311話 ある夜、夢の中でおやびんさんたちと出会った
「……んぅ?」
「お、起きたかユズ――じゃねぇか、魔王サマよ」
「おやびんおやびん、ユズ様は魔王様って呼ばれるとマズいらしいっす」
「そんな感じのこと、つい昨日くらいにもエリー様に言われてたけどもう忘れてんすか? バカなんすか?」
「軽い物忘れだろうが。 あとお前たちは俺様に対する敬意がだな……」
「………………………………」
「……………………………?」
……あれ?
ここ、どこ?
あと、だれ?
「つうかユズ様もやっぱサキュバスなんすねぇ」
「エリー様より幼い身体だが、一応子作りできる女の身体になってるみたいだしな」
「お前……」
「駄目だ、こいつはサキュバスのロリにしかアプローチしてない変態だからな」
「えー、人間たちも幼体が好きなの多いってエリー様言ってましたよー?」
僕の目の前には――あぐらをかいて、お母さんが好きそうな一升瓶を片手に豪快にあおっている女の人。
明るいはずなのに、光沢以外は闇みたいに暗い黒色な髪の毛――しかもすごいくせっ毛っていうか毛束ごとにあっちこっち逆立ってる――を散らし、まるで山賊さんみたいな服で、しかもスカートがめくれてぱんつが見えてる人。
その人を中心地ぐるりと囲んでいるのは、彼女とそっくりな服を着ている――女の人も美人さんだけど、それに劣らないかっこいい男の人たち。
どっちかって言うと、この前見たインキュバスさんたちみたいな、お母さんとか理央ちゃんがテレビ見ながら批評する対象の線の細いタイプじゃなく、がっしりとしているタイプのかっこよさ。
……僕はこういう男の人の方がイケメンさんだって思うんだけど、お母さんたちは違うって言うんだ。
この人たちみたいにがっちりしてる方が頼りがいあって良いと思うのになぁ。
そう言うと必ず理央ちゃんが抱きついてきてくすぐってくるから言わないようになったけども。
「……お、目ぇ覚めたか、ユズ!」
「………………………………?」
「あー、これあれじゃないっすか? ちょうちょってやつ」
「あー」
「やっぱ精霊族なんじゃね? これで人間とか……」
「精霊族とか1年中ふらふらしてるしな」
「いや、肉体的には紛れもなく人間なんだと」
「マジか……信じられねぇ……」
「正直まだ信じられねぇなぁ」
「あのサキュバスたち――人間たちから見ても美形ってのたちと同じくらいだもんなぁ」
「あれが俺たちのおやびんの親分じゃなけりゃなぁ……子を産んでほしいのになぁ……」
「本当に幼体だからなぁ、俺たちのご主人様は」
「これでおやびんと杯交わして支配下に置くんだ、やっぱ人間ってこええな」
「誰だよ、人間滅ぼそうとか支配してこき使おうとか言ってたの」
「あいつら? もう倒したから知らん」
「バカだよなー」
「まぁ死んだ魔力で新しく生まれ変わったら、ちったぁ賢くなるんじゃね?」
「なるといいよな」
「まぁでも人間たちにとって極上の幼体ってのは分かる」
「分かる」
「正直興奮する」
「子を産んでほしい」
「お前……」
「そういうのはあのサキュバスたちに頼めよ? まぁ代わりに腰立たなくなるまで魔力吸い取られるけどな! がはは!」
「頑丈な鱗が自慢だったけど、サキュバスの番持って分かったよ……人間の弱っちい鱗はこそばゆいから、あいつらの指先でくすぐられるとな……」
「………………………………?」
20人30人くらいかな、まるで山賊の女頭領的な人を囲んで酒盛りしてる男の人たちは、適当にああでもないこうでもないって言いながら楽しそうにしている。
「……なんだ、夢かぁ」
僕は、起こしていた身体を横たえようとして――
「また寝るのか? まぁユズは幼体だからな、もっと寝て食べねぇとな。 酒には強かったけどなぁ」
……彼女が、こっちを見てきた。
周りの山賊さんたちも見てきている。
「……夢の中の人が話しかけてきた」
「お? 夢?」
「はい」
だって夢でしょ?
「そうなのか?」
「そうじゃないんですか?」
夢じゃないの?
「………………………………?」
「………………………………?」
僕と同じタイミングで、でっかい盃――日本酒か何かが水面張力で縁ぎりぎりまで張っているのをこぼさない絶妙さで持ちながら、首をかしげている女の人。
癖の強い髪の毛も一緒に傾いて、でっかいお胸も――あやさんよりもさらに大きいから揺れ幅もおっきいっていうか、多分これブラジャーつけてない。
……周りはみんな男の人なんだけど、良いのかなぁ……?
「おやびん……」
「幼体のボスと同じ反応とか……」
「やっぱバカだったのか……」
「おやびんはアホかわいいんだぞ」
「お? 誰か今、俺様のことバカにしたか?」
「酒吞むと聞いてないこと聞こえたりするんすよおやびん」
「あー、そういやそっか」
………………………………。
……えっ。
「……おやびんさん?」
「ん? おう」
首っていうか上半身が傾いたまんま、器用にお酒をすすっていた彼女が返事をする。
「……おやびんさんって……女の人だったんですか……?」
「一応雄にもなれるっちゃなれるが、雌の方が気が楽だな」
「そうなんですかぁ」
「そうなんだよなぁ」
「脳が……よじれる……」
「これが『こめんとらん』の気持ちか……」
「分かる」
「でもこれが良いんだ」
「分かる」
「だからこそ俺たちはボスとしておやびんとユズを取ったわけでね」
「な」
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