389話 【味方を犠牲にバフをかけるユズちゃん】
「くぁぁ……んー……」
こしこし。
目元がくっつきそうなくらいに眠い。
なんでだろうね。
【かわいい】
【かわいい】
【ユズちゃんおねむ】
【でもユズちゃん……もう9時よ……】
【草】
【え、園児さんなら……いや、園児たちも9時にはがんばってるか……】
【ユズちゃん……昨日は22時にはすやすやだったのにね……】
【起きたのも、ついさっきだから……】
【11時間半寝てもまだおねむ……】
【もしかして:ユズちゃん、年少さん以下】
【草】
【草】
【え、園児さんでもおねむな子は居るから……】
【せめて小学生って言ったげてよぉ!】
【草】
【無理でしょ、こんなん……】
【おねむでもちょうちょでもないときは年相応なんだけどなぁ……】
【年相応って?】
【え? 小4くらいでしょ?】
【だよなぁ】
【そういや、かの人間に擬態してたロリ女神も、ダンジョンに潜るほどおねむだったっけか】
【あー】
【つまり、人外になるほど……?】
【いや、エリーちゃんはぴんぴんしてる】
【つまり?】
【ロリっ子だからってこと?】
【ただ単に子供だからだったね……】
【草】
「ゆずきちゃん、まだ眠い? もう少し待ってもらう?」
「んぅー……」
……ふりふり。
眠すぎるから、頭を振る。
髪の毛がふぁさって流れる。
……ずいぶん伸びたなぁ。
「『眠いけどがんばる』だそうです!」
「す、すごいですね理央さん……!」
「あやちゃんも褒めてるよ!」
「そうです! 私も褒めています!」
【理央様!】
【あやちゃんの母性よ】
【偉いぞ理央様!】
【でも十年来のストーキングとセクハラの果てだと知ると……】
【ぺっ】
【もう淫獣に勝ってるとこなんてかわいいくらいしかないぞ!】
【忘れるな、理央様はこれでも女の子なんだ】
【百合勢力にとっては今でも……あ、ユニコーン様は生えているのでダメですわ】
【草】
【もはや性別以外で擁護されてない理央様】
【正当な理由だから……】
【いいじゃん、どうせユズちゃんとくっつけたんだから】
【ぺっ】
ああ、眠い。
ダンジョンの中って安心するからか、妙に眠くなるんだよね。
「分かるわぁ、眠いの」
「お母さん」
「私も、この10年近く、ずぅっとうとうとしてたから」
「それ、たぶん別の意味だと思うよ」
「でも溶けそうな眠さでしょ? 私はそれに吐き気とかめまいとか悪寒とか発熱とか節々とお肌と喉とありとあらゆる痛みがあったけど」
「お母さん、いつもうなされてたんもねぇ」
【ひぇっ】
【ユズねぇ……】
【さらっと出される重すぎる過去】
【かわいそすぎる】
【10年間、よく耐えたよなぁ】
【妹のユズちゃんががんばってくれるのを、ずっとな……】
【ぶわっ】
【感動した】
【\1000000】
【ふぁっ!?】
【ユズねぇとユズちゃんの生い立ちで、もうね……】
【分かる】
【そんな子が、いまやこうして政府管理の高難易度ダンジョン、その最下層手前まで来てるからなぁ】
【しかも、戦うときは……】
【\5000000】
【ふぁっ!?】
【草】
【ユズちゃんよりも女の子らしい中学生の体つきで紐だから】
【しかも完全合法、本人が自称経産婦だから遠慮もなし】
【※ユズちゃんとユズねぇの人気度、30代~60代男性限定で人気が逆転してます】
【草】
【草】
【お前ら……】
【だってもし普通にロリなら、万が一期待するし……】
【ユズちゃんはもう百合ハーになっちゃったからなぁ】
【でもユズねぇなら可能性が】
【しかも……もし本当に経産婦なら、最低でも20代ってことで】
【再婚するなら、億が一でも希望はあるんだ】
【分かる】
【これ、ユズちゃんが大サバトやらかさなかったらさ、もっともっと兆が一を狙う野郎どもでえらいことになってたよな】
