197話 お母さんのペットは便利
「お母さん、消えるイメージしてみて」
「しゅん……あ、消えたわ」
「もっかい」
「むんっ! ……しゅん……」
「うん、お母さんのはコントロールできるんだね」
すっごく簡単に生えたり消えたりする羽。
「……あ、僕のもそうなんだ」
それを見てのマネをしてみたら……あっさりと消えて、あっさりと生えた。
「……明日、ちょっと検証してみないとね」
「そうねぇ、これじゃ飛んでる最中にくしゃみでうっかり消えちゃいそうだし、逆にやる気出したら勝手に生えそうだし……」
思ってたよりすっごく簡単に出し入れできる羽。
なんかこう、体の中からにゅるんって出る感じと、にゅるって入ってくる感覚があるんだ。
「あ、そうだ、僕のもくしゃみで消えちゃったんだよ」
「そうだったのね? じゃあやっぱり……気合なのね!」
「そうかも……?」
【そうかも……】
【そうかな……?】
【そうかもね……?】
【もうそれでいいや……】
【草】
【ユズちゃん、人間にはそんなに簡単に羽が生えたり消えたりしないのよ……?】
【やっぱりユズちゃんたち、絶対ご先祖のどっかで妖怪とか精霊とか妖精とかの血が混じってるって】
【それな】
【まさか、最初のころからちょうちょ呼ばわりしてたのが……】
【ここへ来てほぼ確定だなんてなぁ……】
【繋がってしまったな……】
【ああ……】
【同族を求めていたのか……】
【草】
【俺はな、冗談が真実になるこの瞬間のために生きているんだ】
【もっと別のことに生きて?】
「僕のときは、なんだかむずむずしたけども……どう?」
「んー。 私は特にはないわねぇ……」
2人でお互いの背中を見たりしつつ、けども意識で出したり引っ込めたりできるって分かって、作戦に支障はなさそうってことでひと段落。
【やっぱユズママ、ママだけど絶対お姉さんとかだって】
【親戚のお姉さんとかな説が有力】
【だよな、このいちゃいちゃも正直双子の姉妹の百合にしか見えないし】
【顔は中学生並み、身長も中学生並み、しゃべり方だけ高校生っぽくて、おっぱいが膨らむとロリ高校生っぽいもんなぁ、ユズママ】
【柚希様×柚希母様……良いですわね】
【ひぇっ】
【百合教徒……ここにも居たのか……!?】
【ええ……ずっと】
【怖すぎて草】
「じゃ、僕、お母さんのペットたちの餌とかやってるね」
「ありがとぉ。 私は通帳とか探しておくわぁ」
【悲報・ママのテイムされたモンスターたち、ペット扱い】
【今ユズちゃん、ものすっごくナチュラルにペット言ったぞ】
【そして疑問も持たないユズママ】
【まぁねぇ、ユズちゃんの方が若干だけど人間に近い感性持ってるレベルだし……】
【草】
廊下の先へ、ちゃんとした足取りで歩いて行くお母さん。
電気は点かないけども、ダンジョンの中は光量が変わらないからカーテン開けてある窓からならある程度の光が入って来るし、災害用のライトもあるから大丈夫みたいだ。
「……明日、なんとかがんばらないとね」
「きゅ!」
「ぴっ」
「がんばるよ!」。
そういう気持ちが伝わってきて、こそばゆい。
「……ん」
柔らかいおまんじゅうと、しっとりすべすべなチョコに癒やされる。
……うん。
明日こそがんばって脱出して……理央ちゃんたちのとこに帰らなきゃ、ね。
「ふふっ」
【あ゜っ】
【み゛っ】
【ユズちゃん! 急にモフらないで!】
【いきなり過ぎて不意打ちで心臓止まった】
【成仏して】
【その前に誰かAED持ってきて】
【草】
◇
「……電気もガスもないから、お風呂はさすがに無理かぁ」
「そうねぇ、お湯は張ったままだから、生ぬるい水風呂かしらねぇ」
