、出海道の全住民へ国内ダンジョン法の緊急事項による強制避難命令を発動しています。遅くとも明日の夕方には、所在の確認が取れています全住民の避難が完了するかと」


席に着く全員に向け、淡々と要点だけを告げていく声が――室内に、静かに響く。


「作戦の実行は、その後と。それは――確かなのだな?」


「はい。これだけは――合衆国でさえ、全世界に明言しています。少なくとも出海道の住民の安全は、問題ありません。逃げ遅れにつきましては……残念ながら」


「ただしその場合、合衆国がかの新型武装を……」


「それならばまだ良いのです。……前回の大戦で『使用寸前』だったという、かの核兵器をも使用するかと」


「どうにか『彼』さえ救出すれば人的被害――地球のそれがないのですから、使うでしょうな」

「その場合、魔王城直下の大地や風下の地域、それに海への汚染が……」


「――柚希さんの安全は、確保されるのですか」


ぽつり。


少女――大学生であろうと、百戦錬磨の政治家たちの中にあっては小娘に過ぎない――教官、月岡優という2名へ、視線が注がれる。


国の首脳――頭脳そのものの会議室へ招かれた、たった2人の――公務員と民間人の――その面々に対しては少女でしかない、2人へ。


「ちょ、ちょっと優さん!? 相手は――」


「――相手がどなたであろうと、関係ありません!」


優が――恐らくは彼女の人生で数えるほどの、怒りを込めた声を放つ。


――たとえ、私がどうなろうとも。


たとえ、柚希さんとの関係を切られようとも。


彼女は、覚悟していた。


柚希を――愛する人を守るためなら、彼女にできるあらゆる手を尽くす、と。


「……月岡優君。優等生と評判の君が、一体どうしたのだね」


「首相……!? いえ、これは……」


まさか、先の作戦で民間人のまとめ役を頼まれたとはいえ、しょせんは大学生――国のトップが直接反応するとは思わなかったのか、優が思わずで返した言葉は、すぐにしぼむ。


「ああ、勘違いしないでもらいたい。……パワハラでもセクハラでもロジハラでもないからね? それだけは分かってくれよ? 君の将来には期待をしているんだ、本当に別の意図はないんだ」


「は、はぁ……」


「首相、今どきは年下の方に対して見下したような話し方もアウトです。あと若干高圧的に聞こえなくもないので、もっとお孫さんに対するような話し方でないと」

「ふぅ……難しいねぇ、コンプラというものは……。あ、君、これはスメハラになってないかい? 距離は取っているけど私はストレス性の汗かきでねぇ」


額の汗をふきふき。

現代の風潮的には天敵である属性の、優の出方をうかがう壮年の男性。


「……特に不快感などは。ですが」


「ならよかった! ……実はね、君」


ぎしっ。


総理が前のめりとなり、胸元からなにやらの紙を取り出す。

それを警戒する優たち。


……だが。


「……来年の出生率の見込みは、前年度比の、なんと10倍。10倍だよ、10倍……ははっ。これまで数十年の官僚たちの仕事がパーになったよ、あの『大サバト』は。なんだ、我々人類の苦労だなんて、たった1人の少女にも敵わないではないか。ははっ」


「……は?」


優と教官の目は――点になった。


「まぁ、そのために来年の――10ヶ月後前後からは各病院は大忙しですがね。なにしろ世界に前例のない、『まったく同じ日を起点に大量の子供が産まれる』のですから」


「ですが時間がありますし、こちらは問題ないかと。大丈夫です、少子化担当の職員全員が補佐に当たります」


「あと、ダンジョン潜りに対する世間の好感度が30%アップ。つられてか、軍人のそれも20%アップだね。おかげで予算が大変なことになっているよ」


「加えまして国際的な評価――我が国のプレゼンスも、著しく上昇しております。ダンジョンの秘密、テイマーの可能性――そして、人の可能性。人でありながら魔王でもあり、魔族も魔王も仲間にしてしまう『少女』に」


「総理、ビッグデータ分析によりますと、ユズちゃんは『幼女』扱いです」

「そうか。まぁ、どう見ても小学生にしか見えないからねぇ……かといって私が会見で幼女とでも口にしようものなら不適切な発言。世知辛いねぇ」


「……しかし、あれで性別学的には男子ですか」

「世界は広いですなぁ」


「聞けば、今どき国からの支援も断り、自身と母親の生活のためにアルバイトとダンジョンをとか……気骨のある、良い若者ですな」


「だからこそ、私たちも彼のことを心から守護せねばという気持ちになる。……そういうわけだよ、うら若き乙女の――」


「総理。その発言もアウトです」

「……世知辛いねぇ」


「「あはは……」」


いちいちダメ出しをされる総理大臣という、彼女たちにしてみれば父親よりも祖父のような存在。


テレビの中だけだったその存在が、ごく自然に困る顔を見せているのに――優と教官という一般人寄りの存在は、苦笑いするしかなかった。


「え? えっと、応援してくれると嬉しいです。具体的には最下部↓の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】に、まだの方はブックマーク登録……なにこれ、理央ちゃん」

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