19話 ダンジョン講習――実地研修とうっかり配信と
「それではみなさんに臨時パーティーを組んでいただき、ダンジョンでの戦闘などを体験していただきます」
「はーい!」
「楽しみですねっ」
「そう、ですね……」
「?」
結局立ち話が終わっても、さっきまでより落ち込んでる感じの夢月さん。
なんかあったのかな?
なんか僕のことちらちら見てくるけど……。
「私! 私は剣で戦う! おっきい剣ってかっこいいよね!」
「……では私は魔法ですので、後方になりますね。 向日さんに守っていただくのは申し訳ありませんけど……」
「えっと、僕は……」
テイマーってどっちなんだろ?
どっちでもないから真ん中なのかな。
「星野さんは……そのユニコーン、幼体でもこのダンジョンレベルなら問題ないはずです。 向日さんの後ろから、その子に戦うよう指示してみてください」
「あ、はい」
僕よりずっと小さいのに、レベルが1の段階でダンジョン内なら僕よりもフィジカルが強くなってるらしい、ツインテールがぴょこぴょこしてる向日さん。
彼女が元気に歩き出す後ろを僕、その後ろに静かな夢月さんに、やっぱりひそひそ話の続きをし始めた受付さんもとい教官さん。
……うー、気になるけども……聞いちゃダメだよねぇ。
お母さんも「女の人の内緒話は聞かない方が良いのよ? 私も良く分からないし……」って言ってたし。
お母さんでも分かんないんだ、じゃあ僕なんかもっと分からないよね。
「きゅい!」
「あ、おまんじゅうもやる気なんだ。 やっぱりダンジョンって分かるのかなぁ」
もぞもぞ動いてるおまんじゅうの白いたてがみを何となく見ていて、ふと思い出した。
そうだ、配信カメラ……操作とか、まだ慣れてないから今日も練習しとこ。
「普段からカメラに向かう気持ちが大切です」ってネットでも書いてあったし。
「あの、配信カメラ……やってみても良いんでしょうか」
「え? あ、はい、プライバシー設定を最大にしてもらえたら顔や特徴的な所持品、名前もぼかされますので特定されませんし、私は構いませんよ? おふたりが大丈夫でしたら」
「あっ!? ……私も持ってくれば良かったー!」
「配信ですか……私はまだ恥ずかしい気がします……」
うん、ちょっと分かるなぁ……恥ずかしいの。
でも僕はなんとか配信でお金を稼……げるのか分からないけど、でももし気に入ってくれる人が居たら、1ヶ月がんばって1食分くらいのお金はもらえるかもしれない。
そうじゃなくても、せめておまんじゅうの分くらいは。
動物好きの人からカンパもらえたら、ありがたいもん。
「……良いですか?」
「私はいいよ!」
「……私も、私のことはあまり映さないでいただけるのなら……」
「分かりました! えっと……こんな感じだったかな」
2回目でもそれなりに覚えてる操作で、デモ配信を作動。
よしっ。
【お】
【通知から来ました】
【あのとき登録しといて良かったー】
【ユズちゃんが配信してる!?】
【あれ? まだ全部初期設定なんだけど……】
【まーた配信事故?】
【その可能性が高いな】
【ユズちゃーん、コメントコメントー】
うーん、ちゃんと動いてる……っぽい?
ならいいや、後はオートで動くみたいだし。
【ここどこ?】
【ダンジョンだな】
【それは分かるが】
【何の情報も含まれていないコメントだな】
【この役立たず】
【ひどくない?】
【草】
【お、今日は何人か一緒か】
【でも全員セキュリティ掛かってない?】
【あー、そのへんも全部初期設定か】
【ドジっ子ユズちゃん】
【あざとい】
【だが天然だ】
「あ、すごい。 カメラがちゃんとそれっぽい方向向いてる」
ダンジョンの中でもちゃんとふわふわ浮かんで、僕を見る感じに斜め前のカメラがかっこいい。
「それは支給の初心者用のですから……ちゃんとしたのにしますとカメラも数台で、もっと画になるように補正してくれるんですよ。 ……お高いですけど」
「配信機材って高いって言いますものね……配信、するにしても……私は安いのでいいかしら……」
「僕も……メインは配信じゃなくて、おまんじゅうに戦ってもらってにするつもりですし、このままで良いかなぁ」
「えー、かわいく映る方が良いじゃーん。 新しいのは動いてても盛れるって言うしー!」
【んん?】
【この前みたいに話しかけてきてない……?】
【他の子たちも、カメラ、見向きもしてないな】
【もしかして:別種類の配信事故】
【ああ……】
【悲報・ユズちゃん、やっぱ天然ちゃん】
【プライバシー設定最大で個人情報とかがゼロなのが幸いだな……】
【しかしでかい】
【目の前のお姉さんたち2人の4つが】
【ユズちゃんの視線が低いから目の前だぞ】
【ああ……!】
【お前らユズちゃんの貧乳が良いって言ってたじゃないか!】
【それはそれ】
【これはこれ】
【目の前の大学生っぽい子の方がでかいか】
【いや、ダンジョン協会のお姉さんもなかなか】
「みんなー! 前行かないのー!?」
「あ、ごめんなさーいっ」
【ロリ!?】
【ロリが映ってる!】
【ロリ参戦】
【お前らユズちゃんの幼女さに釣られたんじゃなかったのか!】
【それはそれ】
【これはこれ】
【活発ロリって良いよね……】
【ツインテ?も良いよね……】
【あ、もちろんユズちゃんの落ち着いたロリも好きよ】
【ばかばっか】
ずいぶん前に行っちゃってた向日さんに向かって、ちょっと急いで走ったけど……なんだか疲れにくいみたい?
ああ、ダンジョンの中だからか……ってことは僕もちゃんと潜れるんだね。
これまでの適性を調べる遠足じゃ起きなかった変化。
そう思うと、ちょっと嬉しい。
「あ、そうだ! 私、おめかししてない!」
「あ、大丈夫。 これ、オフラインなので」
「あれ、そうなんだ」
「私も今日はお化粧も服も……なので不安でしたけど、それなら大丈夫です」
「オフラインに設定しているんですね。 なら私もカメラを気にせずに講習続けられるので助かります」
【えっ】
【え?】
【オンラインですけど?】
【余裕でオンラインなんだが?】
【オンライン! これオンラインですお姉さん!!】
【教官さーん!! ちゃんと機器チェックしてくださーい!!】
【草】
【悲報・ユズちゃん、やっぱドのつく天然だった】
【機械音痴かもしれんぞ】
【ああ、スマホとかタブレットでさえそういう子いるもんなぁ】
【お願い……気づいて……配信しちゃってるのよユズちゃん……】
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