397話 ごはんがおいしかった
【理央様が汚れキャラに】
【ゾンビ相手にモンクはなぁ……】
【短剣とか盾持ちもかわいそうなことに】
【でも普段は元気な理央様がぐちょぐちょで泣いてるのは正直興奮する】
【分かる】
【えぇ……】
「うぅ……柚希先輩ぃ……私、汚れちゃいましたぁ……」
最前線の一翼を担う、理央にひなた、あや。
よくがんばってはいるが特に理央の被害が大きく、周囲からの同情も寄せられている。
……もっとも「近づくのは戦闘後にして」と思われてはいるが。
「大丈夫だよ、ゆずきちゃんなら見捨てないよ。そもそもだめだめでだめだめなりおちゃんのこと見捨てなかったんだし」
「まぁ両手だけですし……あと、その表現はちょっと……」
【\30000】
【分かる】
【ひぇっ】
【理央様……お美しいですわ……】
【少々失礼遊ばせ 百合NTRを探す旅に出ますわ】
【理央様? グッジョブですわ!!】
【草】
【やっぱおもしれー女な理央様】
【理央様はユズちゃんの次に有名になってるからね】
【あの、さっき他の人の配信マイクどころかカメラもぱりんって】
【もしかして:音波攻撃】
【理央様だからな……!】
そんな(生理的な理由もあって)熾烈な戦いが繰り広げられている、階段前の高台。
一方、城の中では――――。
◇
「けぷ」
「食事にご満足いただけたようでなによりです」
「はい、とってもおいしかったです。……ちょっと前まではその辺の草とか捨てるはずのご飯とか、他の人に分けてもらうおかずとかでしのいでたので。あ、このトーストとか、耳使ってませんよね。持って帰る分ありますか?」
ああ、僕はお腹いっぱいだ。
こんなに食べたのは久しぶりってくらい。
「ぶわっ……」
「おいたわしや、聖女様……」
だって……理央ちゃんたちとダンジョン攻略し始めてからはご飯に困らなくなったけども、今度はみんなと一緒に食べるようになって。
みんな女の子だからちょっとしか食べないもんだから、僕も足りないかなってくらいで我慢してたんだ。
まぁそれでも、前に比べたらお腹が空いて眠れないとかなくなって幸せだけども。
……でも、理央ちゃんとか、理央ちゃんのお家とか僕のお母さんとだけだともりもり食べるのに、みんなとだと全然食べないのはなんでだろうね。
そのくせ夜にこっそりおいしいもの食べてるし。
「……あら? 聖女様、聖女様として認定されていますのに、あの方たちからの扱いが……」
「………………………………!」
「確かに……!」
「……これはあとで主様にご報告を」
「場合によっては、この方のために……!」
「こんなにかわいいお方にひもじい思いをさせるだなど……滅ぼしますか?」
「主様はお優しい方ですので、殺しも滅ぼしも厳禁と……ですが」
「私共の怒りは、とてもとても……!」
「?」
なんだか変な空気になってる?
「……聖女様。こちらに滞在されるあいだは――朝昼おやつ晩と4食を各世界の食材と料理法により、あますことなくご堪能いただけます。……もう、空腹に泣かれるような夜は……うぅ……」
「なんで泣いてるんですか?」
僕は、デザートらしいいちごゼリーを頬張りながら聞いてみる。
僕を持ってきたメイドさん――他のメイドさんたちをまとめる人らしいね――が、何か悲しいことがあったのか、涙を浮かべている。
何かあったのかな。
女の子ってすぐ泣くから、なぜか泣いてたらとりあえず聞かないとね。
あ、でも理央ちゃんが泣く理由はたいしたことないからほっといていいんだ。
どうせ変なことで泣いてるだけだから。
「何かあったら言ってくださいね。僕ができることなら、何でもしますから」
「……このお方……!」
「間違いありません。正真正銘、精神の高潔さで神族に直接見初められたパターンの聖女です。最近よく居るタイプの汚れ聖女とかエセ聖女ではありません」
「貧しい生活でも、なお他者へのいたわりを……!」
「――あの世界、滅ぼさねばならない気がしてきました」
なんだか殺気立っている気がするメイドさんたち。
「……こほん、聖女様。そろそろ湯浴みのご用意ができております」
「? 湯浴み?」
ゆあみ?
ってなんだろう。
「ぶわっ……!」
「……こんなにも香しき香りだと言いますのに……!」
「もしかしたら石けんだけは良いものを……けれど、まさか川などで……」
「――許すまじ、人類」
「? よく分かりませんけど、許す心って大切ですよ?」
って、学校の先生が言ってた気がする。
「「………………………………!!」」
「メイド長……!」
「このお方は……このお方は……!」
「――了解しました。聖女様」
「あ、はい」
ざっ。
メイドさんたちが全員しゃがみこんでいて――さっきのメイドさんも、僕の前で腰が折れそうなくらいに頭を下げている。
なんでだろうね。
「――たとえ主様のご命令でも、貴女様を傷つけるようなことは――絶対に致しませんと誓います。また、主様の作戦の後にも、ご希望とあらば私共の何割を身の回りの世話としてつけさせていただき――貴女様を、一生御守りすると。私共の魂に誓い――――――」
なんだか難しいことを言い出したお姉さん。
……そんなことより、みんなは大丈夫かなぁ……。
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