36話 いきなりパーティー結成配信
「――そんなわけで女の子4人のパーティー結成しましたー!」
カメラに向かうひなたさん。
……うん、こうなるって知ってた。
この子、思い立ったらすぐだもん……。
【ユズちゃんの突発配信かと思ったら普通の配信だった】
【なんでユズちゃんの配信って毎回急なん?】
【ユズちゃんだからだよ】
【信頼の実績だもんな】
【しかし平均年齢の低そうで……大変に良い】
【うむ】
【昨日のロリとおっぱ、お姉さんのアカウントもパーティーでセットになってるからすぐ見つかったな】
【ひなたちゃんとあやちゃん……良い】
【え、でも新しい子も居るぞ?】
【理央ちゃんか……え、この子もかわいくない?】
【レベル高いパーティーだな】
そんなわけで僕たちは今、初心者用ダンジョンのひとつに来ている。
まぁ、2人に会うために1時間かけて来てるし、今日は時間あるから断る理由も無かったし。
お昼食べてみんなが楽しく話してるのを眺めて、眠くなってきてうとうとしてたら、なんだかいつの間にか配信するってことになってて。
……僕がやだっていう余地はなかっただけだけどね。
その度胸がないとも言う。
「じゃあ改めて! ひなたでーす。 剣でばっさばっさ切って行きまーす!」
「ええと、あや……で、でーす……後ろから魔法、がんばりまーす……」
【うむ】
【活発ロリとお淑やかお姉さん……良いな】
【ああ】
【お前ら登録してやれよ?】
【もちろん】
【ユズちゃんの配信だとコメント速すぎるから移動しよっと】
【お、その手があった】
【そういうことで移住だー】
【なるべく移住先の子の話もしてやってなー】
何となく思い出してきたけども、本当はなんか用事あったっぽい夢月……あやさんも、ひなたさんの押しに負けたらしく、急にカメラの前に引っ張り出されて困惑中。
あ、今日の2人のカメラはゲート前で借りたやつ。
僕の配信機材とか、2人の支給されてる武器とかは全部こっちのゲートのロッカーに転送されてたらしく、この前にもらったのが全部ひとそろいで攻略には問題ないらしい。
転送とかさらりと言ってるけど、すごいよねぇ。
手ぶらでさくさく攻略だ。
……ちなみに「ダンジョン潜ってるんだぜ!」っていばりたい人は防具とかだけ持ち歩くのが多い。
登下校で見せびらかされてうらやましかったんだよねぇ。
で、2人の配信機材も光宮さんがさくさくっと準備。
本当、なんでもできるんだよね、この子。
「……ほら! ゆずきちゃん! 上にはなんにもないからカメラ見て!」
「え? あ、はい、柚希です?」
さっきまでいろいろ設定してたらしい配信機材を自分の顔に向けつつ、僕を急かしてきてるひなたさん。
待って、僕、早いのには追いつけないんだよ。
【草】
【ひとりお空見上げてたユズちゃん】
【お空じゃなくて天井じゃね?】
【ダンジョンの天井なんか見て……ああうん、ユズちゃんだからね……】
【なんでこの子はこう、とことんまで天然なんだ】
【この中でダントツの知名度なのにもったいねぇ】
「あ、じゃあ先に私! 初めましてー、柚希先輩の後輩で幼馴染みの理央でーす! 私、モンクなのでいざとなったらタンクもできまーす!」
【新しい子】
【お、前衛が2人に増えてバランス良くなったな】
【なるほど】
【でもちょっと待って? ユズちゃんのこと先輩って】
【それにしてはでかいが……】
【何とは言わないがでかい】
「あ、そうですそうです。 ネットであることないこと書かれてますけどー」
ちらっと、コメントを見ながら話していた彼女が僕を見てくる。
うん。
僕のことは全部、君に任せてるよ。
そんな気持ちを込めたのが通じたのか、すぐに慣れた感じでカメラに向かう。
「柚希先輩……なんと! 何とこの見た目で!」
びしっ、と、僕に指を突きつけてくる。
演技派だ。
「この童顔! この柔らかすぎて折れちゃいそうな体つき! そこのひなたさんよりちょっと大きいだけの背丈! あ、これを3歳くらい育てたのが柚希先輩のお母さんなんですけどね?」
【ママン!】
【ママンもちっちゃいのか】
【ユズちゃんのお姉ちゃんみたいな見た目で経産婦……ふぅ……】
【お前……】
【お母さんの配信もはよ】
そこに男らしいワードが1つも含まれてなくてがっかり。
あと経産婦って何さ……あれでも「星野くんのお姉ちゃん? 高校生?」ってみんなに言われるんだぞ。
「……なんと! なんとなんと、柚希先輩は……高2です! ねっ、せーんぱい!」
「あ、はい……一応……」
今は休学中だけどね。
つまりは現在学歴中卒の無職……や、バイトか。
【えっ】
【は?】
【冗談でしょ?】
【いや、ユズちゃんの反応が……】
【マジ?】
コメントの反応が……うん、知ってる。
そう見えないんだよねぇ……知ってた。
「へー、そっかぁ、こうこうせい……え? ……えぇぇぇぇぇぇぇ!? えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」
【草】
【ロリが絶叫している】
【そらそうよ】
【って言うか聞いてなかったのかよ草】
【リアクションが実に良い】
「ウソぉ!? ウソでしょゆずきちゃん!? 私とそんな変わらないって思ってたのにぃ!? ねぇあやちゃん!?」
「……ええ、ごめんなさい、私も正直……中学生くらいだと……」
「……あ、あはは……慣れてますから……」
……しょうがないとは言っても、いつものこととは言っても、やっぱり心にぐさっと来る。
身長、中学に入ってから伸びなかったからなぁ……。
「……あの。 ちなみに、おふたりは僕のことを……」
「……えっと。 6年生さんかなって思ってた」
「……ええと。 すみません、中学1、2年かと……」
そうだよね……そう見られるよねぇ……。
身長も……そりゃあ低いし、お母さん譲りで若く見られる顔つきらしいけど……6年生ぃ……?
「……先輩」
「理央ちゃん」
ぽんっと肩を叩いてくれる光宮さん。
ああ、やっぱり僕には君だけ――
「今度、ひなたさんの小学校のコスしてみません?」
「やだ」
「あ、私の制服だぼだぼだから着れるんじゃないかな!」
「やめて」
「……高校生が、小学生のコスプレを……」
「やめてください、やめて」
【かわいい】
【本気で困ってて草】
【でもそれが?】
【本気でかわいい】
【一瞬でユズちゃんと理央ちゃん?の関係性が分かるな】
【ついででこのパーティー内の関係性も決まったな】
【ああ】
【お前ら投げ銭だ! 投げ銭でユズちゃんのコス衣装を買わせるんだ! このユズちゃんに合法的にコスさせられるぞ!! 特にロリ衣装を!!】
【!?】
【天才か】
【その理由なら遠慮なく投げられるし使えるな!】
【なるほど ユズ……じゃなくて理央ちゃーん! ユズちゃんの収益化させてー】
「あ、そうですね。 柚希先輩のアカウント……うわ、まためっちゃ増えてる……収益化、とっくにできますもんね。 任せてください! かわいいの買ってもらいます!」
「きゅい!」
「えっ」
あの、配信とかの利益も僕の生活費に使うんじゃ……。
いや、光宮さんはしっかりしてるから大丈夫だろうけどさぁ……でも、ねぇ?
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