301話 【速報・ユズちゃん、可変】
「……ゆず。 人は、ね?」
お母さんが、小さかったときみたいに、頭を撫でてくる。
「あんまりにも嬉しいとき。 まるで悲しいときみたいに――泣いちゃうのよ」
「お母、さん……」
――僕の涙が、お母さんの服を染めていく。
【抱き合う2人……】
【てぇてぇ……】
「ゆず? ひとつだけ、思いだしてほしいの」
お母さんが、僕に、語りかけてくる。
「……私はね。 お母さん――母親はいうものはね」
ぎゅっ。
痛いくらいに――抱きしめて、くれる。
「――子供の幸せより、大切なものはないの」
「……うん」
【ユズねぇ……】
【ままぁ……】
【あのさ この母性……本当にユズちゃんのお母さんなんじゃ】
【いやいや……って言いたいけど】
【ユズちゃんをお母さんとして10年以上育ててきたんだ 小学生だって中学生だって、きっと母性獲得するんだよ……】
【ロリママにバブみを感じる……】
【ままぁ……】
【だよな やっぱ俺はユズねぇ狙うわ……】
【未経産婦で甘やかしてくれるロリとか贅沢すぎるぞ】
【草】
【お前!!! お前……!!!!】
【あーあ】
【せっかく泣いてたのに台無しなんだけど!!!!】
【いいか? 浸りたいときはだな、そっとコメントをオフにするんだぞ】
【でもそれだとつまんないし……】
【草】
【すっかり毒されてて草】
「……ユズ様」
「……?」
僕が、わけの分からない感情で困っていた、そのとき。
「ひとつだけ。 ひとつだけ――皆様に、真実をお伝えしても、よろしいでしょうか」
お母さんの胸元から、僕の涙であったかくなったお母さんの薄い胸元から顔を上げると――なぜか痴女衣装になっているエリーさんが居た。
【!?】
【えっち】
【エリーちゃんが急にエロ存在に!?】
【さっきまでの清楚衣装はどこに……】
【草】
【エリーちゃん! 今泣いてたの!!】
【ユズちゃんのピュアさに感動してたのに!】
【どうしてくれるこの感情!!】
【泣きたいのに興奮して来ちゃったよエリーちゃん!】
【草】
【最低で草】
「ワタシは、ユズ様のためだけに行動します」
彼女は――その、田中君のえっちな本に出てきたサキュバスさんみたいな格好で――けども真剣な顔で、言う。
「ワタシは――究極的には、この世界とユズ様を天秤にかけることもなく、ユズ様を採ります」
かつっ。
彼女は、田中君のえっちな本にあった通りのハイヒールで歩く。
「内緒で進めていましたが――事、ここに置いては。 ――もしユズ様並びにユズ様の愛する方々が避けようのない災厄に見舞われそうになったときには」
かつ。
そういえばエリーさん、田中君の好みな見た目な気がする。
「――ユズ様方ごと、異界にいざなうと決めています。 何があろうと――ワタシたちがどうなろうと」
【えっ】
【草】
【エリーちゃん!! それはマズいよエリーちゃん!!!】
【ま、まあ、テイマーとモンスターだから……】
【そ、そうだよ、そういう関係での話だから……】
【あ、最寄りの軍基地&合衆国軍基地から爆撃機が】
【あ、もはや常駐してる安保理のみなさんが会議に】
【草】
【ふぁっ!?】
【やめてぇ!?】
【大事で草も生えない】
【あの、今、理央様が一世一代の大告白中で……】
【やめて……せっかく落ち着いたばっかなの……】
【そうですの 尊い百合に、殿方が混ざろうと そういうことですの】
【許せませんわね】
【許せませんわ】
【もしもし? 今からそちらに向かいますわ】
【ヒェッ】
【ひぇっ】
【じょばばばば】
【大臣さん! 大臣さん!!】
【国防長官! ダンジョン協会! とにかく偉い人、抑えてー!?】
「……御免なさい、お姉――母様、皆様。 せっかくの作戦を、台無しにしてしまいまして」
作戦。
そういえば、家に来ていたみんなは、しょっちゅう僕をのけものにして話し込んでいたような。
……僕が男だから……じゃないよね、それだとひなたちゃんとあやさん、優さんに教官さんは知らないはずだもん。
「良いのよ、エリーちゃん」
「お母様……」
【お母様!?】
【ユズねぇはユズねぇじゃないのか……?】
【お前ら、そんなこと言ってる場合じゃ】
「――――分かり、ました」
彼女は――ぎゅっと、紐でできた水着みたいなのしかない胸元に、両手を握りしめ。
「――皆様。 ユズ様は、ワタシたちの種族を束ねる存在となっております」
彼女は、配信カメラ――あれ、なんでここにあるんだろ。
それに向かって、話しかける。
「故に」
それを掴み。
「――性別は、任意の――可変、で、ございます」
【?】
【……?】
【……ふぁっ!?】
【!?!?】
【え え?】
【どゆこと!?】
【あの、それって】
【ユズちゃんが、って話のとき、一瞬だけ話題に上ったけど】
【ユズちゃんだからそんなまさか、ありえないよねって】
【ユズちゃんだから絶対に可能性はゼロだって】
【それどころかマイナスだって結論になった、あの……!?】
【草】
【やっぱひでぇ】
【いやだって、ユズちゃんだし……】
【けど……】
「――詰まるところ、でございます」
すっ。
彼女は――ちょうど、理央ちゃんと僕に、カメラを向ける。
「――お二方が希望すれば……ユズ様は、希望した時間だけ男子になることが可能でございます」
「えっ」
男子になる?
って、あの……僕、男なんだけど?
エリーさん、それ知ってるでしょ?
【!?!?】
【百合が……百合でなくなる……?】
【それは戒律違反なのでは】
【エリーちゃんが……まさか、処分対象……?】
【会議! 緊急会議ですわ皆様!!】
【草】
◆◆◆
いつの間にかに300話になっていました。
今しばらくのあいだ、ユズちゃんを愛でてあげてください。
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