352話 トイレだけで大騒動
「あ、ちょっとトイレに――」
「分かりました。――親衛隊の皆さん」
『こちらAトイレ、4名』
『こちらBトイレ、10名来ちゃいました』
『こちら教員前Fトイレ――開いてます! 確保します!』
『ユズちゃん案件での看板設置完了! OKです!』
「ということで、ちょっと歩きますけど教員室前に行きますよ、柚希先輩」
「……うん」
僕が席を立つと――教室にいたみんなが、がたがたと一斉に立ち上がる。
「ユズちゃんから漏れてるのは?」
「んー、今のところないっぽい?」
「えっちな気持ちにならないから大丈夫だ」
ぞろぞろぞろ。
半分くらいが一斉に教室から雪崩のように出て行き、残りの人たちが僕たちを取り囲む。
「……最近いつも思うんだけど……これ、必要?」
だって、たかがトイレに行くだけだよ?
こんなに大げさにしなくたって。
「それ、うちの学校の6割で不純異性交遊が、残りの2割で不純同性交遊が一斉に起きて、ことごとくにカップルができたあの日のこと自覚してるなら言うんだな、星野」
「ちなみにこれ、隣接してる中学と合わせてだからな?」
「感謝はしてるぞ星野!」
「あれから三日三晩は……最高だった……」
「ふぅ……」
「当てられるな、夜まで待つんだ」
「うちの学校どころか国どころか半径6600km全体がいかがわしくなっちゃって」
「だって大サバトだもん」
「それなぁ」
「ユニコーンロリとサキュバスとサバトとかいうギャップよ」
「ユズちゃん……しゅきぃ……♥」
「脳を焼かれた生徒も居るんだ、自覚してくれ……頼む……」
「あ、ちなみに1割は教師とか用務員さんとか警備員さんとか学校前の商店街の人とかとのやべーカップル、残りの1割は小学生で年上に目覚めた子たちが襲来したことでだからな?」
「……そうだったね……ごめん」
うん……僕の普段の、ちょうちょモードって呼ばれちゃう思考回路でも、流石にやばいって思う……。
………………………………。
普段は目を逸らしてるけども……世界中で大変なことになっちゃったんだよね、僕のせいで……。
感謝はされてるらしいけども、そのせいでこの町とかどこもかしこも色とりどりの軍人さんばっかりだし。
でも、僕だけが悪いんじゃないもん。
生まれつきなんだから悪くないもん。
……そう、言い張りたいけど僕の理性とリリスモードのかしこい意識が邪魔してくるんだ。
「そんなユズちゃんな星野君だから……ね?」
「トイレとか我慢させすぎたり」
「同じ空間のトイレに居ちゃったり」
「あと普通に星野、男子トイレに入ろうとするしで」
「異世界に居たエリーちゃんにすら漂った匂いっていう名のフェロモンが拡散される可能性があるからって」
「男子トイレでも女子トイレでも、それが爆発しちゃったら……」
「分かったってばぁ……」
正論でしかない事実で打ちのめされる僕。
……僕は普通に高校に戻りたかっただけなのになぁ……なんか各地では僕のこと「えっちな神様」とか崇め始めてるらしいし……やめてほしいなぁ……。
「じゃ、行きましょうか柚希先輩♪」
「私たちもついでですから……ね?」
「どうせお家じゃみんな同じおトイレ使うし!」
「これ、健全なのかなぁ……体の関係は無いのに、なんだかむしろいかがわしい気がするなぁ……」
僕の前後左右は4人に――後ろで悩んでる優さんだけが癒やしだ――ホールドされ、その外をクラスの人たち――親衛隊さんって言うらしいね――に囲まれて。
「ユズちゃんだ……!」
「今日も生ユズちゃんを見れて感激……」
「なんかやらしい気持ちになってきた」
「落ち着け、ちょうちょモードにまで反応するようになったらおしまいだぞ」
……廊下に出ると、やっぱり人だかり。
「星野君は、今や世界で1番有名な女の子だからねー!」
「……男なのになぁ」
「それ知ってるのはうちの学校関係者だけだから」
「それにさ……どうせ」
「うん……今さら言ってもってのは分かってるけど……」
クラスの人たちが励まして……?くれてるけども、やっぱり悲しいものは悲しい。
「……応援はしてるぞ!」
「俺たちは男扱いするからな!」
「てかしないと田中がなぁ……」
「不憫でなぁ……」
「サバト率99%の中、ひとり寂しくうずくまっててなぁ……」
ちらりと教室を見ると、
「………………………………」
なんとも言えない表情をしている田中君。
……うん、リリスモードのときに分かっちゃったけど、君って、僕のこと。
幼なじみの同性の友達だからこそ難しいよね、そういうの。
もうちょっと落ち着いたらゆっくり話して気まずいのは解消したいな。
……なんで僕、女の子扱いが嫌だからダンジョン潜りさんになって男らしくなろうとしたらリリスなんかになっちゃって、余計に女の子扱いされてるんだろ……iろいろと気まずいし……。
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