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ユニコーンに懐かれたのでダンジョン配信します……女装しないと言うこと聞いてくれないので、女装して。  作者: あずももも
6章 庭のダンジョンと衝撃

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183話 命令違反

『……おまんじゅうっ』

『きゅ――っ!』


「――すぐにでも保護すべきでした。 すぐにでも危険性を上に訴え、強制的にでも危険から隔離すべきでした。 ええ、後知恵ですが、だからこそ思うんです」


画面の中では、どうにかして屋根に登った柚希がユニコーンを抱きながら――数十秒置きに全方位へのレーザー攻撃をしている。


「柚希さんが――理由は不明ですが、魔族を――モンスターを惹きつける。 それは元々、ユニコーンを助けたと聞いたときから、違和感として残っていたんです」


20秒くらいかけて、ぐるりと丁寧に周囲を焼き尽くす柚希。


迫っていたモンスターたちが結晶化してくると座り込んで、肩で息をしている姿は――限界が近いのだと、誰にも分かるもの。


「『モンスターは、まず、自分で倒さないとテイムできない』――それが定説です。 それが、柚希さん以外のテイマーさんのテイムの仕方。 しかし彼女は、倒すどころか助けることで懐かれました。 ここで既に『普通ではない何か』が起きていたんです」


【確かに】

【あれは「スライムたちに襲われてたのを助けたから」って聞いたけど】

【HPがミリになったから擬似的に倒したようなもんって解釈だったな】

【それがおかしいのか】

【あー】


よろよろと立ち上がり、ふたたびに――はるか先の壁から、全方位から、全速力で突撃して来ているモンスターの群れ。


それに向かい、柚希は――。


【ユズちゃん……】

【もう、魔力が……】

【汗かいてきてるし、そろそろ限界か】

【お母さんも寝てるんだろ?】

【あっ】

【そうか、確か体が弱いとか】


【え、じゃあやばくね?】

【やばいんだよ】

【チョコちゃんがここに居ないのは……お母さん守らせてるんだろうなぁ】


【でも、シルバースライムだってテイムされてるから、ユズちゃんの魔力が切れちゃったら……】


「……教官さん」


「許可、できません」


「でも、私、このままじゃ柚希先輩を――見殺しに、しちゃうんです。 もしリストバンドが、ちゃんと動いてくれなかったら……柚希先輩も、柚希先輩のお母さんも」


「………………………………」


「りおちゃん……」

「理央さん……」


うなだれる理央を、左右から抱きしめているあやとひなた。


けれども、モニターからは柚希たちが戦う声に、モンスターたちの断末魔。


「柚希先輩のために、ここまで強くなったのに……何の意味が、あったのかなぁ」


【理央様……】

【理央ちゃん……】

【つらいよなぁ】

【ユズちゃんが好きすぎるもんなぁ】


【何回もユズちゃんと隔離されて、毎回泣き叫んでたもんなぁ】

【ああ……】

【配信用のマイクが音割れ起こしたりするレベルでな……】

【草】

【お前! 今シリアス!】

【でも、俺たちにできることは何もないし……】


「おまんじゅ、う……」


【あっ】

【ユズちゃんが】


どさり。


屋根の上で――なんとか頭を上にして倒れた柚希。


反動で飛んだユニコーンも、ぽてぽてと屋根を転がる。


『……ごめ、んね……おまん、じゅう……』


転んだ拍子に切ったのか、頬から血を流し、けれどもずりずりと這うようにしてユニコーンを求め――抱きつき、座ったまま体を起こす柚希。


『もうちょっと……意識が無くなるまで。 付き合ってね』

『きゅ、い……っ』


息は荒く、服はぼろぼろで顔も傷つき、汗と汚れと血で無残な柚希。


まるで子供が、傷つきながらもペットに寄り添い、自分の痛みも忘れてすがり付き、なだめるかのよう。


その純粋さに、画面の反対側の人類は――心を、締め付けられる。


だがそれでも「彼女」は、諦めない。


ユニコーンと一緒に、目はほとんど開かなくとも――最後の一瞬まで、最後の魔力までを使い切ろうと、ふたたびに攻撃をしようと、健気にも体を起こし――。


【ユズちゃん】

【ダメだ、もう見てらんない】

【俺も……】

【苦しい】

【あんな幼女がつらい場面なんて】

【誰か……誰か、なんとかならないのか……】


「――私、行きます」


「許可は――」

