196話 出し入れしてるお母さん
「それじゃ、すぐにでも」
「待って、ゆず」
脱出作戦を練ろうとした僕を、お母さんが引き留める。
「この子たち、お腹空かせているの」
「……あ、そうだったね……きっかけはそれだったねぇ……」
すっかり忘れてた、まだぐつぐつ言ってるお鍋。
お野菜があんまり入っていないそれとお母さんの顔を、交互に見ているでっかいモンスターたち。
「わぁん……」
「にゃあん……」
……本当に、野生を失った犬猫そのものだ……あ、よだれが。
「……先に、作ろっか。 さすがに全部はムリだから、お鍋は少しだけで、残りは野菜を生のまま食べてもらうしかないけど」
「そうねぇ、この体だものねぇ」
調味料とかが体に悪い?
人間よりはるかに頑丈なモンスターなんだ、大丈夫でしょ。
タマネギは流石に危険かもだけど。
「はっはっはっ」
「ごろごろごろ」
お座りしてるくせに、僕たちの背よりも高いところに顔があるモンスターたち。
「これ……脱出しても、食費だけで大変そうだね……ダンジョンでがんばるけど……」
「ゆず、ありがとっ」
しょうがない、遠慮して滅多にわがまま言わないお母さんが珍しく目を輝かせているんだ、息子としてがんばらないとね。
【ユズちゃんが不憫に思えてきた】
【俺も】
【ユズちゃんがユズちゃんになったのって、絶対ユズママのせいよね……?】
【ああ……】
【ユズちゃんよりもっと常識が……】
【でも、ユズママが居なければ多分ユズちゃん、ユズママみたいにもっとユズちゃんする性格になってたよ……?】
【草】
【ただでさえやばいユズちゃんが、さらに強化されていた可能性……?】
【ユズママがユズちゃんしてたおかげで、ユズちゃんはちょっとユズちゃんするだけで収まったのか……】
【ユズちゃんがゲシュタルト崩壊しそう】
【ユズちゃんが貧困シンママのためにバイト漬け生活だったのは、これ以上悪化しないため……?】
【ひどすぎるけど結果としてそうなってそうで草】
【でももし、そうなってなかったらしたら……?】
【ユズちゃんがすくすくのんびり成長してたら……?】
【何その天国で地獄な状況】
【理央様がもっとやばいことになってそう】
【想いを伝える難易度が爆上がりしてそう】
【多分今のなんてもんじゃないよね!】
【配信見ただけで、もっと情緒とかいろいろ壊されるな!】
【配信見ただけで、リアルで尊死する人が出てくるレベル】
【草】
【逆に、どうやってユズパパがユズママを射止めたのかが気になってきた】
【もうここまで来ると、幼いユズママを力尽くでという予想しかできないんだが】
【そうなるともう、見つかり次第お巡りさんよねぇ……】
【おお、もう……】
【ユズパパは犠牲になるのだ……その行いによってな……】
【な、何とか英雄の父親ってことで恩赦とか……】
【その前には一旦牢屋行きになって全部晒されることになるが?】
【草】
【どっちにしろユズパパはおしまいで草】
【かわいそうだけど自業自得 早く自首してくださいユズパパ】
【完全にオチ担当になったユズパパに草】
◇
「……このまま脱出しようかって思ったけども、時計見たらもう夜だ……」
「眠くなってきたし、明日にしない?」
「うん……貴重品もまとめなきゃだしねぇ」
ダンジョンの中は一定して薄暗いから忘れてたけども、今はもう夜。
今日は色々あったし、気が抜けたらなんだか眠くなってきたし。
【良かった……良かった……】
【ユズちゃんたち、作戦だけ練ってこのまま突撃しそうだったから……】
【そうだよ、ユズちゃんたちじゃ無理だよ】
【ああ……】
【眠い中でユズワールド展開したら……】
【どうなる?】
【ダンジョンが……尊死するとか……?】
【草】
【ない……とは言い切れないのが草】
【だってユズちゃんだし……】
【その場合、ここに居た人たちがどうなるのかすら分からないからなぁ】
【確かに】
【ダンジョン自体がユズるかどうは置いとくにしても、みんなが脱出してからの方が良さそうだしなぁ】
【草】
【ユズるで草】
「ふぁぁぁぁぁー……あっ」
「あ、お母さんっ」
大きなあくびをしたお母さん。
ぐーっと伸びたと思ったらいきなり羽が消えて、そのまま落ちて転ぶところだったのを、慌てて捕まえる。
「っと……大丈夫?」
「あら、ごめんねぇ。 気が抜けたから羽も抜けちゃったのかしら」
「そんなに単純なのかなぁ、これ……」
お母さんの背中を見ても、特段に破けてるとことかはない様子。
そうだよね、この前僕に生えたときも、パジャマとかシャツに穴とか空いてなかったし。
【あああああああ】
【悲報・ユズママ、ノーマルモードに戻っちゃった】
【ノーマルモードで草】
【羽……そんなに簡単に……消えるのか】
【ユズちゃんたちも、最初のときにそう言ってたもんねぇ】
【おっぱいも……しぼんじゃった……】
【悲しい】
【ロリ巨乳経産婦が……】
【ひどすぎる属性で草】
【巨乳というほどでもないんだよなぁ……】
【大丈夫、そこにちょうちょとユズワールドが付与されるから】
【むしろマイナスだな!】
【何が大丈夫なのかこれっぽっちも分からなくて草】
「お母さん、体の調子は?」
「そっちは大丈夫。 さっきからと同じよ」
「それなら良いんだけど……2人で飛べないとなると、計画を変えないとなぁ……」
さっき僕たちは、2人とも飛べるのを利用してモンスターたちを最低限倒しながら出口を見つけて上のフロアへ行こうって話してた。
けども、そのお母さんの羽が消える――時間経過なのか、もう生えないのかは分からないけども、そんな不安定な力に頼るわけにはいかないし。
「お母さん、なんとかならない? ……なーんて」
「むんっ! ……ゆず、生えたわ!」
「えっ」
冗談で言ったのに……なんかまた、お母さんに生えてる……おっぱい膨らんでる……。
「……気合で生えるんだ……」
【朗報・ユズママ、再びちょうちょ】
【ちょうちょ(物理】
【もうだめだ……】
【あ、でも、おっぱいまた膨らんだ!!】
【まだまだいけるな!!】
【草】
【そんな簡単に出し入れできるの!?】
【どうやらそのようだな……】
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