233話 【朗報・ユズワールド展開】
「………………………………」
……良く分かんないけど――とりあえず。
この状況は――良くない。
嬉しくない。
僕は、くすぐったいところを触ってきてからなんか言い訳してる教官さんを置いて、引きずられた道を引き返す。
「ねぇ、元お兄さん」
「……エリーと申します」
「なら、エリーさん」
けども、前にはみんなが立ち塞がってる。
なら――どうする?
『羽』
あ、そっか。
「こうやって生やせば良い」んだね、ありがと。
「!? 柚希さん!」
「柚希先輩、ダメ……って、羽が!?」
「? ……あ、ほんとだ」
元お兄さん……お姉さん、悪い人じゃないのにって思ってたら、なぜか僕はお姉さんの真横に来てて、なんかふわふわ浮かんでて。
【!?】
【ユズちゃんが】
【瞬間移動!?】
【教官さんの腕から】
【教官さんがぽかんとしてる】
【えぇ……】
【朗報・ユズちゃん、生えた】
【おっぱいは!?】
【ダメだ、ない……あれ、なんかインターホンが】
【捕獲】
【ケー】
【連行しろ】
【次は誰だ?】
【こええよ!?】
【怖すぎて草】
「……ゆず?」
「お母さん」
理央ちゃんたちの後ろで、いつの間にかにチョコとおまんじゅうを抱っこしてるお母さんが、話しかけてくる。
「その人は……大丈夫、なのね?」
「うん、だって悪い人じゃないもん」
「魔族です! しかも柚希先輩を誘拐しようとして! 2度も!!」
「大丈夫だよ、理央ちゃん」
理央ちゃんは、いつも以上にきゃんきゃんしてて。
「恐らくは認識阻害……あるいは魅惑魔法などを……!」
「なんと卑劣な……!」
教官さんと優さんが、こっちをにらんでて。
――うん、そうだ。
いつもの顔だ。
いつもの――僕よりも落ち着いてる人たちが、僕よりも強い人たちが――僕より優しい人たちが、僕を守ろうとしてるときにする、顔だ。
怖いけど――優しい顔。
……でも、今は必要無いんだよ。
「………………………………」
「?」
そう思ってたら――ぱちり。
ひなたちゃんと、目が合う。
――彼女だけは、みんなとは違う目をしていて。
「……うんっ。 ゆずきちゃんが大丈夫って言ってるもんね」
「ひなたさん!? ……ああもうっ、待ってください!」
とててて、ってひなたちゃんが大剣を地面に刺してから歩いてきて、それをあやさんが追ってきて。
「ひなたちゃんまで!?」
「大丈夫だよ、りおちゃん。 ゆずきちゃん、おっちょこちょいだしぼーっとしてるしすぐふらふらしちゃうからひなたも心配だけど、悪い人が分からない子じゃないよ」
【草】
【かわいいけど草】
【小学生ロリからこの評価なユズちゃん……】
【ま、まあ、普段が普段だし……】
【そ、そうそう、それに感覚派ってことは、ひなたちゃんが言ったみたいに善悪にも無意識で反応できるだろうし……】
ひなたちゃん、続いてあやさんが僕たちのところへ来る。
みんなに怖い顔されてる、元お兄さんの前に。
「もう、大丈夫だからね」
「……ええ、私も、お守りします」
「うん、2人とも……ありがと」
「……ユズ様……あや様、ひなた様……」
元――いや、お姉さんは、びっくりした顔で。
「きゅ」
「ぴ」
そんな僕たちの元へ、ぴょんぴょんと2匹が駆け寄ってくる。
「ありがと、2人とも」
ぴょんと僕の腕に乗っかってくる2匹。
……だけど。
「おまんじゅう、チョコ……」
2匹とも、あったかい気持ちを送ってくれる。
「あ。 おまんじゅう、何食べてるの! ぺっしなさい!」
おまんじゅうがなんだか拾い食いしてるみたいだから、口を開けさせてからぺちっとはたかないと、悪いもの食べておかしくなっちゃうから――――――
「あ、ちょっと待ってくださいませユズ様ぁ!?」
【草】
【草】
【えぇ……】
【ユズちゃん!?】
【何やってるのこの子……】
【ユズちゃんだからね……】
「ぎゅ」
「え?」
――はたいても離してくれなかったけども――代わりにずざざざっとスライディングして、僕たちの真下に来たお姉さん。
「?」
「はぁ……はぁ……、そ、それは、ワタシのコアで……地面に落ちる衝撃だけでも……」
「コア? ……あ、なるほど」
コア。
なんか大切なものらしい。
「柚希先あああああああああああああああ!!!」
「りおちゃんうるさい」
「うるさいです理央さん」
「少し黙ってくれるかな、理央さん」
「理央さん、TPOをわきまえましょう」
「そうだよ、いつも思ってたけどうるさいよ理央ちゃん。 特に朝とか耳が痛くなるんだから」
「全員!? 柚希先輩まで!?」
【草】
【草】
【総スカンの理央様で草】
【なぁにこれぇ……】
【ユズちゃんが居るんだぞ こうなるに決まってるだろ】
【ああ……】
【あの、周りはちょっと押され気味で】
【こっちも今熾烈な争いだからがんばって】
【草】
【熾烈(ユズワールド】
【認識を歪めてくるからな……】
「……そんな大切なもの、人にあげちゃダメですよエリーさん。 ほら、おまんじゅう」
「ぎゅ」
「おまんじゅう?」
「ぎゅ……」
「だめ。 離して」
「……きゅ」
ぽろん。
おまんじゅうの口から綺麗な赤い宝石が離れ、僕の手のひらに落ちてくる。
「そう。 人の、大切なものだからね」
「きゅ……」
【ユズちゃんが】
【ユズちゃん、真剣になると声、低くなるよね】
【なんかショタっぽくなるよな】
【見た目は女の子らしいのに言動は男の子にも見えるときがあるからね】
【同級生と思しきコメントでも、ユズちゃんのこと男って思って性癖歪まされたとかあったし】
【かわいそう】
【小学校高学年になるまで、どっちか分かんない子って居るからね……】
【ユズちゃんももし……ズボン穿いて髪の毛短かったら……】
【<URL>】
【しっしっ】
【こういう場面の切り抜きで正気を保ってるショタコンどもだ……哀れんでやれ……】
【必死にユズちゃんショタ説を唱えてる、ごく少数から増えない可哀想なグループの奴らだもんな……】
【誰にも見向きもされず、何言ってもネタ扱いされてな……】
【大丈夫、こいつらかの女神に対してすら不敬してるやつらだから】
【そのうち捕まりそう……】
【草】
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