33話 2人に剥かれた
「でもやっぱり、女の子としてってのは……」
いくら僕が女の子だってみんなから思われてるとは言っても……やっぱり、こう。
男としてのプライドが……ねぇ?
「あ、昨日の夜、先輩に教えてもらったのでおふたりには連絡しときました。 オッケーもらっときました」
「あ、そう? やっぱ女の子同士だから仲良くなるの早いよね」
そういえば連絡先はもらってて、お互いにあいさつだけしてあった、あの2人。
……まだ本当に僕とパーティー組むって言う……って、あ。
「……こ、光宮さん!」
「どうしたんですか?」
「僕! あの2人に女の子だって間違われてると思うんだ!」
「でしょうね」
「でしょうねって! 言い忘れてたけど、言わなきゃ!」
あのときは……特にひかりさんが、まだ小学生な彼女があんまりにも嬉しそうだったから言い損ねてたけども、やっぱりウソは良くない。
特に男女って言う、ダンジョンっていう場所では大切な要素なんだ、やっぱり正式に組む前に伝えとかなきゃって。
「柚希先輩。 ひとつ聞いても良いです?」
「え? あ、うん」
「柚希先輩が、私とか他の女の子とホテルに泊まったとして。 何します?」
「?」
ホテル?
いきなり何言ってんだろこの子。
「1泊で何千円とか、そもそも高いから『ここは止めよう』って」
「そうでした、先輩って、自分のことになると急に知能指数が……じゃあ、柚希先輩が好きな女の子と一緒になったらどうします?」
「?」
今度は「好きな女の子」。
……昨日恋愛小説でも読んだのかな?
「そんな経験はまだないけど」
「まだないけど?」
「嬉しいよって言いながら、寝るまで楽しくお話しするかなぁ」
「………………………………ですよねー」
「きゅいー」
なんだか彼女が求めてる回答じゃなかったみたい。
……ごめんね、僕、どんな本でも好きだけども、恋愛小説とかどろどろの恋愛ものとかはつまんなくて流し読みしちゃうから……。
だってああ言うのって、そういう場面じゃ話進まないし……読み飛ばしたりしてても分かるし。
「……じゃあ、こう聞けば良いですか? 先輩は、あの2人と一緒にダンジョンの中で野宿とかできます? 緊急の場合とか、あとはレベリングので。 わりと最近流行ってる方法なんですけど」
「? ダンジョンって基本的にその日で撤退するんじゃ……あ、うん、するんじゃない? キャンプって楽しいよね」
「……先輩がそんな感じなので、むしろ男だって言わない方が2人の気持ちが楽になるんです。 詳細は……難しいので分からないでしょうけど、私が保障します」
「ん、分かった。 よく分かんないけど光宮さん」
「理央」
「……理央ちゃんがそういうなら間違いないもんね」
「じゃあ『女子4人パーティー』ってことで申請しときますね」
どんな流れだったのかは分からないけども、とにかく女子の光宮さん的には、あの子たちに「僕は男だ」って言わない方が良いらしい。
ウソは良くないと思うけども、他の人がそれで困るなら嘘も方便だってのもまた理解はしてる。
バイト先で女の子と間違われても「違うんですって言わない方が楽だよ」って教えてもらったりしたから。
僕よりもずっとずっと世渡りとか人間関係が得意な光宮さんの言うことだ、今は彼女の言う通りにしとこっと。
「きゅい!」
「……君ぃ……実は言わないだけでしょ」
「きゅい」
「気持ちは分かるけどねー……まぁ、だから男の子なのに懐いたんだと思うけど」
「きゅい!」
「男の娘? どこで覚えたのさ、そんなワード……合ってるけど」
とりあえずで光宮さんとおまんじゅうが仲良さそうにしてるから、いっか。
「じゃ、行きましょっか」
「?」
行く?
どこに?
「あの2人と、お昼食べるって約束したんです」
「へー、すぐに仲良くなれるんだね。 やっぱりすごいね、光宮さ……理央ちゃんって」
「……先輩も行くんです!!」
「え? なんで?」
「義母さま、カモンです!」
「はーい♪」
「え? お母さん?」
いつの間にかに着替えて顔を整えて……今日も結構元気みたいで嬉しい……お母さんが入って来る。
……で。
「……なんでお母さんの服、両手で持ってるの?」
「ゆずに着てもらうためよ?」
「なんで?」
「先輩に着てもらうためです」
「なんで?」
「きゅいっ」
なんでそういうことになってるんだろう。
ていうかなんで2人はこんなに息が合ってるんだろう。
僕が男だから分かんないのかなぁ……。
「ゆずは、やむにやまれず女の子するんでしょ?」
「はい。 まー、バレたらそのときはそのときってことで……柚希先輩なら多分怒られないでしょうし」
何着かの服を僕のベッドで広げて組み合わせを考え始めるふたり。
「きゅいきゅい」
……と、1匹。
さすがに違うとは思うけど……違うよね?
「いざとなったら私が怒られますから。 実際、先輩は性別のことでトラブル経験してますし」
「そうねぇ……ゆずにその自覚はないけどねぇ……」
「無いから問題なんですけど、無いのでこのまま強引に進めようと思うんですよ」
「ゆずってば、乗り気じゃないと決断がねぇ……お願いできるかしら?」
「任せてください!」
がばっと立ち上がった光宮さん……の両手には、お母さんのブラウスとお母さんのスカート。
……しかも、それ、新しいのじゃない……?
お母さん、元気なときに外に出ると「この子のお姉さんですか? そっくりな姉妹で素敵ですね!」って言われて、ご機嫌で服買っちゃうからなぁ……。
そういうときは僕もお母さんが元気で嬉しくって、ついついOK出しちゃうし……。
「本当は、今どきの流行りが分かる理央ちゃんのが良いんだけどねぇ」
「あ、じゃあ次からは私ので良さそうですね!」
「理央ちゃんは良いの? 自分の服をゆずが着ちゃって」
「むしろ興奮します!」
「そういうところは隠しましょうねー。 ゆずにはバレないけど」
よく分からないけど、なんか良くないことだけは分かる。
「じ、じゃあ、僕、着替えるから2人は……」
もはや逃げられないことは理解した。
だからしょうがなく着替えようとしたんだけど、
「きゅい」
「え? お、おまんじゅう?」
今日の分の服を取り出そうとした僕の脚に、おまんじゅうがしがみついてる。
え?
「おまんじゅうちゃん、ありがと!」
「きゅい!」
え?
「……さ、せーんぱい?」
おまんじゅうから顔を上げた僕の目の前には……両手をわきわきさせてる光宮さん。
「じゃ。 脱ぎましょっか♪」
「え、あ、ちょっ!? だ、ダメだよ、僕は男――」
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