189話 【ユズワールドに世界が戸惑う!】
「柚希、ケガしてるけど大丈夫?」
「あ、うん、屋根で転んで寝ちゃって」
「後で絆創膏持ってこないとね」
「ううん、治癒魔法かけてもらえば治るからガマンする」
「ひなたぼっこ?」
「ううん、モンスター倒してたら魔力切れ」
【理央様ー! 理央様ー!!】
【会話のドッヂボールっていうかなんていうか……】
【お互いにボールをあさっての方向に投げて、んでその投げた先を眺めながら話してるって言うか……】
【なぁにそれぇ……】
【……ユズちゃん家の会話術?】
【約10分、お互いにノーコンのボールを場外にぶん投げるような会話が続いています】
【それって会話なの?】
【もしかしたらひとりごと同士かもしれないな……】
【何その不毛な時間】
【かわいいから良くない?】
【そうかも……】
【草】
【ダメだ、教官さんとか別の人の配信も見てないと危機感が……危機感が薄れていく……】
【力が抜けていくんだよなぁ……】
【さっきまではあれだけテンション上がってたのにねぇ……】
【ま、まあ、なんだかんだ俺たちみんな、ユズちゃん……の周りに触発されて、救助活動の手伝いとかダンジョン化への突撃始めてるから……】
【そうだな! 理央様とかユニコーンパーティーとかユズちゃんの親衛隊のおかげだよな!】
【あの、ユズちゃんは……?】
【このザマだよ!!】
【草】
【やっぱりこれ固有能力だって、ギャグ空間にする能力だって】
【ユズママのも加わって……いや、かけ算か?】
【累乗していくのか……】
【なにそこれわい】
【感染していきそう】
【やっぱり固有能力じゃねーか!!】
【しかもユズちゃんとユズちゃんの上位互換っぽいユズママのな……】
【ユズちゃんのさらに上が存在するとは思わなかったよな……】
【草】
お鍋をもりもりと食べていくお母さん。
さっき着替えるついでに普段着になってるお母さんは、最近のいつも通り……よりも、さらに元気に見える。
「でも、なんでかしらねぇ。 さっき起きたら、普段のがウソみたいに楽になったの。 そう、まるでユズの小さい頃までみたいに」
「僕がちっちゃい頃はお母さん、元気だったもんね」
「不思議よねぇ」
「不思議だねぇ」
【ねー】
【ねー】
【視聴者たちの語彙が……】
【知能指数も下がってそう】
【ユズちゃんと同じ小学生レベルには落ちてそう】
【気をつけろ! 気がつかない内にユズワールドに飲み込まれるぞ!!】
【草】
【そうか……この能力はユズワールドだったのか……】
【ここでも同じ会話を繰り返すように……もうだめだ……】
元気そうでにこにこしてるお母さん。
どうやら感情が昂ぶるとぱたぱたするらしい羽。
それをなんとなく見てる僕。
なんだか嬉しいな。
まるで、子供のころに戻ったみたいだもん。
【かわいい】
【かわいい(白目】
【かわいい(思考放棄】
【んにゃぴ……】
【あーあ】
【あ、そういやさ、今のユズママ、この前の生えたユズちゃんそっくりだよね】
【あー】
【なんでぇ……?】
【遺伝子だからね、ちょっと成長したらこんな感じよね】
【その前には絶壁派との和解が必要だがな!】
【えぇ……】
「んくっ……それで、これからどうしようかしらね?」
「んくっ……ひとまずはここで魔力回復。 僕のが満タン近くなれば、ほんのしばらくのあいだなら今湧いてるモンスターさんたち全部結晶にできるから、何とか脱出はできると思う」
ただし、それは出口があるかどうかって問題があるけどね。
ここがただの大部屋――洞窟で、上の階層どころか出口すらない可能性もあるし。
だってダンジョン化だもん。
【さらっと言ってるユズちゃん】
【まぁ、できるのはさっきやって見せたし……】
【1万の大型モンスターを確実に倒せる自信……上級者でもないよね……?】
【ユニコーンの出力がケタ違いだからな】
【しかも、いざとなったらシルバースライムで守りも完璧だし】
【……これさ、水さえあれば、ユズちゃんたちだけなら1ヶ月は余裕じゃね……?】
【草】
【ああうん、確かにそうねぇ……】
【お野菜はごろごろあるし、カセットコンロのガスが切れても火さえ起こせたら食べるのには困らないし……】
【ユズママも、病気の割には羽が生えたからか元気っぽいし……】
【生えると元気になるのか……】
【固有能力発動してるからね、元気なんだよ】
【なんかここだけ世界で1番安全でほんわかしてる空間になってる】
【ちょうちょ空間って言うんだよ】
【ユズワールドな】
【まさか、最初の頃からのちょうちょが……】
【繋がっちゃったぁ……?】
【繋がってしまったな……】
【壮大すぎる伏線】
【※多分精神汚染の類いです】
【草】
【あ、教官さんたち、もう5階層】
【がんばえー】
【なにひとつ気持ちが込められてなくて草】
【ごめん……でも、これ見てたら誰だってそうなると思うの……】
【そらそうよ……】
「ねえユズ?」
「だからダメ」
「ちょっとだけだから」
「その羽で飛んで、万が一モンスターさんたちの方に落ちちゃったらどうするのさ」
「そのときはユズががんばって?」
「それならせめて、お腹いっぱい食べるまで待っててよ」
「じゃあついでにユズもがんばって生やして2人で飛んでみる?」
「えー、僕、飛行機とか怖いし……」
「あ、私が元気なうちに今度どこか旅行行きましょう?」
「んー、とりあえず保留ー」
「理央ちゃんにひなたちゃん、あやちゃんも連れてなら?」
「それなら、まあ……」
もぐもぐとお野菜をほおばりながら、とりとめもない会話をいつもみたいにする。
なんにも考えないと楽だよね。
【お客様! お客様の中にツッコミはいらっしゃいませんかー!?】
【理央様も全速で攻略してるけども、まだとても……】
【理央様……】
【どうにかしてこの空間に理央ちゃんをぶち込まないとやばいって!】
【頭がおかしくなりそう なった】
【かわいそう】
【どうしよう……この映像、さっきからテレビで流れてる……】
【草】
【さすがに音声切ってるけど、普通にユズちゃんたちがお昼ごはん食べてる光景が全世界に……】
【い、一応ダンジョン化した内部の映像としては世界初だから……】
【それならせめて、教官さんとか理央様たちとか親衛隊たち映したげて??】
【大丈夫、大半の局はそっち映してるから……】
【ダンジョン化したとこに居る人たちを救出できるって湧いてた世界中が、「なにこれ……」って雰囲気になってるんだけど!!】
【まあ、そうなるな】
【ユズちゃんも、とうとう世界デビューか……】
【※ユニコーンとか妖精とかの情報が錯綜してとんでもないことになってます】
【※「ダンジョンから出てきたエルフ」とか「人語を解するシルフ的な精霊」とか憶測が拡大してます】
【そらそうよ……】
【まあ、あながち間違いでもないし……】
【もう、それでいいや……】
【耐性のない世界中の人、かわいそう】
【かわいそう……】
【今ごろユズワールドで頭抱えてるだろうなぁ……特にお偉いさんとか……】
【人類の希望 の、はずなのにねぇ……】
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