232話 【悲報・ユズちゃん】
ずりずりずりずり。
僕は引きずられている。
「?」
【かわいい】
【かわいい】
【信じられるか? 必死な顔したお姉さんに抱きかかえられてるのに手足だらーんとしてぽかーんとした顔してるのが、自称JKなんだぜ?】
【まるで子供だね】
【子供でしょ、どう見ても】
【そうだった】
【なんにも分かってない子供とか犬猫みたいな顔してる】
【してる】
【まるで警戒心皆無のペットだね】
【野生を失った猫かな?】
【草】
【これで自称高校生はムリでしょ……】
【全国の高校生に謝って?】
【草】
【と、飛び級だから……】
【飛び級制度はなぁ……問題も多いからなぁ……主に情緒面で……】
【頭は良くても子供なんだねぇ……】
「……?」
引きずられて行く僕の前に、優さんが立ち塞がる。
「貴様……今度は柚希さんが警戒しなさそうな見た目で!」
「い、いえ、それは……違わないのですが……」
そこへ飛び出して行くのは理央ちゃん。
「この泥棒猫……まさか柚希先輩を攫ったあと生やしてやああああああ!!!!」
叫びながら拳を振り上げてる理央ちゃん。
うん、変なテンションのときの理央ちゃんだ。
「よく分かりませんが落ち着いてくださいませ理央様」
そんな理央ちゃんへ……すごい、全然怖がらずに語りかけてるお姉さん。
お姉さんが避ける気配もなかったからか、理央ちゃんが彼女の顔の前で寸止め。
「……なんでよけないの!! この泥棒猫のくせにぃぃぃ」
良かった、会っていきなり人を殴るような子じゃなくって。
「りおちゃん、さっきからうるさいよ。 何回も言ってるよ」
「恐れながら……いくら想い人のことだからと、毎回マイクを壊すほどのそれは少しやりすぎかと……」
「そうだよりおちゃん、その人の言う通りだよ」
「ああ、理央さん……敵対する魔族からも同じ認識を……」
「理央さん……君という人は……」
【草】
【ひなたちゃんが辛辣】
【もしかして:理央様より痴女の方が話が通じる】
【どうやらそのようだな……】
【もしかして:やっぱり理央様、魔族】
【どうやらそのようだな……】
【ユズちゃんだけしか見てない系魔族だったか……】
【百合魔族だね!】
【草】
【ねぇ、この戦いで疑いが晴れなかったら……理央様、やばくない?】
【あっ……】
【草】
【この映像の時点で、多分公安さんとか動いてるよな……?】
【ヘタすりゃ軍隊すら……】
【理央様……】
【もしかして:理央様、ダンジョンから出られない】
【草】
【じょ、助命嘆願書には参加したげるから……】
【まずは知ってること全部吐こうね?】
【草】
「柚希さん、大丈夫ですか!?」
「? 僕、何もされてないですけど……?」
ずいぶんずりずりされた僕は、すっくと立たせられて、教官のお姉さんに体じゅうをぺたぺたされて……その手が足のつけ根から、
「んっ……」
「あら、………………………………ひゃあっ!? ご、ごめんなさい!?」
……なんか理央ちゃんみたいなことされた……教官さんのこと、ちょっと心配になってきたかも。
【!?】
【なんだ今の】
【ユズちゃんの体触って……?】
【もしかして:ユズちゃん、下着つけてなくてお胸が】
【!?】
【ガタタッ】
【同性でもびっくりはするわなぁ】
【いや、でもこの反応……?】
【教官さんのかわいい声が】
【ユズちゃん……女の子ならつけないとダメだよ……】
【そうだよ、いくら絶壁でも……】
【次のターゲットはここか】
【引っ捕らえろ】
【怖いってば!?】
【あー、もうめちゃくちゃだよ】
「ゆ、柚希さん? 今のはその……手が触れてしまっただけで、故意にでは……」
教官さんが真っ赤な顔してるけども、寝起きですっきりしてきたから見回す。
空では昨日みたいにドラゴンさん?たちが……あれ、なんかたくさん人が群がってる?
「?」
で、お母さんの近くに昨日のでっかいモンスターたちが戻って来てる……あ、でも、数は少ない。
「?」
で、理央ちゃんもあやさんもひなたちゃんも優さんも教官さんも居るし、なんならクラスの人たちとかも居る。
「?」
で、みんなに武器向けられてる元お兄さん。
「……?」
……やっぱりよく分かんない。
【草】
【かわいい】
【かわいい(白目】
【このなんにも浮かんでない顔が良いんだ……】
【ユズちゃん……】
【もういっそのことずっと、そのままの君で居て……】
【あの、ユズちゃんがユズちゃんなせいで、緊迫した空気なのに】
【大丈夫、親衛隊たちとワイバーンたち、サキュバスたちががんばってるから】
【あのブーメランパンツのって生えてるからインキュバスだよね】
【ガタタッ】
【ユズちゃんの関係者だからね……】
【緊張感とは対義語の存在だからね……】
【草】
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