320話 珍しく冴えてる僕と、サバト中断
「サバト。 それって、どうやったら止められるんですか?」
サバト。
……その……えっと……うん。
今の僕なら、分かっちゃう。
近くに居る――どころじゃなく、この町一帯に住んでる人たちが、みんな、さっきみたいな感じになっちゃうんだよね。
で、誰にも止められないまま3日間。
……うん。
田中君の本にあったみたいに、裸でトレーニングでもしたのか、汗だくになる男の人たちと女の人たち――の、本当の意味でのが、繰り広げられちゃうんだよね。
うん……恥ずかしいけど、考えないようにしとこう。
うぅ……こんなの、知らない方が幸せだったよ……。
とりあえず、あんな本を無知だった僕の手の届くところに隠してた、田中君のばか。
あと、ああいう本をタブレットとかにいつも入れて「おすすめです!!」って渡してきてた、理央ちゃんのばか。
えっちな本を僕の本棚に忍ばせてきてた、お母さんのばか。
ばか、ばか、ばか。
「発動してしまったサバトを、止める……ユズ様が、完全に魔力を制御できたなら、あるいは……ですが……」
「魔力を、制御。 それって……」
僕には、なんでもすごい魔力があるらしい。
特に自覚はないけども――いやいやそういやついこの前、女神様に助けてもらってだけどもなんかすごいのできたじゃん。
エリーさんとおやびんさん、チョコにおまんじゅうの力を借りて、だけども。
「今からでも、間に合いますか?」
「……厳しい……ですが、ええ。 皆様が本格的におっぱじめるまでには、まだ」
「おっぱじめる?」
ってなんだろ。
………………………………。
……あっ……なるほど。
なんかこう、えっちな言葉とか知識をたぐると、知らないはずのそれらがどっかから降りてきちゃうから慌てて追い出す。
うぅ……リリスさんって、えっちすぎる……。
「柚希先輩は知らなくていい表現です!!」
「理央ちゃん、僕は今、エリーさんとお話ししてるの」
ごめんね、僕、知っちゃったんだ。
僕のことをまだ無知だと思っているからか、横から出てくる理央ちゃんをガードしつつ、真剣な面持ちのエリーさんに問う。
「エリーさん」
「……はい。 お答えします」
えっちな服装のエリーさん――いや、これはサキュバスとして吸精を行うために最適な服なんだって知識は要らないから――うぅ……。
「ユズ様は、リリスです。 サキュバスとインキュバス――人間様や動物、魔族、魔物――モンスターの生命力を搾取して大魔法を行使する、古代の種族です」
「古代の……」
「数十万年前に大規模な戦争があり、古代種の大半は滅びたと聞いています」
なんか、スケールがすごい。
そんな世界を知ってたら、そりゃあ「力さえあれば生まれたての人類なんて」って思っちゃう魔王さんたちが居ても、おかしくはないのかも……?
許さないけどね。
「ワタシたちサキュバスやインキュバスは、時代が降ってから生まれた……そうですね。 低コストの代わりに低位の魔法しか使えない。 言わば、廉価版です。 今の時代に合っているとも言えますが」
「……廉価版」
「それほど、元のリリスという種族は……」
「よく分かりませんけど、つまり、強いんですね?」
「はい。 ワタシは一時的に――種族を束ねる者として成っていただけですが、ユズ様は本質的に魔力を取り込んで成った御方。 確実な制御を行えれば、種族として産まれながらにして最強のドラゴンをも上回るでしょう力を得られるはずです。 ドラゴンたちも、元は古龍――エンシェントドラゴンから派生した魔物ですので」
「ふぅん……?」
「あ、あの……今、とんでもない情報が魔族であるエリーさんから……」
「大丈夫、柚希さんはこの程度では動揺しません」
動揺はしてるよ?
うん……ずっと真っ白でぼーっとしてた頭の中も、今ははっきりしてるからね。
……今思えば、あれがリリスと人間の、差。
魔力をたらふく取り込んで内面は変質してたのに、それを自覚しないで貯め込み続けるだけで――つまりは栄養不足でふらふらでぼーっとしてたのと同じなんだ。
「………………………………」
「大丈夫ですか、柚希さん?」
「無理、しなくて良いんだよ、ゆずきちゃん」
「え? ……あ、はい、大丈夫です」
あやさんとひなたちゃんが、そっと僕を抱きしめてくる。
……ごめんね。
僕、今、頭が無駄に冴えちゃってるから、いろいろ分かっちゃうんだ。
2人が――こうして、僕を抱きしめてるあいだも……その。
あと、そんな僕たちを見ている理央さんも……あれ、優さんも?
あとはエリーさんもだけども――僕と……その……そういうことを、したいんだって。
………………………………。
……サバトの魔法が、まだ軽く掛かってるんだって思っておこう……うん、とりあえずなんとかなるまでは……。
◆◆◆
来週初めはお休みする可能性があります。
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