24話 3姉妹パーティーの結成
「ねえねえゆずきちゃんゆずきちゃん! パーティー組も! あやちゃんも!」
あれからいろんなことを教えてもらった僕たちは、無事初回の講習を終えて戻って来た……と思ったら、元気なツインテールがぴょこん。
「え、えっとぉ……パーティー……?」
「あやちゃん……私のことでしょうか……」
「うん!」
あのあともダンジョンから戻って来て「武器はゲート前のロッカーで保管・別のダンジョンに行く際には転送されますよ」とかから始まって。
「換金はここでしてくださいね」とか「今日のお金も、ちゃんと3人で分けてくださいね」とかの説明のあとで解放された僕たち。
ここからは僕たちの自主性に任せるんだって。
「ぱ、パーティーかぁ……考えてなかったなぁ……」
「え、ええと……星野、さん……?」
「あ、僕、年下ですし、柚希で良いですよ? あやお姉ちゃん」
「お、お姉……!?」
「あっ」
「きゅいっ」
戦いが終わって気が抜けてたのか、つい初対面の夢月さんのこと、お姉ちゃんとか呼んじゃった……。
だって、なんかおっとりしたお姉さんみたいな感じだって思ってたから……。
「良いじゃない! 3姉妹ってことで!」
「え、ええっと……」
……どうしよ。
これ……いつも通りに初対面のこの子にも、女の子って思われてるよね、僕……男なのに。
そういえば「ゆずきちゃん」とか呼ばれてて普通に反応しちゃってた……いつも女子にそう呼ばれちゃうから、今まで普通に忘れちゃってたけどさぁ……。
「私は妹! で、前衛! ゆずきちゃんはお姉ちゃんで妹で……多分後衛?」
「きゅい」
「で、あやちゃんはあやお姉ちゃんってことでいちばんのお姉ちゃんで後衛! バランス良いよ!」
「い、いや、それじゃ前衛が足りない気が……それに、僕は……」
ロッカーにぱたんって支給品の装備をしまった彼女が、もう決定事項みたいに告げてくる。
「……だめ? ゆずきちゃん……」
うぅ……ちっちゃい子のこういう顔には弱いんだよなぁ……。
「……私は構いませんよ。 ただ、あまり頻繁には潜らない予定ですが……」
「えー、そんなー……あ、でもパーティー良いんだね! ゆずきちゃんは!?」
「え、えっとぉ……」
……そうだよね、パーティー組まないと潜れないよね……。
一応ソロって選択肢もあるけども……あれはちょっとおかしい人とかがやるものみたいだし、何より僕みたいに怖がりで、いざモンスターに囲まれたら足がすくんじゃうのじゃ1ヶ月も持たない。
うん……その自信があるもん。
けど。
「……ほ、ほんとに良いの……?」
「うん! やった、美人3姉妹のパーティー結成だー!」
「くすっ、美人って……でも、悪くはありませんね」
「う、うん……でも、僕、ほんとはね……」
「言ってなかったけど、僕、男なんだ」。
今さら言うかどうか……いや、言わなきゃ行けないよね……。
「私、お母さんから『女の子だけのパーティーなら許可します』って言われてるの! でもこんな田舎じゃ同世代の子でダンジョン潜りたい子って、そんなに居なかったから心配で!」
「うぅっ」
「……そうですね……私も、大学に入った途端に怖い思いをしかけましたので、男性は少々……」
「うぅ……」
……言えない。
こんな雰囲気の中、「実は僕、男なんです」だなんて、弱虫の僕には言えない……!
「それにっ!」
「きゅいっ!」
うじうじしてた僕の目の前に来てたらしい、ものすごく嬉しそうなひなたさん。
「この子が居れば、こわーい男の人も追い払ってくれそうだもん!」
「きゅい!」
「……確かにそうですね。 ユニコーンと言えば純潔……乙女の象徴。 星野……柚希さんが居る限り、『このユニコーンさんが怒ってしまうのでご遠慮しますね』ともっともらしい言い訳が……」
「それ! すごく良い! すごいすごい、あやお姉ちゃん!」
「うぅ……」
「きゅい」
なんだかおまんじゅうと僕が居ることで良いことずくめって雰囲気になってる……早く言えば良かったぁ……。
「……………………………………」
「きゅい?」
……いや、ダメだ。
男だもん、嘘はいけないよね。
「僕、実は……」
「良いの! 知ってる!」
「え?」
さっき初めてモンスターと退治したのより、ずっと勇気を使って言おうとしたけども……目の前に突き出されたひなたさんの手で止められる僕。
あ、もしかして分かっててくれた?
僕の男らしさ、スカート穿いてても分かった?
「何か言えないことあるんでしょ? 良いの、私にもあるもん」
「いえ、そうじゃなくて」
違った。
僕の男らしさなんて伝わってなかった。
「……私にも……言おうかどうか、ものすごく悩んでいることが……」
「お友達だって、言えないこともあるんだってお父様が言ってたもん! だから良いの!」
あれ?
なんでこんな流れになってるの……?
「でも、今日っていう日の初心者講習に3人だけが揃って! しかもみんな別のパーティーの先約もないし、戦い方の被りとかもない! しかも電車で……近い! こんな奇跡、早々ないもん!」
「……そうですね。 ええ、勇気が出たらいずれ告げるかもしれませんが、それまでは……頼りないですが、お姉さんとして、よろしくお願いしますね?」
「うん! あやお姉ちゃんとゆずきお姉ちゃん!」
え、あの。
「きゅい!」
「あははっ、かーわいー! おまんじゅうちゃんだっけ!」
「先ほどの方がおっしゃるには『ユニコーンはSランクモンスターだろう』とのことですし……きっと最初から知能が高いのでしょうね」
頭……良いのかなぁ。
なんかみんなの声に合わせて反応してるだけに感じるけど。
「教官さんも、先ほど星野さんに『後日、そちらのユニコーンについてお話を……』とおっしゃっていましたし。 テイムもされていますし、きっと私たちの会話もある程度分かっていて、応援してくれているんです、きっと」
え?
そうなの?
「きゅい」
あ、そうなんだ。
「……………………………………」
……今、考えたことが分かったような返事の仕方を……ううん、さすがに気のせいだよね……?
「じゃあっ! 連絡先! 連絡先交換して、この後の換金して! 初めて稼いだお小遣いでお茶でもして帰りましょ!」
「ええ、それではお言葉に甘えて」
「きゅい!」
「う、うん……」
……なんか、和気あいあいとした雰囲気。
ものすごく盛り上がってる。
元気な女の子特有の楽しさと、おとなしい女の子で女の人特有の落ち着きと……そのあいだで、僕の代わりに相づち打ってるおまんじゅうと……。
「……………………………………」
……言えない。
こんなの、とても言えないよぉ……!
完全にタイミング逃しちゃったぁ……!
「きゅい」
ああもう。
君がヘンな風に返事しちゃうから、まるで僕が言ったみたいに思われちゃったじゃん……。
「きゅっ」
それもこれも、家の中から僕のズボンが消えちゃったせい。
帰ったら探さないとなぁ……。
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