夕方と言えばお風呂、お風呂と言えば……ってお風呂に来て、それで改めてライフラインの大切さを思い出す。
【ガタッ】
【●REC】
【この2人の残り湯だって!?】
【ついでで理央様のも含まれているかもしれないぞ】
【ああ、あの子、良く来てるらしいからねぇ……】
【まさか、自分の体液をお風呂経由でユズちゃんへ……】
【その気持ち悪すぎる考え方は 理央様ならやりかねんな……】
【草】
【理央様への風評被害で草】
【いや、あながち風評被害でも……】
ま、しょうがないか。
ダンジョンに潜り始める前は、お風呂も最小限にしてたんだし。
お母さんも僕も汗かかない体質で、しかもお母さんは寝たきりに近くって僕も運動はしないからお湯も汚れなくって、だから何日かお湯を張ったまま使ったりしてたし。
シャワーも、つい最近まで使わずに風呂桶にお湯を張ってたし、その生活に戻ると思えばなんてことはないよね。
大丈夫、あのときよりも良いシャンプーとリンス使えてるから、ちょっとお湯が汚れてたって前よりも良い匂いになれるもん。
夏場はあっためないでしのいだりしてたし、大丈夫大丈夫。
「うぉん、うぉんっ」
「あらあら、どうしたの? こんぺいとうちゃん」
お風呂場の外からひょっこりと、トゲトゲしてる毛が特徴のモンスターさんが窓枠にあごを乗っけてきている。
「あら、それともモンブランちゃん?」
「うぉんっ!?」
「ごめんなさいねぇ、シュークリームちゃんだったわねぇ」
「うぉんっ!」
【草】
【もしかして:ユズママもワードセンスが……】
【ユズちゃんのユニコーンからしておまんじゅうだぞ?】
【シルバースライムに至ってはチョコだぞ?】
【もうだめだ……】
【やっぱりこの母にしてこの娘か……】
【モンスターすらびっくりするレベルとか】
【ある意味すごいな!】
【ことごとく食欲にまみれてるな、この母娘】
「……ゆず、ちょっと離れてもらって良い?」
「え? うん、良いけど……」
窓に乗っかってるモンスターのマズルをもふもふしてたお母さんに従って、脱衣所へ。
「けどお母さん、一体何を――!?」
――ごうっ。
熱風が、吹き荒れる。
「お母さん!?」
「あ、大丈夫みたい。 熱くないわー」
【えぇ……】
【悲報・ユズママ、家の中でモンスターに炎ぶっ放させた】
【なんでぇ……?】
【やっぱりこの母にしてこの娘だよ!!】
【本当にそうで草】
【ユズちゃんがたじたじとかレア過ぎて……】
ちりちりと熱かったのはほんの数秒、ふっと涼しくなったお風呂場。
「……あら、ちょうど良いお湯。 ありがとぉ」
「はっはっはっはっ」
「ゆずぅ? あとでこの子に……あらそう? キャベツを煮たのをあげてあげてくれる? できたらおダシで」
「うん……もう普通に意思疎通できてるねお母さん……」
湯船にはほかほかのお湯が湯気を立てている。
……僕たち、もっと早くテイマーになっていたら、生活ももっと楽だったんじゃないかなぁ……。
【悲報・ユズママ、やりたい放題】
【この経産婦、思いつきで何でもやっちゃうのね……】
【ユズちゃんも大概だけど、ユズママはそれよりも……】
【ユズちゃん……苦労してきたのねぇ……】
【見ろよ……ユズちゃん、肩落としてる……】
【ユズちゃんが煤けるとか、やっぱユズママやばいな……】
【ユズちゃんごめんね、ちょうちょとかいつも言って……】
【ユズちゃんがちょうちょなのは実際本当だから良いんじゃない?】
【それもそっか!】
【草】
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