２２９話 全召喚
「………………………………」
理央は、熟考する。
「………………………………」
熟考し熟考し――――――――そして。
「……エリーさん」
「はい」
「そのサイズって……ごにょごにょ」
痴女もといエリーの耳元へ、口元を近づけ。
【百合ですわ！！！！！】
【お嬢様方ステイ】
【こちらに塔を建設致しましょう！！！】
【うっせぇ！！】
【草】
「――ええ。 『ワタシがこの姿になる元』を、そのままです」
「……そういえば、顔も」
「目元、輪郭、雰囲気――全く同じにしますと理央様に怒られると想定し、あえて少し変えたり髪は伸ばしていますが、おおむね」
「……それを、柚希先輩が……」
「ええ。 ……さらに、そちらのあや様、ひなた様へは……」
ぼそぼそ。
それから数十秒のあいだ、２人は密談を交わし。
【草】
【草】
【聞こえない】
【だって、両肩組んでるし】
【もうすっかり仲良しだね！】
【草】
【理央様とエリーちゃんの顔が！】
【ちゅーするのか！？】
【！！！！】
【次の構想が固まりましたわ】
【お嬢様……！】
【草】
――がしっ。
「……優さん、大丈夫です！ この人は良い人です！」
「魔族だけど？」
「大丈夫です！」
「何がかな……」
【ああ！ 月岡が遠い目を！！】
【かわいそうに……】
【さすがにかわいそう】
【こんなユズワールドに巻き込まれたばかりに……】
【草】
【悲報・月岡、アンチが消え始める】
【草】
【野郎共から本気で哀れまれてるのが草】
【まあねぇ、巻き込まれてばっかだし……】
【ユズちゃんの関係者だからね……】
【ユズちゃんの関係者になっちゃったからね……】
【全てはユズちゃんたちを救助しに行ったあのときから始まったんだね……】
【かわいそう】
【かわいそう】
【月岡は本当に善意で行動してるのにこの仕打ちはひどいや、あんまりだよ】
【いくらなんでもひどすぎる】
【月岡……報われて……】
【草】
【けど大丈夫？ 理央様、私利私欲のために敵を引き込んでない？？】
「……っていうコメントもあるけど、理央さん？」
「大丈夫です！！！」
「だから何がなのか聞かせてくれ理央さん！！ 根拠を！！」
【草】
【草】
【あの、激戦……】
【大丈夫、ちょっと押してるから】
【こっちも月岡ががんばってるから】
【そうそう、理央様の闇堕ちからね】
【草】
【みんながんばっているんだよ】
【草】
「では、味方として認識して頂いても？」
「はいっ！ よろしくお願いしますね、エリーさんっ！」
密談を終えてから――この上ない笑顔を崩さない理央。
【かわいい】
【かわいい（何か良いこと聞いた】
【大丈夫？ 人類裏切る提案とかじゃない？？】
【理央様、ユズちゃんと一緒になれるなら人類を売り払っても良いって本気で思ってそうだし……】
【思ってそう】
【草】
「――では、他ならぬ理央様からもご許可が出ましたので。 ……えいっ」
「――うわっ！？」
「あれ、ここどこ？」
「あ、理央様たち」
「配信のサキュバスだ！！」
「ああ理央様、まさか俺たちを売るだなんて……」
【草】
【草】
【かわいそう】
【知り合いをことごとく生贄に……】
【親衛隊なのにな……】
【草】
「すげぇ……上見ろよ」
「空一面、サキュバスだらけだ……！」
「空一面に尻が……！」
「ブーメランのもっこりが……！」
「小さいのから大きいのまで……！」
ぱちん。
エリーが指を鳴らした瞬間に――彼女たちの周囲には、戦闘中だったらしいままに転移されてきた、
【草】
【親衛隊たち！】
【救護班も居るぞ！】
【あー、上で戦ってたみなさん、まとめて転移されてますねー】
【えぇ……】
「……配信で見ていましたが、まさか私たち全員を……人心まで操るとは……！」
【教官さん！】
【めっちゃ警戒してる】
【そらそうよ……】
【月岡と教官さんたちの反応が普通だよなぁ】
【そうだよね……本当ならね……】
「はい。 畏れながら、必要でしたので――上層の皆様、2507名をこちらへ召喚させていただきました」
【にせん！？】
【あー、確かにさっきまでの配信に映ってた人たち、全員来てますねぇ】
【あ、休憩にって入り口まで来てた人も巻き込まれてる】
【草】
【かわいそう】
【もしかして:サキュバス、やばい】
【だって魔族だし】
【敵なら厄介すぎるけど、味方なら……】
【配信の情報を全部リアルタイムでキャッチしてて、さらに転移とか好き勝手できる……うん、敵だとしたらいくらでも悪いことできるな】
【ダンジョンマスターかな？】
【やべぇ】
【何千人のパーティーでも、あちこちの階層にランダムに飛ばしまくるだけであっという間に全滅よねぇ……】
【ひぇっ】
【だよな、モンスター数匹の前にひとりずつ放り込めば１日掛からないよなぁ……】
【こわいよー】
【これがサキュバスの本気か……】
【魔族、想像以上にやばい存在だった】
「それをしないということで、少しは信用していただけたらと」
「私は信用してます！」
「理央さん……だからダメだって」
「優さん！！」
「はぁ……こんなところで、想い人と世界のどちらを取るかっていう展開が起きるなんてなぁ……俺なら世界を選ぶんだけど、理央さんだからなぁ……」
【草】
【草】
【本当だよ！！】
【月岡がすすけている】
【月岡の言うことがこの上なく正しいんだよ理央様】
【この子はもうダメだよ】
【理央様って多分平気で人類裏切るよね、ユズちゃんのためなら】
【今まさに裏切ったのでは？】
【草】
【客観的に見れば、どうしても裏切り行為だわな】
【処されそう……】
【最低でも逮捕はされそう……】
【理央様？ 大丈夫？ このあともう帰れないよ？？】
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