394話 【速報・ユズちゃん、囚われの姫】
【速報・ユズちゃん、さらわれた】
【悲報・ユズちゃん、さらわれた】
【朗報・ユズちゃん、さらわれた】
【は?】
【草】
【えぇ……】
【ていうかおやびんに抱っこされた状態から!?】
【なんだあのメイド……】
【メイドさんは完璧じゃないとなれないからね】
【いやいや……】
【見ろよ……おやびんが呆然としてる】
【そらそうよ……】
【あ、涙が】
【呆然としたままお顔で……】
【おやびんなかないで】
【今のはしゃあないって】
【そもそもユズちゃん? おやびんからむしり取られたあと10秒くらいあったでしょ? なのになんでメイドさんの腕の中でかわいいちょうちょしてたの?? おててぎゅって丸めてぽけーっとしててきょとんとしかしてなくてさ……?】
【草】
【草】
【かわいかったね】
【かわいかったなぁ】
【きょとんとしてなぁ】
【お姫様抱っこされてね……】
【なんにもわかってなかったね】
【あの顔が好きなんだ】
【分かる】
【あの……冗談言ってる場合じゃ】
「――柚希先ぱぁぁぁぁい!?」
理央が――柚希が連れ去られたことを、その場で初めて認識する。
――ぱりんっ。
その衝撃で、周囲の配信カメラのマイクが数十吹き飛ぶ。
「っ!? 配信カメラが!? これもあのメイド――魔族の!? なんて用意周到な……!」
次に反応できた教官の彼女が、わざと音を立てて武器を構えることにより周囲の人間の再起動も計る。
「えっと、ひなたのお耳も片方聞こえないし、理央ちゃんのせいだと」
「ひなたさんっ、お気をつけください! 正体不明の魔族による攻撃だそうです! 私も片耳しか聞こえません!」
「あやちゃんとか大人ってさ、大きくなってかしこくなってるはずなのに意外とおばかさんだよね」
杖を構え、魔法攻撃の準備を始めるあやと――なぜかあきれた目をしながら、のそのそと大剣を構えるひなた。
【草】
【しゃあない】
【こういうときって子供の方が状況を理解できるもんだから……】
【ひなたちゃんの年齢って、人間でいちばん脳みそ働く年頃だからね……】
【そうだ……小中学生 あのころはなんでも分かった気になれたんだ……聞いたことは大体覚えられて理解もできてさ 大人たちが言うことの先まで分かって「大人なのにバカなんだな」っていい気になれるくらいに なのに今の俺は、仕事や酒や夜更かしで脳みそを痛めつけて頭も鈍って、まるであのころ見下していた――】
【おいやめろ】
【やめろ】
【自爆詠唱やめない……?】
【草】
【変な飛び火してて草】
【あのメイドっ子、末裔たちにまで遠隔精神攻撃してる??】
【そうでないと断言できないところがなぁ……】
【エリーちゃんみたく精神攻撃してくるのか、あのメイド……】
「――敵に動きがあるぞ!」
「総員、規定の配置につけ!」
不要なダメージを負う視聴者たちとは違い、訓練された軍人たちや手練のダンジョン潜りたちは、高台からのスロープ――階段から続き、城へといざなうような地形を使い、事前に決めていたと見える陣形を構築していく。
「……あれは!」
「串刺しだったモンスターたちが……!」
「「「……う゛ぁー……」」」
――城の周囲を埋め尽くしていた細長い剣山が、消滅している。
その剣に貫かれたまま宙づりだったはずのモンスターたちが――ゾンビたちが、その矛先を人間である彼らへと向け始めていた。
元々が崩れた見た目であるため、どのくらい体力を残しているのかは不明だが――あのメイドが全回復させた可能性も、否定はできない。
のそのそと――幸いに走るタイプのゾンビでも飛び跳ねるタイプのゾンビでも体の一部を投げつけてくるタイプのゾンビでもないようだが、見える限りを埋め尽くす数が数。
柚希というお子さまランチに立つ旗のようなものをひょいと盗まれた衝撃は、その危機感で完全に払拭された。
「ゾンビ……空を飛ばない人型なのが幸いですね。それでも見た目に反して高い体力にダメージ軽減、ノックバック耐性があるために瀕死にならないと動きを止めない、厄介なモンスターです。状態異常にも強く……動きも鈍いですが、あの数ですし」
「アイツら臭いから嫌いなんだよなぁ……丸焼きにしていいか? エリー」
「いえ……ボスフロアの個体です。さらにあのメイドからバフを受けていますと、生半可なダメージでは倒すどころか……」
「どころか?」
放心状態のおまんじゅうとチョコを抱きつつも気を取り直したおやびん、その隣に――羽を出して飛んで警戒しているエリーが居る。
だが、エリーの顔は暗い。
「……長い時間――でしょう、串刺しにされ続けても倒れなかったモンスターたちです。きっと、ある程度の回復もされており――火炎ダメージでもそう簡単には倒れないでしょう。下手をしますと火の塊となり、そのまま物量で人間様たちの元へ押しかけ……最悪、全滅かと」
「うげ、なんだそれ」
【ひぇっ】
【ゾンビこええ】
【こわいよー】
【エリーちゃん賢い】
【そらまぁユズちゃんに尊死させられなきゃ最強格だからなぁ……特に人間に対して】
【ああ、ネットも自由に閲覧できるし転移魔法でどこでも行けて、やろうと思えばサキュバスとインキュバスのえっちな魔法で誰だって骨抜きに……ふぅ……ちょっと休んでくる】
【草】
【草】
【こいつ……説明しただけで……!】
【草】
【ユズちゃん……どうして……】
【その能力を、メイドさんに……】
【びっくりしてたからね】
【ああ……】
【きょとんしたままさらわれたからね……】
【完全な姫ムーブで草】
【伝統的なRPGで毎回さらわれる姫様みたいで草】
【わりと合ってるところがまた……】
【お前ら、ちょっとはユズちゃんの心配も】
【必要か?】
【不要だな……】
【そんなことより優ちゃんたちの応援だろ?】
【そうだな……】
【当たり前だよな!】
【ユズちゃんユズちゃん お家に誘ってもらったんだから、ちゃんとお礼言おうね あと何時頃帰るかちゃんと連絡するんだよ】
【草】
【危機感が……】
【ユズちゃんだからねぇ……】
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