310話 お風呂上がりと2人と田中君
「ふぅ……」
理央ちゃんが帰っちゃったから、いつも通りに静かなお風呂で気楽かなって思ってた僕。
お母さんといっしょに入ったりもするけども、僕はまだ気になる年頃じゃないから大丈夫。
友達に聞かれてそう答えても、「……まぁ星野だしな」って言うし、きっと高2の男でも、背が低くってお湯を2回炊くのは大変だって家庭の事情があるんなら普通のことなんだろう。
けども、いつもはうるさいし触ってくるし揉んでくるしにぎにぎしてくるし触らせてくるし揉ませてくるしぷにぷにさせようとしてくる理央ちゃんが居なかった代わりに――今度は、あやさんとひなたちゃんがお風呂に押しかけてきて。
だから結局いつも通りに、女の子とお風呂に入ることになって恥ずかしかったんだ。
……僕の体をじーって見てくるの、あれは理央ちゃんだからかなって思ってたけど2人も同じくらい見てきたし、きっとあれは女の子の生態なんだろう。
まぁ自分の身体にあるものがなくってないものがあるんだ、そりゃ気にもなるよね。
理央ちゃんと僕も――理央ちゃんがせがんできてたから、小学校まではお互いに見せ合って「不思議だね」って言い合ってたし。
理央ちゃんは普通に僕のをこねくり回して楽しんでたし、僕も理央ちゃんのおまたとかを見せられて触らせられたりしてたし。
……そういうの、僕はもうしなくなったのに理央ちゃんは未だにやってくるんだよなぁ……おかしいなぁ、僕の方が年上ではあるけども、女の子の方が早熟だって聞いてたのに。
けども、一般的には男が女の子のはだか見たら怒られるのに、その逆は男が困るだけ。
世界って理不尽だね。
理央ちゃんはずるいよね。
「なんで私の身体、くまなく見てくれないんですか!? そんなに私って女として魅力ないんですか!?」って、外国の映画とかでよく聞くセリフ言ってくる理央ちゃんは、きっと普通じゃないんだ。
「……反応……してくれませんでした……」
「あやちゃん、元気出して?」
「私、これでも体には自信があるんだってうぬぼれていたのに……」
「エリーちゃんが言ってたよ? ゆずきちゃんはまだお子様だからって。 大丈夫、毎日触ったりもんだり触らせたり揉ませたりしてる、さっき帰っちゃったりおちゃんが反応してもらえてないんだもん、焦ってもりおちゃんみたいになるだけだよ?」
お風呂上がりでぼーっとしてる僕の左右で、2人が話している。
2人ともおんなじシャンプーとリンスとボディソープの匂い。
でも、さっきまで濃かった――女の子特有なのかな――匂いは、今はしてこない。
それを認識すると、とたんに安心する僕の体。
なんでかは分からないけども、理央ちゃんとかがあの匂いさせてるときは僕の体が勝手に逃げるんだ。
そう、例えるならサバンナでライオンに見つかった子ウサギみたいな感じで。
サバンナで子ウサギが居るのか知らないけども。
それはそうと、2人から散々にじろじろって近くで、鼻からふんふん息を吐いて挟まれてたあの、ちょっと怖い時間は――「僕がずっと女の子だってだましてたお詫びに僕のはだか見せたんだ」って思えば、しょうがないって諦められるよね。
ほら、田中君のえっちな本にもそういう台詞あったし。
おわびにはだか見せるのは女の子で、そのあとに何するのかなってタイミングでいつも取り上げられるけど、きっとそれは世界の常識なんだ。
……田中君。
いつも思うけどさ。
毎週のようにえっちな本買ってきて枕の下とかベッドの下、押し入れの隅っことか本棚のスキマに入れるの、意味ないと思うよ?
いつもすぐ発見できちゃうし、田中君の家をお暇するときに田中君のお母さんに場所教えさせられて完全にばれてるから。
ちなみに理央ちゃんは、田中君のタブレットを操作して――もっと肌色とか汗だらけの、たぶんすごくえっちですけべでへんたいな本を発掘しては嬉々として僕と田中君のお母さんに見せてきて、2人で感想言い合ったりしてるよ。
……うん。
知らない方が良さそうなことって、あるよね。
大丈夫、僕は男だから田中君の味方だよ。
たとえ女子たち全員に詰め寄られても「男はお猿さんだからしょうがないらしいし、許してあげて」って言ってあげるよ。
最近話せてないし、今度……そうだ。
田中君ってば、大人じゃないから手に入れられないえっちな本があるって言ってたし、教官さんとか優さん、優さんの友達の人たちに協力してもらって彼が好きそうなえっちな本を買ってもらおう。
大丈夫、「僕が欲しいんです」って言ってごまかしてあげるから。
大丈夫、男はお猿さんでえっちな本蓄えててもしょうがないんだって理央ちゃんも田中君のお母さんも言ってたから。
……僕のお母さんがそれ聞いて女の人のはだかの写真ばっかりの雑誌くれたけど、なんか怖かったから、そっと田中君の部屋に紛れ込ませておいたげた。
きっと、喜んでくれてるよね?
けども。
田中君のお母さん、いつもいつも「うちの馬鹿息子がごめんなさいねぇ……スケベで不潔って嫌わないであげてね? 年頃の男子ってのはお猿さんだから。 柚希くんも、うちの子に何かされたり言われたりしたら言ってね? はんごろしにして差し出すから」って謝られてこっそりケーキとかもらうけども、なんでお猿さんで、なんでどっかの名産品なんだろうね?
「……ゆずきちゃん」
「? んぇ?」
「かわっ……!」
「ゆずきちゃんがかわいいのはみんな知ってるけど、そうやっていちいち反応するのはりおちゃんに繋がるから気をつけてねあやちゃん」
「うぅ……はい……完全に意識されなくなるのは嫌ですから……」
「……?」
そういえば、最近のひなたちゃん。
……ちょっと思春期迎えてる?
や、なんていうかさ、ほら……理央ちゃんが一時期こんな感じだったからさ。
「わたしたち。 ゆずきちゃんの、お嫁さんだからね?」
「? そうなの?」
「そうなの」
「そうなんだ」
「うん」
「そっかぁ」
「…………………………………………」
「…………………………………………」
2人は――お風呂でぷかぷか浮かんでたおまんじゅうとチョコを1匹ずつひろって、上がってもまだ抱えた状態で、顔を見合わせて。
「……本当に……明日。 柚希さんは、昼間のことを……」
「ゆずきちゃんのお母さんが言ってたんだもん、信じるの」
お母さんなんか、そのときの気分次第でいくらでも変なこと言うのに。
そう思いながら、2人が帰るまでの間、2人の間に挟まれてとりとめもない考えに浸っていた。
◆◆◆
ないないが1日延びましたが、今日から復帰です。
引き続き、柚希くん(の周りの)恋模様をお楽しみください。
「男の娘をもっと見たい」「女装が大好物」「みんなに姫扱いされる柚希くんを早く」「おもしろい」「続きが読みたい」「応援したい」と思ってくださった方は、ぜひ最下部↓の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】に&まだの方はブックマーク登録で最新話の通知をオンにしていただけますと励みになります。応援コメントやフォローも嬉しいです。