【ユズちゃん、まさかこれを見越して……いや、ないな】
【ないな】
【ああ、ない】
【全財産賭けても良い】
【賭けは不成立だよ】
【大丈夫、俺、大サバトのおかげで結婚できたからその感謝ってことでいくらでも課金できるぞ!】
【草】
【ああ、婚姻数が多すぎて役所がパンクした数ヶ月前】
【いいなー】
「……では、よろしいでしょうか。作戦は昨晩に再確認した通りです」
僕たちがいちばん最後だったらしく、前に出てったら……目の前に作った壇上には軍人さんの偉い人と優さんがマイクで話し始める。
「ここから先は、未だ我が国が制圧できていないエリアです」
「軍人の方たちや、私たちダンジョン潜りを動員した攻略も、すべてこの階層が限界でしたからね」
「そして、あくまでスキャンの情報ではこの下が最下層――ですが」
「このフロア――今回は柚希さんを始め、皆様のご協力のおかげで、ここまで不測の事態もなく制圧できましたが……モンスターの異様な多さ、桁違いのフロアのサイズから……そのさらに先も予測されています。みなさん、左右の腕のリストバンド、及び――『胴体への、計3つのリストバンド』を再度確認してください」
リストバンドは、文字通りの命綱。
過去には、なんでもそれが立て続けに壊れ、命の危険があった人も居たとか。
僕たちも――壊れこそしなかったけども、電波が通じにくいっていう、エリーさんがいたずらしてきたときに似たような経験をしたもんね。
だから、3つ。
左右の手首に本命と予備――そして、そのどちらも、腕が取れたりして使用不可能なときにでも、体に巻き付けたので命だけは助かる。
そういうことらしい。
……そうだ、今回はかなり危険な戦いなんだ。
ここまですっごく順調すぎてぼーっとしてたらいつの間にか何十階層も降りてきた気がするけども、その毎フロアでことごとくおまんじゅうを抱えてるだけだった気もするけども、それで大歓迎って感じなんだから。
「確認はされましたか? 絶対に――」
「はーい」
「着け忘れの――――――へ?」
だから、ちゃんと服をめくって――僕はおなかが細すぎるからって、落ちないようにってブラジャーに縫い付けてあるリストバンドを見せるように、
「ゆ、柚希先輩ぃぃぃぃ!?」
「んもー、うるさ……あ、マイクさんが爆発してる」
「柚希さん!? ふ、服を……!?」
「 」
「 」
「 」
「 」
「 」
「 」
「隊長! 隊長ぉ――!? リストバンドが起動した者が30名です!」
「……だ、ダンジョン潜りも……ええと、50人……リタイアです……」
「?」
あれ?
なんでみんな、僕のおなか見てるの?
【 】
【あっあっ】
【●REC】
【ふぅ……】
【これが政府公式配信ってマジ?】
【背伸びしてブラしてるJSが服をぺろんってめくってスポブラ見せつけてくる配信か……】
【うむ】
【うむ】
【綺麗な幼児体型】
【しかも分かってない顔でこっちを見てくる】
【ふぅ……】
【違うぞ、ダンジョン攻略配信だぞ】
【すげぇな……】
【ああ……】
【我が国は全世界から一歩先へ進んでいるんだ】
【\9999999】
【きゅうひゃく……えっ】
【いっせん……ひぇぇ】
【分かる】
【ふぅ……】
【ユズちゃんの ブラジャーとおへそ見せつけ攻撃! 士気が上がった!】
【※一瞬で80人がリストバンドで地上に直帰しました】
【味方への被害がでかすぎる】
【もうだめだ……】
【草】
【あーあ】
【ま、まあ、ここまでびっくりするくらい楽勝だったし、きっと大丈夫だろ……】
【ああ、ユズちゃんが居るなら最後は必ずギャグになるからな……】
【あの 全国の救護班詰め所、視聴者の末裔たちが一気に転送されてきて大惨事なんですが……】
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