148話 おしゃけで変なみんな
「柚希さん……」
「あやさん?」
ひなたちゃんが、ぎゅって服をつかんできて話しかけてきてたところに……反対側から、あやさんが。
「……柚希さんは、どうしてこんなにも優しいのでしょうね……」
「あやさんの方が優しいって思いますけど」
「純粋で、私欲がなくて……私なんか、私なんか……」
「そんなことないですよ。 それ言うならあやさんの方が純粋だって思います」
ひなたちゃんが体重預けてきて傾きそうになるのを、反対側から支えてくれてるのがあやさん。
……背の高さが違うから……うん。
僕のあたまにあやさんのほっぺたが、僕の首筋に彼女の両腕が。
それで、僕の肩に。
ぽつぽつ話しかけてくるけども、やっぱり眠そう。
お酒って眠くなるんだね。
「……柚希さん……」
「ほら、髪の毛顔にかかってますよ」
【●REC】
【あやお姉ちゃんが】
【しなだれかかってる……】
【髪の毛がユズちゃんに……】
【やらしい】
【これがやらしくないとでも?】
【良かったねあやちゃん……お酒のクセ、知っといて……】
【ああ……】
【多分心許してる相手だけだろうけど、それでもここまで甘えるとは……】
【静かに甘える感じ……良いよね……】
【いい……】
【こんなおっぱい乗っけられたら、男相手だったろろろろろろ】
【ろろろろろろろ】
【草】
【気持ちは分かる 分かる】
【こんな美人さんが甘え酒か……護衛がいないと危険すぎるな……】
【鋼の意志持ってる紳士だったとしても、男なら耐えられないもんなぁ……】
【長髪控えめ美人高身長おっぱい ムリだな】
部屋の中には、お酒の匂いが充満。
お母さんがたくさん飲んだときみたい。
そういえば、最近はちょっと元気なくなったけども、その前は結構飲んでたみたいだしなぁ。
……僕がバイト減らしてるのにお金が入ってくるようになったから、お酒っていう嗜好品も買って、僕の前で飲めるようになったんだろうけども。
飲んでるのも、スーパーで置いてるでっかくて安いのじゃなくって、何度も「いいの? いいの……?」って聞いてから買ってた、ちょっといいやつだし。
一升瓶ってやつだよね。
「コスパが良いから」って、大きいの買って、ちびちび飲むんだよね。
……そうか、これが甲斐性ってやつ。
好きな人に好きなだけ好きなことを、させてあげたいっていう感覚。
こくり。
「……おいしいのかなぁ、これ。 僕は、普通のジュースの方が好きだなぁ」
【分かる】
【だよなぁ】
【お酒好きじゃなければそういう感想よね】
【まぁまだおこさまだし……】
【むしろユズちゃんがいちばん素面に近いのが新鮮】
【確かに】
【この中でひとりだけ顔が赤くなってないもんな】
【いや、結構なってるぞ】
【でも、他の子たちよりは……】
【相対的には全然赤くないよね】
【っていうか、普段よりしゃきっとしてるんだけど……】
【ひやひやしたけど、1番ひやひやしてたユズちゃんが1番の安牌っていうね】
【安心して良いのか、がっかりして良いのか……】
【ひと舐めで魔族のときみたいになるって思ってたわ】
【俺も】
【草】
【あれはすごいものでしたね……】
【ああ……】
【アレを超える酔いっぷりはしないだろうから安心できるな!】
【え? でもユズちゃんがおねむになったらまたああだよ?】
【おしゃけって、眠くなるのよ?】
【もうだめだ……】
【草】
ちょっとほわほわするけども……それだけ。
眠くなるだけじゃ、あんまりおもしろくないもん。
大人って、何でこんなのが好きなんだろうね。
「……むー、ゆずきしぇんぱいだけげんきー」
「あー、ほんとだー、いけないんだー」
「柚希さん……いけませんねぇ」
お酒でほわほわする感覚でぼんやりしてたら、なんだか圧を感じる。
ぐっと意識を持って視線を落とすと……あれ。
「3人とも……どうしたの?」
【ガタタッ】
【これは……まさか?】
【伝説の……?】
【ああ……】
【お酒を呑んでいるという状況……しかも初めてでしょうそれで意識は朦朧とし、理性はタカを外され、普段は秘めつつ隠してきた気持ちが露わとなり】
【視線を移すと、想い人や気になっている相手という存在を、はっきりと感じ、お互いに精神的ハードルは下がり】
【その総受けの存在は頬を紅潮させ、分からないながらも身を任せつつ、嬉しそうにペットを愛撫している】
【その姿はまるで女神 または、精霊】
【美しくも儚く、だからこそ乙女の心と体は火照っていき】
【そんなものを見てしまった乙女たちは、衝動のままに……】
【お嬢様! 百合お嬢様方!!】
【唐突に官能小説へいざなうのは止めてくだされ!】
【BANされるから! さすがにBANされますから!】
【いきなり濃い文章が流れて来て俺困惑】
【草】
【唐突な官能小説は草】
【センシティブ! センシティブです!】
【長文が流れ始めたと思ったらこれだよ!】
【やっぱこの配信はなぁ……】
【ま、まあ、ダンジョン配信が軒並みおだぶつなところに、唐突なJS~JKの飲酒配信だから……】
【同接、やっぱいつも通りよね……】
【ユズちゃんの配信だからね】
【ユニコーンの末裔とぽんこつお嬢様 お似合いでは?】
【えっ……】
【申し訳ありませんけれども……】
【それは少しばかり……】
【非常に申し上げにくいのですけれども、生理的に……】
【わたくしたちだって、好き嫌いはございますの……】
【ひどくない!? 泣くぞ!?】
【草】
【思いっきし拒否られてて草】
【丁寧に拒絶されてて草】
【おろろろろろろ】
【ああああああ!】
【草】
【阿鼻叫喚で草】
【まぁ、そうなるな】
【いつもの】
【嫌ならもう少しユニコーン度を下げろ な?】
【ユニコーン度て】
【草】
【末裔度では?】
【どっちでも変わらないがな】
【いいじゃん、どうせ俺たちはユニコーンが好む女の子たちしか好きになれないんだ……】
【そうして末裔は末裔のままで末代になるの?】
【 】
【 】
【 】
【 】
【 】
【むごい】
【悲しすぎる】
【その言葉はひどすぎない???】
【末裔様方を酷く言うのはお止めくださいませ!!】
【え? じゃあその末裔たち、パートナーにできる?】
【……人にはできることとできないことがありますわ!】
【0に何を掛けても0なのですわ!!】
【草】
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