21話 スライム戦
「あっ、スライム!」
ちょっと歩いた先。
そこで、つい最近に見たばっかりの見た目をしたスライムたちが数匹居た。
「みなさんは、ダンジョンに入った時点で身体能力と防御力が向上しています。 落ち着いて戦ってみてくださいね。 危なさそうなら、ケガをする前に私が介入しますから」
「はーいっ! じゃあ私! 良いよね! ……やー!」
ずっとモンスターと戦いたがってたひなたさんは、早速に武器を振り回して突撃していく。
あんな重そうな大剣を……すごいなぁ。
僕が持ったらべちゃってつぶされそう。
「夢月さんは魔法を……向日さんとは離れた場所に居るスライムに向かって撃ってみてください」
「は、はいっ」
彼女がおっかなびっくりで両手を前に探すと……CGエフェクトみたいに炎が出現。
ちょっと迷ってたけど、それをもっと突き出すように……ひゅんっと飛んで行く。
「ぴぎー!」
「……これが、魔法……!」
【スライムしゃんかわいそう】
【ダンジョン潜りが1度は経験する、初心者講習の養殖スライムしゃんたちの運命を思うと……】
【だが考えろ 美少女にやられるんだぞ?】
【最高だな】
【草】
【しかし初々しくて実に良い】
【ああ……初心者ってこういうのだよなぁ】
【普段は慣れてる子の配信とかにお邪魔してるから、こういうのが新鮮すぎる】
【で、ユズちゃんは?】
【ユニコーンに攻撃してもらうんだろ?】
【でもできるのか? あんな見た目で】
【完全にぬいぐるみだからなぁ】
【ま、まぁ、無難に体当たりとかすれば倒せるだろうし】
元気いっぱいな声を出しながら、ちょっと武器に振り回されながらも1匹ずつ倒しているひなたさん。
魔法が楽しかったらしく、ちょっと嬉しそうな顔をしながら今度は水鉄砲な魔法で攻撃している夢月さん。
「星野さん」
「あ、教官さん」
そんな2人をぼへーって眺めてた僕に彼女が近づいてきて、そっと、おまんじゅうと僕の頭を撫でてくれる。
「……大丈夫ですよ」
「んー……」
「きゅいー……」
【あっ(突然死】
【唐突に放たれる尊死】
【だってかわいすぎるもん】
【それな】
【目を閉じて撫でられるだけのユズちゃんたち……】
【どうしてユズちゃんはこんなに、いちいちがかわいいんだ……】
「……星野さんはテイマーです。 狙ってほしいモンスターを……慣れないうちは指差して『あれを倒して』と言えば、意志を汲んでくれるはず。 最初は怖いでしょうが、何ごとも慣れですよ?」
優しい教官さん。
こうして頭、優しく撫で撫でされると気持ちいいんだ。
最近はお母さんにされそうになっても、なんだか恥ずかしくって避けちゃってるし……知らない人だからこそ、なんか甘えちゃう。
……たまになら良いよね?
「それに、テイムしたとは言え、モンスターはモンスターです。 よほど格上相手でない限り、恐怖を感じないそうですから」
「ん……」
【●REC】
【頭撫でられ続けてるユズちゃんとユニコーン】
【かわいい】
【尊すぎる】
【ユズちゃんの甘え声……実に良い】
【何このかわいいのたち】
【これが、ユニコーンに見初められしロリ……!】
「……ありがとうございます」
「きゅい」
ほっといたらいつまでも撫でてもらいたくなっちゃうから、がんばって復帰。
おまんじゅうもぷるぷるってして「早くやろうよ」って感じに見上げてくる。
「日向さん、一旦退いてください」
「えー!?」
「パーティーメンバーが無理のない範囲で、できるだけ戦果は平等に。 他の方の疲労やケガだけでなく、戦果の配分の意識。 パーティーを組む上では必要なことですよ」
「……あ、そっか。 私が前に出過ぎちゃうと独り占めしちゃうんだ」
「それに、囲まれるリスクも。 前衛をされるなら気をつけましょうね」
「はーい!」
【かしこい】
【ロリっ子なのにかしこい】
【そうだよなぁ、どうしても近接職が倒す率高いもんなぁ】
【後衛とかサポート職は譲ってもらわないと、報酬は平等でもレベルとスキルが上がらない悲しみ】
【分かる】
【意識しててそれだからな】
【戦果の取り合いで人間関係まで崩壊するパーティーの多さよ……】
【まぁ大体最初に組んだパーティーで、みんなやらかすし】
【それな】
【結構なパーティーで追放劇、起きるよね……】
【人は苦しみを背負って成長するのだ……】
【そして成長しなかったヤツは】
【無事ブラックリスト行き】
【悲しい】
前に出ていた……スライム追っかけてすっごく先へ行ってたらしいひなたさんがぴょこぴょこと戻って来る。
「ゆずきちゃん、ごめんね?」
「ううん、ありがとう」
【やさしい】
【優しい世界】
【汚れきった俺たちにはまぶしい】
【ああ……】
「それでは星野さん、いざとなったら私が守りますから、あのモンスターのところへ行きましょう」
「私も守るよ!」
「……私も影ながら」
「ありがとうございます」
そう言って、腰が引けてた僕の背中をそっと押してくれる教官さん。
それを真似して僕の横にぴとっとくっついてくるひなたさん、その横に立っている夢月さん。
【てぇてぇ】
【いい……】
【真の百合がここに】
【でもどうせ解散するんだ】
【そのうち男ができるんだ……どうせどうせ……】
【かわいいもんなぁ、若いもんなぁ】
【うぅ……】
【なんでそんなこというの!】
【草】
「……ふぅっ」
ひなたさんにぶんぶんと追いかけられ、後ろの夢月さんから魔法を投げつけられて半壊しているスライムたちの群れ。
……怖い。
あのとき倒せたとは言っても、やっぱり怖いものは怖い。
「きゅい?」
……でも。
僕の腕の中には、おまんじゅうがいる。
「……一緒に、戦ってくれる?」
「きゅい!」
「任せて」、そんな風にも聞こえる声。
「……こっ、怖いけどがんばる! ……僕が攻撃するわけじゃないけど……」
【かわいい】
【かわいい】
【なんか男の子みたいな話し方……】
【ショタだって!?】
【ここにショタっ子が居るのね!!】
【落ち着け】
【こんなにかわいい子が男のはずがないだろ】
【そんなぁ】
【草】
【そもそもユニコーンに懐かれてるって知ってんだろ草】
【そこに一縷の望みが……】
【ないよ】
【ないな】
【ユニコーンだからな、男の気配はないんだ】
【安心できるな】
【ユニコーンのいるあいだは確実に男が居ないし、居たことのない女の子……だから安心して見ていられるんだ……】
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