304話 まごってなんだろう
「それでは、不詳ユズ様の配下たるワタシが改めて確認致します」
「よろしくお願いします!」
「お、お願いします……」
なんでエリーさんはこんなに嬉しそうなんだろう。
「まず、この婚姻届はお三方合意の上で作成、お母様が保管されていたと」
「ええ、ユズの準備ができそうなときにって、常に持ち歩いているのよぉ」
なんでお母さんはこんなに嬉しそうなんだろう。
「つまり――理央様、あや様、ひなた様は。 ユズ様が『女性だろうと男性だろうと』結婚されたいと」
「そうです!!」
「は、恥ずかしいですけど……」
「? 好きなのに恥ずかしいの?」
なんで3人はこんなに嬉しそうなんだろう。
【朗報・全世界生中継で婚姻届について話す百合ハー(可変でハーレム)とかいう世にも珍しい配信中】
【しかも重婚法案通ってから多分初めての事案でお偉いさんたちも興味津々】
【草】
【なんで配信してるんだろうね……】
【ま、まあ、俺たちは嬉しいし……】
【まぁね……】
【これってエリーちゃんの仕業よね?】
【だろうなぁ】
「それを、ユズ様の保護者たるお母様は了承されていると」
「ええ! 息子が女の子にモテて嬉しくない母親は居ないわ!」
【えっ】
【息子!?】
【ショタ状態のことでは……?】
【あー】
【ユズねぇもわりと感覚でしゃべってるからなぁ……】
【そうだよな、ユズねぇだもんな……】
【ユズちゃんとは別方向だし相当マシだけど、やっぱちょうちょだもんな……】
【だってサキュバスだし……】
【えっち】
【ふぅ……】
【えぇ……】
ちょっと離れたところで――すごく嬉しそうな顔してる教官さんと、なんか微妙な顔してる優さんと目が合う。
「そして、この世界での婚姻可能年齢――は、ダンジョン関係者であるため、理央様とあや様はクリア」
「私は1人だけ年増なので、そもそも可能ではありましたけどね……」
「あやさんあやさん、19で年増とか言ったら嫉妬がやばいですよ?」
教官さんはなんだかわくわくしている。
優さんはなんだかもぞもぞしている。
「そしてひなた様は」
「飛び級試験、昨日結果が出たの。 本当はびっくりさせたかったんだけどね」
「……ということでこちらもクリア」
【ひぇっ】
【ひぇっ】
【ゆ、ユズちゃんが好き好きーってほほえましいね……】
【そうだね……】
【みんな、もっとあどけない笑顔を見てあげよう……】
【ひぇっ】
「ということで、『女性陣』からは法的、及び個人としての婚姻の意思が確認されており、ユズ様も、お母様というご家族が了承済み」
「孫はいつかしらぁ?」
まご?
まご……まごってなんだろう。
【理央様たちが……経産婦に……?】
【ふぅ……】
【それはそれで……】
【でも、あの、ひなたちゃんはさすがに】
【ま、まあ、肉体年齢が高校生くらいまでは待つ……よね……?】
【そ、それに、ユズちゃんが百合じゃなきゃやだって言ったら、女性同士での受精卵のアレが民間でも使えるようになるまでだから……】
【※日向家が全面バックアップです】
【※一応でもう臨床段階です】
【もうおしまいだ……】
【草】
【ところでさ】
【ああ……】
「……ユズ様?」
「?」
顔を上げると、エリーさんがじっと見てきている。
……他の3人も見てきてるけど、ちょっと怖いから見ない。
【草】
【ユズちゃん……お口は閉じようね……】
【ぽかんとしてるこの顔が好き】
【これっぽっちも理解できていないこの顔が好き】
【分かる】
「ここまで、ご理解は?」
「まごって何?」
「えっ」
【草】
【草】
【草】
【ユズちゃん……】
【もしかして:ユズちゃん婚姻届、ユズちゃんが成長するまでお預け】
【どうやらそのようだな……】
【未成年過ぎて結婚の意思がふわふわすぎる】
【ふわふわっていうか理解してない疑惑が】
【ユズちゃん……】
【えっと……ユズちゃん、高校生は盛りすぎだとしても、ひなたちゃんよりは年上だよね……?】
【そうだよな ずっと病気がちのシンママ(姉)(義理かどうかは不明)(たぶんJC~JK)(母親気取り)(サキュバスでえっち)(経産婦を名乗るロリ)をたったひとりで支えるためにバイトばっかりしてがりがりで、きっと栄養と睡眠が足りないからみんなよりちっちゃかったところにサキュバス化でうっかり成長できなくなったユズちゃんだもんな、そんな急には理解できないよな】
【草】
【もはや詠唱で草】
【ユズちゃんのお家、複雑だね……】
【え? 楽しいユズワールドの後ろに建ってるお家がなんだって?】
【え? お庭のお野菜が2階を超えてえらいことになってるお家がなんだって?】
【あのお野菜、早くオークション出してくれないかなぁ……】
【あ、親衛隊たちの配信で、明日にでも取りかかるそうだ】
【ユズちゃんが丁寧にふきふきしてくれる?】
【それは分からん】
【かなしい】
【草】
【草】
【草】
【話が進まねぇ!!!】
【だって、肝心のユズちゃんが……】
【ま、まあ、たぶん理央様からの告白ってだけで思考能力をオーバしてるんだ……よね? そうだよねユズちゃん……?】
みんながお口をあんぐりと開けている。
……そんなにびっくりすること言ったっけ?
