141話 パジャマパーティー配信
【ん?】
【なんだ?】
【まーたユズちゃんのゲリラ配信か】
【ユズちゃーん、配信流れちゃってるー】
【いつものか】
「はーい! みなさんこんばんわー!」
【!?!?】
【いつものじゃない!?】
【理央様!?】
【パジャマ……だと……!?】
「今日はなんと! 4人でパジャマパーティーするので配信しまーす!」
だって。
配信。
僕、今聞いたけどね。
「なんかね、りおちゃんが急にしたくなったんだって!」
「……湯上がりですし、整えることもしていませんから……恥ずかしいです……」
【What?】
【今なんて?】
【朗報・お風呂上がりパジャマパーティー開幕】
【マジかよ】
【理央様愛してる】
「え、結構です。 私、柚希先輩一筋なので。 ですよね、せーんぱい♥」
よく分かんないこと言ってすがり付いてきた光宮さん。
「え?」
「聞いててくださいよぉー!?」
多分こういうのも配信でのウケ狙いなんだろうね。
普段だったら、ここまで正面から抱きついて来ないし。
【草】
【ユズちゃん、ほんと理央様だけにはガチで塩だな】
【幼なじみ過ぎて会話とか聞き流しちゃうかー】
【あー】
【理央様、いつもしゃべってるからなぁ……】
【ちょうちょ状態のユズちゃんには負荷が、な……】
【まずは注意を引くところからだな!】
【そしてユズちゃんの思考回路に合わせるんだ!】
【草】
「離れてね理央ちゃん」
「そんなぁ!」
「暑いもん」
「私は柚希先輩にお熱です!」
「はいはい」
「ほんとですってばー!?」
いつも冗談ばっかの光宮さんだから、いつも通りに軽く流してぺりって剥がしてあげる。
【理央様……】
【完全に袖にされておる】
【おお、もう……】
【これが……これが全力なのに実らないという、噂の百合……!】
【相手が完全天然だからな、どんだけアピっても意味ないぞ☆】
【かわいそう】
【でもさ、かわいそうなのがかわいい だろ?】
【そうかも……】
【不憫かわいい】
【理央ユズが完成するのはいつですか??】
【理央様がユズちゃんを襲えたら……かな……】
【ムリでは?】
【ムリだな】
【可能性は0%だな】
【0に何を掛けても0だよな】
【草】
【ひでぇ】
パジャマパーティー。
何故か急に今日決まって今日連れて来られた、ひなたさんとあやさんのアパートの、ひなたさんの部屋。
光宮さんが急に思いついて、あやさんたちも用事がなくって、さらにお母さんもご近所さんに見ててもらえることになったからって……着替えの下着とパジャマとかだけ持っての移動。
さすがに徒歩15分くらいの近場じゃお迎えはないらしく、僕たちは普通に歩いて駅前へ。
まぁこんなド田舎のなんもない道でモンスターに遭遇するようなことになってたら、その時点で護衛とか言ってる場合じゃないし。
で、夕食の食材とかジュースとかその他いろいろを、迎えに来た2人と一緒にああでもないこうでもないって買って。
夕飯を、みんなで作って。
お風呂にも――光宮さんを何とか追い出して、入って。
ひなたさんもあやさんも入って来ようとしたのを追い出して。
で、ぼーっとしてたら……なんか始まってたんだ。
【あ! ひなたちゃんが髪の毛下ろしてる!】
「えへへー、気が付いてくれたぁ」
「普段はツインテールですものね」
【かわいい】
【かわいい】
【普段髪の毛結ってる子が下ろしてるのって……良いよね】
【いい……】
【ああ……】
【お前ら、ひなたちゃんは小学生だぞ?】
【だから良いんじゃないか】
【うむ】
【しかしあやちゃんも……】
【ああ……】
【何がとは言わないが……】
【大変に良い】
【かわいい】
【美しい】
「ほら、あやちゃんも褒められてる!」
「……は、恥ずかしいですよ、やっぱり……」
この中で1番印象の変わるのは、やっぱりひなたさん。
普段はぴょこぴょこしてる髪の毛が、今はしとっとしてるのもあるね。
あやさんは……うん、元から恥ずかしがり屋さんだし、なによりパジャマって体のラインが見えるから……うん。
あと、髪の毛がしっとりしてるから、すごく大人っぽいね。
あのお姉さんな教官さんみたいな雰囲気あるもん。
「柚希先輩! 私のパジャマ姿!」
「え? あ、うん、いつものだね」
ぐりんって肩を掴まれて向いた先は、いつもの光宮さん。
どっちかの家にお泊まりするときの、いつものパジャマだ。
ちなみに光宮さんは、なぜかこういうときにブラジャーしてないんだ。
なんで?
おまけにやたら抱きついてきたりするし、「おっぱい揉みます?」って聞いてくるし……揉まないよ。
あ、でも今日はさすがにしてるね……良かったぁ。
露出に目覚めたんじゃないかって、実は心配だったんだ。
「感想は!」
「かわいいんじゃないかな、うん」
「感情が込められてません!!」
いや、だって週に2回は見るし……。
【草】
【ああ、幼馴染みヒロインが負けるのってそういう……】
【なるほどな、新鮮さが皆無なのか】
【パジャマ姿、風呂上がりでも無反応のユズちゃん】
【理央様はめっちゃ反応してるけどな!】
【鼻息荒いけどな!】
【ユズちゃんのこと、すぴすぴ嗅いでるけどな!】
【草】
【り、理央様だから……】
【理央様……そのアピ、効果ないのよ……】
「で?」
「はい!」
「これから何するの?」
「考えてません!」
「えー……」
【草】
【もしかして:理央様、考えなし】
【理央様は勢いで生きてるから……】
【もっと策を練らないと想いが届きませんわ理央様!!】
「でも、とりあえず」
光宮さんが、僕の配信用のカメラの――今は定点モードだ――角度を変えて、4人が映るように。
「私たち。 この前大変でしたけど、とりあえずこんなに元気ですって! ね?」
「……うん! ひなたも元気です!」
「私も……あの、やっぱりカーディガンを……」
……そっか。
そうだよね。
僕たち、みんなに応援してもらってたんだもんね。
「……僕も、元気です」
だから、ちゃんとお礼もしなきゃね。
「ほら、おまんじゅうとチョコも……2人とも、ひっくり返ってないでカメラ見て?」
「きゅひひひひひひ……」
【草】
【ああ、なーんか端っこに見切れてる、白くて蠢いている物体があると思ったら】
【やーっぱユニコーンだったよ】
【いつものセミスタイルは今日も完璧だな!】
【草】
【やめて、セミスタイルやめて】
【おなかいたい】
「ぴぴぴぴぴぴ……」
【なんかシルバースライムも伝染してない?】
【してるな】
【君だけはまともなモンスターで居てほしかったのに……】
【おまんじゅうちゃんのこと、先輩って思ってるっぽいから……】
【あー】
【マネしてるのかぁ……】
【教育に悪すぎて草】
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