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29話 休み時間のうわさ話1

「え? 星野? ……あー、スラックスの制服着てる女子?」

「ときどきスカートになってるよな」

「スカートとブレザーになってる日は学校がざわついてるよな」

「気が付いたらかわいくなってた系女子か」


「あの子、ガード緩いからときどき見えるんだ……」

「いや、男だってば。 体育とかでも普通に女子とやってるけど……」

「嘘だろ!?」


「星野が貧乳だからってひどいこと言うなよ」

「そうだぞ、こんなの女子に聞かれたら!」

「お前……出席簿見せてもらえ。 書いてあるから」

「というか、いい加減同級生の性別くらい知っといてやれよ……」


「別に本人も否定しないしな。 まぁ最近来てないけど」

「で、その星野がどうかしたの? アイツ、休学中だろ?」


ある日の高校――星野柚希に光宮理央、あと田中と呼ばれた彼が所属している校舎。


そこでは少しずつ――「ユズちゃん」が知られ始めていた。


「……え? マジ? この幼女ユズちゃんが星野だって!?」

「はぁっ!? ウッソだろ、俺、新しい推しで応援し始めたばっかなのに!」


それはぽつぽつと、彼の居たクラスから、彼の友達の居るクラスへと。


「あー、でも確かに言われてみりゃ星野だわ」

「このおどおどっぷりとほんわかっぷりは星野だよな」

「髪の毛めっちゃ伸びてるから分かんなかった」


「と言うかそもそも、あんま話したことないし」

「そりゃあ、普段は女子に囲まれてるか読書してるからな」

「なんか話しかけづらいんだよな……男子と女子の目が刺さるって意味で」


星野柚希。

高校2年。


ひと言で表せば「いつも席で本を読んでいるか、仲の良い女子と話してる文学少女」。


一応は「文学青年」になるのだが、それでも文学少年の方がふさわしい容姿の「少年」。


「幼稚園から小中高の入学のたび、クラス替えのたびに自己紹介で男だって聞いても素で忘れる奴が多発する星野だもんなぁ」


「無理もない……会話の内容が読んだ本とバイトのことと、あと家庭菜園とか地域猫とか、どう聞いても文学少女のそれだし」

「本人は苦手そうだけど、人の前に出て配信者とかやれば間違いなく人気は出ると思ってたが……まさかなぁ」

「あー、この話題のチョイスっぷり、ユズちゃんの初配信そのまんまだったわ……どおりで聞き覚えがあったわけだ……」


「あの、俺さ。 星野って、普段からほとんど女子に囲まれてるからあんま話したことないんだけど……どんなやつ?」

「あー……ひと言で言えば、やばい」

「やばい?」


「ユズちゃん」の配信の切り抜きやアーカイブを観ながら、休憩時間に話し込む男子たち。


もはや「ユズちゃん」を見ながら感想を言い合うのが、この高校でのブームとなりつつある今日このごろ。


「アイツな? 気の弱い文学部って感じの顔と髪型だし、話し方もそうなんだけどな?」

「え、でもこの画面じゃ」


そこに映っているのは、スカート姿だったり短パン姿の――どう見ても「幼女」。


もちろんネットスラング的な意味合いも含まれてはいるものの、幼女――高く見積もっても中学生「女子」にしか見えない姿。


「休学前でも校則ぎりぎりまで伸ばしてることあったからなぁ……しかもまた良い匂いするんだ、シャンプーの」


「……男なんだよな?」

「男子だぞ」

「ああ、男だ。 間違いない」

「この身長だぞ?」

「お前、全校集会のときの星野知ってるだろ。 ダントツで小さいぞ。 もちろん今年の1年入れても1番だぞ」


「……それって、さ。 保健の授業とかでやったなんちゃらってやつとかじゃなくて、マジで男? 心も?」


「本当にフツーに男だぞ? マンガも俺たちと同じ感想だったし、女子とはやっぱ違うんだよ。 性格も……体も。 だって俺、小学中学一緒だったからさ……ほら、プールとかで見たから知ってる」