「たとえ飛び込んですぐに死ぬとしても、私は行きます。 帰ってきて――死刑とかになっても、行くんです」


理央は、泣きはらした目を拭きながら、立つ。


「それで柚希先輩を助けられる可能性があるのなら。 助かって、その後にどうなるとしても」


周囲で、どうにか止めようと試みる協会の人員たち。

けれども彼ら彼女らは、その気迫に思わずで後ずさってしまう。


――内心では、分かっていたのだ。


彼ら彼女らだって――人を救う仕事である以上、むしろ理央よりもその気持ちが、ずっと強いから。


「……では、パーティーメンバー全員で。 そうですね?」

「……うんっ! そうだよねっ!」


理央の左右。


先ほどまでは理央を止めるように抱きしめていた2人が、武器を手に取り、理央の手を取る。


「ふたりとも……で、でも、緊急時に協会の人とかの命令に逆らったら」


涙が増えた理央が、ふたりの顔を交互に眺めていたとき――後ろから、聞き慣れた声が届く。


「――――あまりに数が多ければ、協会の人もそこまでの罰にできないんじゃないかな。 こういうのは本当は良くないけど、人の命と規則と、どっちが大切なのか……普通に考えたら、分かるよね?」


「だよねだよねー」

「ユニコーンの柚希姫ちゃんたちに加えて、私たちも加わったらねぇ」

「ほんと、ゆうったら1回決めたら聞かないんだから。 ま、だからパーティー組んでるんだけど」

「まー、普段品行方正してたし、なんとかなるでしょ」


「……優さん……みなさん!」


装甲車から出たところで、そう声をかけられた理央たち。


そこには――軽く汗をかいていることから、恐らくは全力で来てくれただろうと分かる、優たちが居た。


完全武装の、期待のルーキー。


柚希たちとは違い、地道すぎる努力で信頼を勝ち取ってきた――そして、柚希たちの「仲間」が。


【これはイケメン】

【イケメン……!】

【きゅんっ】

【これはときめいてもしょうがない】

【こういうことするからイケメンなんだよ】

【良いイケメン】


【さすがにもうアンチはやめるだろ?】

【ああ、このときばかりは美女ばっかのハーレムも……やっぱ許せん!】

【草】

【お前……】


「君たち3人に加えて、俺たち5人。 ……それに」


「ユズちゃん親衛隊、とうちゃー……あ、ちょっと待ってわき腹痛い」

「待ってぇー、まだ防具装着できてないのー……」


【草】

【誰だこの子たち】

【あ、親衛隊だ】

【この前の握手会の】

【割と初期から、ユズちゃんを探す配信とかに現れてた学生たちか】


【えっと……多くない?】

【何人よ、これ……】


装備もばらばら、服装もばらばら、さらにはダンジョンの適性の有無もばらばらでレベルもばらばらな学生たち。


それが――見回しただけでも100人ほど。


いや、遠くから自転車やバイクで向かってきているのが見えているのも含めると、その数倍。


「ユズちゃん親衛隊、その新人兵力、さらには下級生と卒業生……とりあえずで1200人も突撃しまーす!! あ、もう1時間すればさらにその倍は来る見込みでーす!」


【ふぁっ!?】

【えっと……3600人!?】

【多過ぎぃ!?】

【でも……すごくない?】

【ああ……!】


【そっか、ここはユズちゃんの家の近くだから……】

【学校の知り合いたちが】

【え? てことはやっぱ高校生なの? ユズちゃん】

【バカ、地元の知り合いだって言ってるだろ】


【そうだぞ、良くて中学生なんだぞ】

【お前の目は正常じゃないようだな】

【草】

【ひどすぎるツッコミで草】


【なんか今コメント見れない】

【ああ……】

【ちょっと手元がぼやけててな……】

「男の娘をもっと見たい」「女装が大好物」「みんなに姫扱いされる柚希くんを早く」「おもしろい」「続きが読みたい」「応援したい」と思ってくださった方は、ぜひ最下部↓の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】に&まだの方はブックマーク登録で最新話の通知をオンにしていただけますと励みになります。応援コメントやフォローも嬉しいです。

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― 新着の感想 ―
[一言] ユズちゃんが駄目になるかどうかの瀬戸際なんだ、やってみる価値ありますぜ!
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