138話 月岡さんたちが来た
月岡さん――優さんが謝りたいって連絡があってから、数日。
「そんなのいいです」って何回言っても聞かなくって、結局来ちゃうらしい。
今朝になって「ご都合が悪くないなら今から行きます」って連絡があったもんだから……光宮さんを呼んで、しょうがなく待ってて。
あやさんたちは、用事が入っちゃってるとかで、来れなくって。
で、いざ玄関に行ってみたら優さん……と、そのパーティーの女の人たち全員が、両腕にいろんなデパートの紙袋をぶら下げて待ってた。
「まず、非礼を詫びさせてください。 俺……いえ、私が嘘をついて――」
「いえ! おかげで助かりましたし!」
「そうですよ、僕だって……なんでもないです」
大学生の大人の人たち全員が頭を下げている光景は、なんだかものすごくそわそわして困るもので。
「しかも結局役に立てず、柚希さんたちを危険に晒して」
「え、いや、あれは誰が護衛でもしょうがないんじゃないかなぁって……」
「そうですよ。 魔族?でしたっけ……僕が寝ちゃってたのを、守ってくれてたんですよね?」
ずっと頭を下げている5人。
彼女たちは、そうして光宮さんといくら言っても頭を上げてくれなくって。
「だから――」
「……ゆず?」
「あ、お母さん」
玄関先で大声出してたからか、お母さんが廊下に顔を出してくる。
決して大きな声じゃないけども、その声でしんとなった廊下には、その声がよく響く。
「ごめんなさいね、みなさん。 こんなところからで」
「え、いえ……」
多分パジャマだからか、顔しか出してないお母さん。
でも、家主の大人が出てきたからか、優さんたちはきょとんとしていて。
「今日は暑いですから。 せめて、リビングで休んで行ってくださいね」
「えっと……は、はい……」
「いい……のかなぁ……?」
「でも……」
「私は、そうしてくれると嬉しいかなぁ。 柚希の、お話相手になってくれたら……ね?」
さすがはお母さん。
最近は弱ってるとは言っても大人だ。
有無を言わさない、けども優しい言い回しで……まるで、家に来た僕の友達に話しかけるようにして。
「……ゆう。 上がらせてもらお」
「ですね。 お邪魔しまーす」
「あ、ちょ……」
それで表情を切り替えた、優さん以外の4人が――優さんを引き連れて、ようやくに上がってくれた。
◇
「改めて……申し訳ありませ」
「優さん」
案内した先で、テーブルに着いてくれた5人。
また頭を下げそうだったから、先に僕からも言っておく。
「ありがとうございました。 僕たちを、守ってくれて」
「いえ、でも」
「僕たち、優さんが居なかったら……どうしようかって、困ったまま大変なことになってました」
「ですよねぇ。 あの廊下でも、優さんが居なかったらやばかったですし」
「で、でも」
「あのダンジョンがおかしかったのも、多分魔族のせいだってことです。 ……魔王軍幹部を、単独で撃破できたとは言っても。 柚希先輩が特効だったとしても、その柚希先輩が動けるようになるまで守ってくれた優さんです、感謝しかしてないんですよ? 私たち4人全員」
僕が特効。
……結局、どうやって倒したのか教えてもらえないんだよなぁ……。
「ですよね?」
「うん。 あ、はい、そうなんです。 とっても感謝してます」
光宮さんがそうたたみかけると、頭を下げようとしたまま困った顔つきで固まってる優さん。
「……ゆう、ここまで年下の子に言わせるのは」
「ねぇ……?」
「気にしないんだって言ってくれてるんだから。 ね?」
「……うん」
「謝りに来たのに気まずくさせるの良くない。 それに」
周りの人たちも……みんな控えめだけど大人っぽいお化粧してて綺麗……僕たちの味方らしい。
「謝るとしたら、よ?」
その中の1人が、いたずらっぽくにやりとして。
「そろそろ始まるって分かってたのに、よりにもよってダンジョン配信だってのに。 朝、寝坊して、出かける前にポーチを丸ごと忘れちゃって。 で、察してくれてたそこの子……柚希ちゃん?よね? ……に」
「あ! そーそー、脱がしてもらってつけてもらうまでした、そっちでしょ?」
「え……あっ」
がばって優さんが僕を見て――真っ赤になって、もっと縮こまった。
「………………………………」
……なんだか、そう意識すると途端に恥ずかしい。
「あはは……柚希先輩、においに敏感なので……小さい頃からずっと……」
「幼なじみの百合君が言うんじゃ、ねぇ」
「そういう子、クラスにも居たっけなぁ」
………………………………。
女の人ばっかりに囲まれて、こんな会話になるのはとっても……あ、いや、別に学校行ってたとき、女子に囲まれてたからあんまり変わらないか。
そう思うと恥ずかしさもどっかへ行っちゃう。
「きゅ、きゅひぃぃぃぃ……!」
「やー、かわいー♥」
「本当にぴくぴくしてるー!」
「ぴ?」
「……すげぇ……普通なら一瞬で逃げちゃうのに……」
「こんなにメタリックなんだねぇ」
優さんほどには気にしてないらしい他の4人は、さっさと……さっきからずっと愛でられてる2匹に夢中。
……おまんじゅう、吸わないでね?
絶対だよ?
いや、この人たちじゃ「やーん♥」とか笑って流してくれそうだけど、見境なしはダメだよ?
吸うんなら僕のだけだよ?
良いね?
最近は両方ともぷくってなっちゃってるくらい腫れてるんだ、どうせなら君が吸うのは僕のだけにしてね?
「男の娘をもっと見たい」「女装が大好物」「みんなに姫扱いされる柚希くんを早く」「おもしろい」「続きが読みたい」「応援したい」と思ってくださった方は、ぜひ最下部↓の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】に&まだの方はブックマーク登録で最新話の通知をオンにしていただけますと励みになります。応援コメントやフォローも嬉しいです。




