表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
175/486

175話 「ユズちゃん親衛隊」

「この中で高校卒業後の進路決まってない人ー?」

「「「「はーい」」」」

「ダメな先輩たちですねー。 でも、良い情報があります!」


時間軸は、少し前に戻る。


その日、柚希のクラスメイト全員は……教卓に理央を招いていた。


「みなさん、柚希先輩の快進撃はご存じかと思います」


「そりゃあもう」

「油断するとコメント欄が映っちゃうくらいに」


「え、ちょうちょだって?」

「ぶふっ」

「戻って来てくださーい」


元から仲の良かったクラスメイトたちは、今や欠けている1人のおかげで盤石な絆を結んでいる。


「それで? なんかいい仕事先あるの理央ちゃん」

「はい! 私が雇います!」

「年下の女子に雇われる……?」

「何それ素敵」


彼らの前でいつも通りに元気な声を出す理央は、柚希の次に人気のアイドル。


ただし、どれだけがんばってもアイドルを攻略できない系アイドルとして。


「みなさん、柚希先輩のボディーガード。 やりません? お給金は……このくらいです」


かかかかっ。


黒板へ、綺麗な字が並んでいく。


「放課後に3時間くらいを交代で。 休日のシフトはもちろん割り増しで。 みなさんの無理のない範囲で……ひとまずとしてこれくらいはご提供できます!」


「理央ちゃーん。 大盤振る舞いだけど、大丈夫ー?」

「大丈夫です! このまえの柚希先輩のがバズって、すごいのが入って来たので!」


「それを、卒業後も……ってことか?」

「そういう選択肢もあるってことです! あと、すでに『とあるツテ』を手に入れたので、高卒でもなんでもお仕事もらえる約束、して来ました!」


ざわっ。


クラスが、轟く。


「……それ、ダンジョン潜りじゃなくても……?」

「もちろんです! 柚希先輩のボディーガード……親衛隊は、各所連絡の内勤も必要ですし、私たちの配信のモデレーターも必要ですから!」


「配信のお手伝いする……ってこと?」

「正直、ここまで一気に有名になっちゃって……ヘタに人、募集できないんですよ。 どんな人が来るか分からないですし」


「確かにそうか」

「あれだけバズって、一気に全国ランキングに食い込んでたからなぁ」

「知らない人だと、どんな人か分からないもんね」

「田舎だからこそお互いに何でも知ってるんだもんなぁ、俺たち」


それなりな田舎の高校2年な彼ら。


大学に行く余裕もモチベーションもなく、そのまま卒業する前に面接して近くの会社に就職しようと考えるか、ダンジョン潜りになれた以上には個人事業主な日銭稼ぎのダンジョン配信者にでもなるか。


そうとしか考えていなかった彼らにとって、理央の提示している――黒板に小さく書かれた『ひなたちゃんのとこ』という情報は、それはもう何よりのもの。


「つきましては、メインは柚希先輩の警護っていう任務のために、希望者には外勤、内勤それぞれに訓練を受けてもらいつつ――親衛隊として、柚希先輩の引退までをお願いしたいと思うんです」


理央が全員に転送したのは、彼女たちのアカウントでの収益。


「うわっ……」

「すげぇ」

「これ、たったの4人で……?」


「柚希先輩っていう1番の稼ぎ頭の警護ってことで、パーティーの費用として使えるのがこれくらいです。 増やそうと思えば、もっと……ふふっ」


田舎の、スキルなしの高校生にとっては破格の日当なバイト。

さらには、希望すれば卒業後の就職先も面倒を見てくれるという。


その依頼主は彼らのよく知る年下の女子で、その依頼対象は彼らのクラスメイトで――つい最近までは、友人として護るべきだけだった対象。


「強制はしません。 けど、もし」


理央は、もはや決定した雰囲気を盤石にするための言葉を発する。


「今、バイトと研修の方だけでも受けてくれるのなら――配信の最上位メンバーとしての特典もつけちゃいます」


その瞬間――そのクラスで発せられた歓喜の声は校舎を貫通し、学校の敷地外まで轟いたと言う。





今日は理央ちゃんが珍しく来てない。

しかも、あやさんもひなたちゃんも。


だから、なんとなくで駅前にでもぶらぶら散歩しようって思って家を出たら……なぜかクラスの人が何人か来てた。


偶然通りがかった男子とか、今日野菜収穫があるって間違えた女子とか。


することもないしって、みんなで駅前に遊びに行くことにした。


昔と違って、僕もこういうのに参加できてちょっと嬉しい。

前だと僕、買い食いすら付き合えなかったからねぇ……。


『ユズちゃん出撃す。 各自状況を知らせよ』


『100メートル先OK』

『200メートル先もOK』

『1キロ先、問題ありません』

『目的地周辺、不審者は通報済み』

「OK」


『あー、ファンっぽいのが数十人うろうろしてますけどどうします? お巡りさん? それとも理央さ……ちゃんの名前使います?』


『今日のユズちゃんは?』

「おまんじゅうちゃんアンドチョコちゃん装備」

『なら大丈夫か』

『それなら、事前に知らせてくれるか?』

『了解』


「? どうしたの?」


「いやな、駅前に他のヤツらも来てるって」

「あ、そうなんだ」

「せっかくだから合流しよっかって。 どう?」

「もちろん」


みんな、学校がないからか随分と遊んでるね。


まぁクラスの人の半分ちょいはダンジョン潜りで臨戦態勢とは言っても、残りの半分未満は一般人だし。


臨戦態勢も、ずっと続けば多少は遊ばないと持たないもんね。


『ユズちゃんは?』

「ちょうちょ」

『OK』

「たまーにうわの空じゃないときがあるから気をつけないとね」

『ユズちゃんの興味を惹くものがあるとな』


「きゅ」

「おまんじゅう、ちょっと重くなっちゃったねぇ」

「きゅい」


今日も抱っこして歩くおまんじゅうは、最近のドカ食いで大きくなったし重くなってる。


……まだまだ届かないけども、見た目は冬毛のあざらしみたい。


「くふっ」


「    」


「こちら担当班。 1人補充を頼む」

『了解』

「今日はご機嫌だ」

『なるほど、耐性ある子向かわせるね』


腕の中でもぞもぞしてるおまんじゅうが、なんだかくすぐったい。


そんな、気楽なある日の午前。


僕は、のんびり――これもまた久しぶりに、することのない学生らしくうろつくことにした。

「男の娘をもっと見たい」「女装が大好物」「みんなに姫扱いされる柚希くんを早く」「おもしろい」「続きが読みたい」「応援したい」と思ってくださった方は、ぜひ最下部↓の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】に&まだの方はブックマーク登録で最新話の通知をオンにしていただけますと励みになります。応援コメントやフォローも嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] おまんじゅう、あざらしみたいってお前…馬、なんだよな…?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