「あー」


「フツーに好きな相手は女子だしな。 まぁアイツからそんな話しないし、なにより周りの女子がいると話せないけどな」


「まぁ好きになるも何も、星野が好きになるとしたらほぼ家族同然の光宮――1年の、休み時間ほとんどいつも来てたアイツだよ――だろうし?」


「だな。 中学に入って1回離れた途端に押しかけ女房になってるもんな、光宮」


「……星野……あの星野の、水着……」

「男の娘の……水着……」


彼のことを知る生徒たちは、昔話と「彼とセットの彼女」に興じるも……彼のことをあまり知らない男子生徒は、個人情報保護のための加工済みとは言え。


配信画面で「実に可愛らしく可憐な姿で」動いて話している「ユズちゃん」を思い浮かべながら、それが海パンだけになっているのを――。


「やめとけ、お前も堕ちるぞ」

「……なぁ。 星野が男子の水着とか……やばくね?」


「続けんのかよ、その話……大丈夫大丈夫。 俺たちの学区じゃ、男も肩から着るやつだったから」

「そうじゃなかったらやばかったもんな」


「田舎なのに無駄に先進的だったんだな……」

「田舎だから市長が無駄に無意味に熱心だったんだよ。 まぁ統合しちゃったけどな」


それでも。


それでも「ユズちゃん」が学校指定の水着を着ている姿を想像した彼は――。


「………………………………」


「そういうことでな、着替えたりするのが嫌でも目に入るから分かるんだよ。 一応は生えてるし、体つきは男だってな。 アイツも別に隠しはしなかったし」


「まぁ水着自体は途中から女子のになってたけどな。 最初は男子の……肩からのやつな? 見えねぇぞ? ……だったけど、女子一同からの大反対と、なによりその女子たち共同でプレゼントされたから」


「……ユズちゃんに、生えてる……女の水着……」


「おいばか気を確かにしろ、同級生男子の3割はアイツのせいで見事、男にも目覚めたんだぞ。 しかもクラス替えのたびに追加で……」


「星野って、罪深すぎない?」

「そういうのもあって、アイツ知ってる奴らで周り固めてたんだよ……星野自身も静かなのが好きだったし」

「被害者の会、または親衛隊だな」


なお。


水着事件の真相は「僕は男ですから」と、頑として譲らなかった柚希が原因。


それに対して「性的マイノリティーへの配慮を……」という教師たちの熱弁にも屈しない無駄な漢らしさを備えた柚希が言い張り、中1までは堂々と、男子として。


更衣室では裸になって着替えをして、プールサイドでは「胸が隠れているとは言え、男子の水着を着た女子にしか見えない存在」だったためだったりする。


生活のことといい、こういうところでだけ無駄に強気になるのが柚希だった。


……もっとも中学2年になり、1年で入って来たとある女子生徒が「柚希先輩のせいで性癖歪む男子続出なのと、それを観察してやっぱ歪んだ女子ばっかなのでどうにかしてください。 このままだと別の理由でも人口減少が加速しますよ?」と、既に手遅れになった実情を報告したのと。


なにより自分たちの「良いな」と思っていた男子たちが……自分たち女子相手でなく、男子にやばい目つきをしたりするようになっていためもあり、危機感がMAXになり。


尋常ではないピンチに2年の女子たちも動かされ、女子用水着もプレゼントされ……そこからは個室で着替えるようになったのだった。

「男の娘をもっと見たい」「女装が大好物」「みんなに姫扱いされる柚希くんを早く」「おもしろい」「続きが読みたい」「応援したい」と思ってくださった方は、ぜひ最下部↓の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】に&まだの方はブックマーク登録で最新話の通知をオンにしていただけますと励みになります。応援コメントやフォローも嬉しいです。

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