「え、だってさっきお母さんが『まご』って」
「それはねゆず! ゆずがみんなとえっ――――――」
「言わせませんよお母様!?」
「?」
お母さんが嬉しそうに言いかけた何かを必死で止めているらしいエリーさん。
「エリーさん?」
「ユズ様には……まだまだ早すぎます!!」
「……?」
何が早すぎるんだろう。
【エリーさんナイスインターセプト】
【ユズちゃんは純粋で居なきゃダメなんだ……】
【そうだ……あと数年はえっちの概念すら知っちゃダメなんだ……】
【てことは理央様たち、おあずけ?】
【草】
「……柚希先輩。 私たちとの結婚は、いや、ですか……?」
お母さんたちから視線を移すと――不安そうな顔をしている理央ちゃんが居る。
「え?」
「私は待ちますよ? 柚希さんが、好きという概念をちゃんと知ってからの方が、嬉しいですから。 ……それで断られてしまったとしても」
「んー、ひなたはなんにも分からない状態でも良いんだけどなー」
【ひぇっ】
【ひぇっ】
【ひなたちゃんはもっとあやちゃんの純情さ見習って……】
【こわいよー】
【下手なこと言うなよ? 日向家にないないされるぞ……?】
【草】
【ないないで草】
「……?」
みんなを見回すけども――そういえばなんで配信カメラさんが浮いてるんだろ、配信なんかしてないのに――みんな、それぞれに不思議な反応してばかり。
それに、理央ちゃんも変な顔してるけどさ。
「僕、理央ちゃんと結婚するって、ちっちゃいころ言わなかった?」
「え゛っ」
「? 言ってたよ?」
「……理央さん……?」
「りおちゃん、いますぐにせつめいして」
【!?】
【!!??】
【ユズちゃんのちょうちょから放たれる特大の爆弾!】
【理央様……】
【もしかして:園児並みの認識ではあるけど、理央様と結婚することはユズちゃんの中では確定済みだから好き好き攻撃も気にしてなかった】
【あー】
【草】
【かわいいね】
【かわいいね】
【なにこのかわいいいきもの】
【ユズちゃんっていうの ヘタすると10歳未満の精神年齢のサキュバスでインキュバスにもなれる勇者でちょうちょなテイマーさんだよ】
【草】
【あの、話】
【ユズちゃんの認識が進まないんだぞ】
【ごめん、無理な要求だったわ……】
【ユズちゃんはね、優しく優しく育てないとね……】
【ま、まあ、とりあえずとしてユズちゃんは理央様のこと、子供の感覚としてだったとしても好きらしいことは分かったから……】
【……うん! ついさっきまでみたいに十数年かけて口説いても好意が丸っきり伝わらなくってことごとくに空回りして、初心者のころに全世界生中継での告白しても完全に理解されてなかったのに比べたらすっごい大進歩だよ理央様!】
【かわいそう】
【でもちょっと報われたから……】
【と、とりあえず前向きってことで……】
【あと、ユズねぇと日向家がおせおせってのも分かったし……】
【あのさ これ、ユズちゃんがなんにも分からないうちに3人に襲われて……とか無いよね? そうだよね?】
【※ショタに可変です】
【※ひなたちゃんの様子がおかしいです】
【※たぶん理央様もそのうち我慢できなくなります】
【もうだめだ……】
【生えてる状態だったとしても、ユニコーンが爆散するならそれはそれで……】
【せめて最初は誰となのか&ロリ状態なのかショタ状態なのかくらいは教えて欲しいな】
【えぇ……】
◆◆◆
ユズちゃんの年内投稿も今回でおしまいです。
次回は1/6月曜日より、また基本平日毎日投稿となります。
いつまでもちょうちょで理解していないユズちゃんとヒロインたちの関係が進むのか――ぜひ、年明けをお待ちください。
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