231話 【速報・えっちなお姉さん、尊死したはずの魔族だった】
「……はれ? ひなたちゃん……? あやさんに、優さん……」
なんだかすごく眠いから溶けそうだったけども、理央ちゃんはともかく、他の人の声が聞こえる?
なんで?
「ゆずきちゃん、魔力切れ?」
「んー、違うかなぁ……」
なぜか防具を身につけているひなたちゃんが、僕の目の前でしゃがんでる。
なんでだろ。
「眠いの?」
「眠いの」
「そっかぁ」
「そうなんだよ……」
「大変だねぇ」
「だから寝ていい?」
【各自ユズワールドに厳戒態勢!】
【ひなたちゃんとのロリロリもやばそうだな】
【この2人でしゃべっててもやっぱやばそうで草】
【草】
【真面目に脳が焼かれるからな……】
「それはダメー。 ねぼすけさんは怒られちゃうよ」
「そっかぁ」
「ほら、ゆずきちゃん」
頭を撫で撫でしてくるひなたちゃん。
「起きてー、起きてー」
「んー……」
「起きるよーゆずきちゃーん」
「んぅー……」
【かわいい】
【かわいい】
【ロリの楽園か……】
【ロリがロリを撫でている……!】
【ユズちゃんが甘えてる】
【何この天国】
「……あれ?」
二度寝を諦めると、頭がすっきりするよね。
「……ここ、ダンジョンだっけ」
「そうだよ?」
「……なにっ!?」
「柚希さんが……こんなに早く……ひなたさんの撫で撫でで……!?」
【草】
【草】
【あやちゃんと月岡が驚愕している】
【そらそうよ……】
ごしごし目をこすると、だんだんと思い出してくる寝る前のこと。
「……なんでみんなが?」
「来たんだよー?」
「来てくれたんだぁ」
「そうだよー」
僕の頭を撫でながら笑顔のひなたさん。
そっか、来てくれたんだ。
……ん?
「……優さん、私たち……」
「うん……この前の俺たちの努力は、なんだったんだろうね……はぁ……」
顔を上げると、なんだかため息ついてるあやさんに優さん。
……なんで?
【おお、もう……】
【かわいそう】
【かわいそう】
【朗報・月岡の配信どころか掲示板からすらアンチ消滅】
【みんなでかわいそう連呼してて草】
【草】
【そらそうよ……】
【ユズワールドに振り回されててなぁ……】
【あ、月岡のメンバー、ごっそり増えてる】
【草】
【アンチが応援したくなるほどか……】
「……柚希先ぱーい!!」
「あ、理央ちゃん」
横から気配があったから、さっと体をずらした――ところに、ずざざっと理央ちゃんがスライディング。
「……何で避けるんですか!? 私、嫌われてるんですか!?」
「理央ちゃん、防具つけてるじゃん……痛いじゃん……」
この子、制服でも突撃してくるけど、たまに鞄ごと突撃して来ておなかにぐぇってなるからなぁ……。
理央ちゃんの周りで砂ぼこりがもくもくしてる。
……あー、うん、目が覚めてきた。
僕たち、確かすっごい数のモンスターたちに囲まれてたんだった。
【理央様……】
【いくら何でも向こう見ずすぎますわ……】
【ていうか今、ユズちゃんが避けなかったら……】
【ま、まあ、ユズちゃん、レベル高いらしいし……】
【ダンジョンの中だし何とかなるでしょ……きっと……】
【※この中でユズちゃんとユズねぇだけ武装してません】
【あっ】
【草】
【ユズねぇはそもそも民間人、ユズちゃんもテイマーだからって防具、後回しにしてたもんねぇ……】
【そもそも今着てるの、普段着だしねぇ……】
「……なんでみんなが?」
「ユズ様」
ふわり。
なんだかいい香りがするから振り向いた先には、片方の膝をついて頭を下げてる……長い髪の毛が地面に広がってる……人が。
人?
や、羽もあるし。
「すんっ」
それに、
「……あのときのお兄さん?」
だよね?
女の人の匂いになってるけど、その中にあのときの匂いも混じってるもん。
「え?」
「? お兄さん? って、だれ?」
「……あのときのって……」
「え、でも、どう見ても……」
「――さすがはユズ様。 その通りでございます」
顔を上げたお姉さん。
「やっぱり」
【?】
【は?】
【??】
【え、どゆこと?】
【わからん】
【お兄さん??】
「ワタシは――当時の肉体の姿は男性でしたが――少々前に、ユズ様を襲撃した魔族です」
「そうなんだぁ」
【えぇ……】
【朗報・えっちなお姉さん、変身もできる】
【しかも男女関係ない】
【やばくない?】
【やばいぞ】
【あの、あのときの魔族って確か、最初はツノとか羽とか隠してたよね……?】
【普通の、いや、イケメンショタって感じだったよね……?】
【あっ】
【!?】
【もしかして:やろうと思えば人類社会に溶け込める】
【やばすぎない??】
【ことごとく人類にアンチの性能してる存在で草枯れる】
「……優さん! やっぱりこの人悪い人です!! やっつけましょう!! ほら! 早く!!」
「……理央さん……君という人は……」
【えぇ……】
【理央様……】
【幻滅しましたわ】
【あんまりですわ!】
【草】
【理央様??】
【手のひら返し早すぎない??】
【だからいつまでも意識されないのですわ!!!】
【草】
【お嬢様方からも総スカンで草】
【いやまあ、特大の情報だし……】
「ゆずきちゃん、こっち来て!」
「ひなたさんの盾の後ろへ!」
「え? なんで?」
元お兄さんなお姉さん――なんかすごいカッコしてる――に向け……、いきなり剣を向けてる優さんに、きゃんきゃん騒いでる理央ちゃん。
ひなたちゃんとあやさんがすぐ後ろまで来て手招きしてる。
「柚希さん!」
「あ、教官さん」
「その存在は非常に危険です! 姿形を変え、人を惑わし、情報を攪乱する……見聞きしたものを信じてはいけません!!」
走ってきて、がばっと抱きかかえてきたお姉さん。
鎧がごつごつ痛いけども――なんでそんなに焦ってるんだろ。
「?」
「とにかく下がります! ほら?」
「? なんで?」
「何ででもです!!」
【悲報・ユズちゃん、警戒心ゼロ】
【むしろマイナス行ってない?】
【草】
【ユズちゃん……さすがにそれはないよ……】
【でもユズちゃんだよ?】
【そっかぁ……】
【草】
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