136話 引っ越してきたあやさんとひなたさん
「え。 あやさんとひなたさんが?」
「そうなの! お父様が心配だからって!」
「協会からの指示で、パーティーメンバーはなるべく近くに居るように、とのことですから……」
僕の家に1番近い駅の近くにあるファミレス。
チェーン店を微妙に劣化させた感じの個人経営な店舗が味で、料理の味もお値段もだいたいそれなりなお店。
そこに、ひなたさんとあやさんが来ている。
こんな田舎には似つかわしくない2人が。
「そっか! なら2人とも、しばらくはご近所さんですね! あ、でも、言ってくれたら家に泊まっても良かったのに」
「いえ、それはさすがに悪いですから」
「今回のは何日、何週間とかって分からないんだって。 だからね!」
ぴこっとスマホに届くメッセージ。
「ひなたたち、このマンションのこの部屋借りてるから! 何かあったら言ってね!」
「ふ、古いとはいえ、広いマンションの1室を……ひなたさんの伝手とはいっても、さすがにこれは……」
そう渋るあやさんに、ずいっと顔を近づけるひなたさん。
「これは、パーティーで必要なことだから必要経費。 パーティーのだから、なるべく安くしたいの。 で、ここはひなたの知り合いの人のとこで、知り合いだからってお安いの。 ……これならいいでしょ? きょーつー経費を4人で割れば、もっと安いし?」
そうしてちらっと僕の方を見ると、ぱちっとウィンクしてくるひなたさん。
「……この前の先輩の。 しっかり意識してますね」
「……うん。 良い子だね」
僕たち4人はなるべく近くに――もし町にモンスターが襲来したら、すぐに合流しなきゃならない。
けども、僕たちの家は結構離れてる。
だから――ひなたさんとあやさんが、ここの駅前のマンションに仮住まいで待機ってことらしい。
「ゆずきちゃんはお母さんの介護があるって言ってたし、りおちゃんもゆずきちゃんちのすぐそばだって言ってたから!」
「……ん、ありがとう」
ひなたさん。
本当に、良い子だね。
「お母さまのお加減は……?」
「……ちょっと落ちてます。 けど、普段から比べると、これでもまだかなり良い方なんです」
この前からだんだんと、「あり得ないほどの元気さ」は消えてきてるけども、それでも10分20分散歩できる程度の体力は残ってるらしい。
「きゅっ」
「おまんじゅう、チョコ、大丈夫だって?」
「きゅっ!」
いつ、モンスターが――魔王軍ってのが来るか分からない状況。
だから僕は、お母さんを守ってくれるよう、チョコにお願いしてある。
確かにおまんじゅうは、強い。
けども、こと、守るだけならチョコの方が確実だから。
で、おまんじゅうとチョコは、どうやら離れてても意思疎通できるみたい。
だから、何かがあったらすぐにおまんじゅうが言ってくれるはず。
僕は、そう信じてる。
「テイマーの人って、モンスターの感情とかが分かるんでしたっけ」
「うん、だからチョコが『危ない』って思ったら、僕も分かるらしいんだ」
「テイマーさんってすごいんだね! ゆずきちゃんもすごい!」
「ええ、本当に一心同体なんですね」
「きゅ!」
何となく褒められてるって分かったのか、僕の腕からぴょんっと飛び跳ねて――ぽいんっとあやさんのお胸にトランポリンのように飛び乗るおまんじゅう。
「あら、元気ですねぇ」
「かわいー♥」
……吸わないでね?
ダメだよ?
いくら吸い心地良さそうで母乳でそうでも、あやさんは子持ちとかじゃないからね?
僕のおっぱいみたいに吸わないでね?
絶対だよ?
「けど、そんなに早く引っ越しってできるんですか?」
「最小限の荷物だけで、あとはマンションに家具などが……もう、甘えん坊さんですね」
「きゅ……きゅひ……!」
「ひなたも、普段着の着替えにお勉強道具、あとは石鹸とか……それと、ダンジョンの装備だけだから!」
「お部屋は隣ですので、お昼と夜は私が料理するんです。 おふたりも来てくださいね」
「きゅ……きゅひぃぃぃ……!」
なんでも、料理できるらしいあやさん。
「ひなたさんのように凝ったお料理はできませんけど……」って言ってたから、多分ひなたさんもできるんだろう。
「……柚希先輩もお料理できます!」
「え? あ、うん、でも理央ちゃんの方が上手じゃ」
「あ! じゃあ今度、みんなでお料理しようよ! 絶対楽しいし、おいしいよ!」
「良いですね。 ……もし良ければ、お泊まり会とかも……」
「わー! 2人のお家も見たいですし、ぜひぜひ!」
「え……あ、うん……」
きゃっきゃっと楽しそうな3人。
僕も、思わず嬉しくなっちゃったけども。
――僕、男じゃん……さすがにダメだよ、女の子3人とお泊まり会だなんて……。
そもそも僕、まだ男だってこと言えてないし……いや、もはや言える状況じゃなくなってるし。
……やっぱ、最初に言っとけばなぁ……まだがっかりされるのがちょっとだけだったのになぁ……。
「パジャマパーティーだね!」
「そうですね。 私、こういうのは初めてで……」
「良いじゃないですか! 私たち、4姉妹ですし……」
「………………………………」
……でも。
友達ってくくりでなら……いい、のかな。
うん、僕は理央ちゃんからも……お風呂でさえ男って見てもらえないんだ、仮に男だってばれたとしても。
男性恐怖症なあやさんは怒るだろうけども、それでもきっと、なよなよしくて女々しいからきっと、そこまで怒らないでくれるんだ。
「きゅ、きゅひ……!」
僕は、あやさんのお胸に挟まれて、さらにおなかをひなたさんに撫でられて微振動しているおまんじゅうをぼんやり見る。
……君は良いよねぇ、おまんじゅう。
そうやって女の子に囲まれて楽しそうでさ。
――君だって、雄なのにさ。
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