308話 理央ちゃんとひなたちゃんとあやさんが変
ぼふんとゆでだこみたいになって、一瞬だけ目が合ったと思ったらぴゅーっと引っ込んじゃった理央ちゃん。
「……?」
「ゆずも、罪な男ねぇ……お父さんみたい」
「む、お母さん、僕はお父さんとは違うよ」
お母さんは、事あるごとに僕がお父さんみたいって言う。
そんなわけないじゃん。
少なくとも僕は、誰かを見捨てたり観なかったことにして逃げたりなんてしないもん。
「むすーっ」
「あらあら」
「ゆずきちゃん?」
「? ひなたちゃん?」
むかむかしてたけどもひなたちゃんに声をかけられて振り向いたころには忘れてて。
――そうしたら、なぜかちょっと怖い目つきをしたひなたちゃんとあやさんが、僕を見ていて。
「……な、何?」
「……今って、どっち?」
「え?」
「女の子でしょうか? それとも男の子でしょうか?」
「……男です」
「……ふぅん……そっかぁ」
「……そう、なんですね」
……そうだった。
このふたりに――僕が男だってこと、ちゃんと言わなきゃいけないんだった。
「今まで嘘ついててごめんなさい」って言わなきゃいけないんだった。
それだけが、ずっと負い目だったんだ。
「ごめんなさい、僕――」
「ううん、いいの」
「ええ、良いんです」
「へ?」
あれ?
なんか怒って……ない。
もしかして、もうお母さんが話したの?
「わたしたちは、どんなゆずきちゃんでも受け入れるし、それが好きだから」
「ええ。 変わりませんよ」
「……2人とも。 ありがとう、ございます」
よく分からないけども、どうやら2人とも僕が男ってことを隠してたの、怒ってないみたい。
良かったぁ……嫌われるかって思ってたから。
「――そうしたら、人工――なしに」
「自然――できますものね」
「あやちゃん、お父さんたちは説得できたの?」
「ええ。 実は配信をずっと追っていてくれたらしく、祝福を……」
僕は、気づかれないように大きく息を吐いて――
「……おまんじゅう、何やってるのさ」
「 」
「ぴっぴっ」
……なんだか最近、ひっくり返って脚をぴんと伸ばしてる姿しか見てない気がするおまんじゅう。
白くてもふもふの塊が――串刺し魔王さんを倒したときはかっこいい白馬になってたユニコーンが。
「チョコも、いじめちゃだめだよ」
「ぴっ」
……チョコに全身を包まれるようにして、ちょうどソファの下に引き込まれていくところだった。
……これが、下剋上……や、ちょっと違うかな。
◇
「ゆずきちゃん? おふろはいろ?」
「あ、うん。 お風呂、先良いよ?」
今日は理央ちゃん……は帰っちゃったけども、ひなたちゃんとあやさんが泊まるらしい。
そんな話を、さっき夕飯食べたときに言ってた。
「一緒に入りませんか?」
「だから先で……え?」
え?
「……あの、さっき言いましたよね? 僕、男だって」
「うん、聞いたよ」
「性別は可変なのですよね?」
「? はい……え?」
んん……?
目の前の2人は、不思議そうな顔をして僕を見ている。
……なんか、お互いにおんなじ話をしながら全然別の話をしてるような……?
「……いや?」
「あ、ううん。 僕は別に嫌じゃ」
「じゃあいいよね!」
「い、いや、僕、男だし」
「私たちは構いませんよ?」
「僕は構いますよ?」
……おかしい。
なんだか変な汗が出てくる。
僕の中の何かは、何かが間違ってるって断言している。
けどもそれが何かはさっぱり分からないんだ。
「……?」
「今日はいいとこ譲ったんだから、良いよね?」
「ええ」
何が良いんだろう?
「……恥ずかしく、ないんですか?」
「……恥ずかしいよ」
「なら」
「でも、一緒に入りたいんです。 ……どうしても柚希さんが嫌なのでしたら……」
しゅんとなっている、あやさんとひなたちゃん。
………………………………。
「……僕が男って分かってて、それでも良いんなら」
「っ、ほんと!?」
「さすがに体はバスタオルで」
「窮屈じゃありません?」
「裸見られるんですよ? 僕に」
「私は気にしませんし、むしろ嬉しいですよ?」
「ひなたも!」
なんで?
……あ、なるほど。
理央ちゃんとおんなじなんだ。
つまり、僕のことを「男」としては認識してなくって「男の子」――無害だし、裸見られてもなんとも感じないんだ。
なんだ、ならいいや。
「お母さーん」
「はーいー?」
「2人とお風呂、入って来るねー」
「はー……えぇええええええ!?」
ぱたぱたぱた。
大きいスリッパの音が響く。
けどすごいよね、家賃とかすごそうなフロアなもんだから、いくら飛び跳ねても下には響いてないんだって。
「ゆずぅぅぅ!? 理央ちゃんより先に2人とぉぉ!?」
「?」
「大丈夫だよ、ハジメテはりおちゃんに取っとくから」
「ええ、ただ普通に、健全に親睦を深めるだけです♪」
「……そう……なら、いいのかしらぁ……?」
「良いんじゃない? 理央ちゃんがお風呂は行ってくるみたいなものだもん」
そう言うと、きょとんとして――うなだれるお母さん。
最近のお母さんってば、ときどきよく分からない気分の上下あるよね。
「……という認識のようだけど……」
「私は構いません。 理央さんと……今日のあれを受ける前の理央さんに近い土俵に上がっているということですから」
「そうだね! りおちゃんに結構追いついたんだもん!」
「……?」
今日の?
今日の……一緒にみんなでお昼寝とかしてたっけ。
うーん、なんだかこう、思い出せそうでいて思い出せない夢見たいな感じ。
「じゃっ、気が変わらないうちに入ろ入ろ!」
「わわっ、待って!? 服とか取ってこないと……!」
「きゅいきゅい」
「ぴっぴっ」
「あら、2匹ともご一緒しますか?」
……けど、ちょっと悲しい。
僕はこんなにも強くなって男らしくなったのに、男って認識されてるのに男って認識されてなくって、安全な存在って、ひなたちゃんからはともかく大人のあやさんからは子供扱いされて。
しかも、これから成長できないだなんて。
「……理央ちゃんのばか」
とりあえず、今は居ない理央ちゃんに怒ってみた。
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