108話 大部屋で休息、僕は夢の中
「すー……すー……」
「……柚希さん、汗だくになるまで魔力を……」
【すやすやユズちゃん】
【がんばったもんね】
【今は休んで……】
【マジでがんばったからなぁ】
【けど……汗で髪の毛が顔に張り付いてるのが……】
【正直……なぁ……?】
【いけない……こんなおこちゃまに抱いちゃいけないんだ……でも……】
【普段はぽわぽわしてるロリっ子の、疲れ切った姿って……】
【お前ら……】
【しょうがないよ、男だもん】
【淑女でもなりますわ 魅力的ですもの】
【お嬢様がそうなら仕方ない】
【大丈夫? それ、エセお嬢様じゃない?】
【わたくしは本物ですわ!?】
【草】
【そういやそんなやつら居たの思いだして草】
「私は魔法、ほとんど使えないので分からないんですけど……こんなになっちゃうんですか?」
「……食あたりと徹夜と車酔いの状態で細かい操作をしているような感じだと聞くね……とても、辛いと」
「うわぁ……何となく想像できるだけに……」
5人が駆け込んでから10分になる大部屋。
その空間は、完全に安全地帯となっていた。
【魔力切れはキツいぞー】
【キツい 吐くレベル 吐いた】
【酒吞みすぎて吐きたいのに吐けないぎりぎりのレベルって言えば大人には伝わるか】
【飲み会でやらかして、でも吐くのも漏らすのも我慢するしかないあの状況だぞ】
【うげぇ】
【おろろろろろ】
【もらいゲロ止めろぉ!?】
「……でも、モンスターが1匹もポップしないなんて……俺たちが居るから、減るだけだと思っていたけど……」
「そういう部屋……だと思いたいけど……あやさん?」
「はい……意識が途切れかけていたので、もしかしたら違うかもしれませんけど……ユズさんとおまんじゅうちゃんが……」
「ねー、モンスターがポップするとこって見えるの?」
「いや、見えるという話は……」
【見えるの?】
【しらない……】
【んにゃぴ……】
【ああ! 新事実が判明しそうでかわいそうなことになりそうな研究職か何かが!】
【おろろろろ】
【ああ! しばらく缶詰が確定して発狂しかけたどっかの官僚が!】
【草】
【この配信もずいぶん人が増えたな】
【そらそうよ……】
【だってユズちゃんだよ?】
【ユズちゃんだもんなぁ】
【大体何かしら事故るユズちゃんとしても有名になっちゃってまぁ……】
【テイマー+貧乏少女+ユニコーン+ロリ+ちょうちょ+シルバースライム……まだまだあるぞ!】
【属性しかなくて草】
【だってユズちゃんだもん……】
念のためにと、疲労が1番少ないひなただけが立って番をしているものの、モンスターが浮き出てくる気配はなく……全員が体と神経を休める時間が稼げている。
「月岡さん……その、血……」
「…………内臓までは、行ってない。 嘘をつくほどじゃないし……そこまで行ってたりしたら、出血多量とかで血圧が下がって、リストバンドで強制送還だからね。 結構ダメージは受けて血が出てるけど、まだまだ大丈夫」
からんっ、からんっ。
そもそものレベルと体力のある月岡が、部屋を回って結晶やドロップの回収をしている。
「せっかくだからね」……と、他の誰もからはやせ我慢にしか見えないことをして。
もう、「胸からズボンにかけて」血の赤いシミが目立っているためマントで隠すこともなくなった優は、少しでもできることをと動き回っていた。
【月岡……】
【イケメンだハーレムだ言ってごめんよ……】
【チーレムの王とかな……】
【これだけ平気そうだから本当に無事なんだろうけど】
【仮にやせ我慢だとしたら、男として応援せざるを得ないな……】
【まぁお前が、お前のパーティーの女の子たちコマしてるのは事実なんだけどな!】
【月岡ぁ! ユズちゃんたちはダメだからな!】
【そうだぞ! ユズちゃん総受けなんだからな!】
【百合淑女一同からお願い申し上げますわ!】
【草】
「あはは……分かっていますよ。 大丈夫です、俺、今はそんな余裕ないですから」
広い部屋、拾い通路の入り口。
そこは、銀色の壁が――まだまだぴくりともせずに覆っている。
「チョコちゃん……大丈夫?」
「ぴぎ!」
「あ、お返事できるんだ! よかったぁ」
【壁から鳴き声が!】
【知らないとホラーだよな、これ】
【鳴く壁とかホラー過ぎる】
【それにしても、ひなたちゃんが癒やし……】
【やはりロリっ子の笑顔は良い……】
【おっと、寝ちゃってるユズちゃんの寝顔もなかなかだぞ】
【でもさ、今日のユズちゃんってなんだか……】
【ああ……】
【ちょっと、凜々しいって言うか……】
【さっきのでそう感じるだけなんだろうけど……】
「……あ、あー! みなさん! ……あ、えっと。 ……そ、そうだ、リストバンド! 電波は! ……まだダメみたいですねぇ……いえ、さっきから『危ないけど命の危険を感じたら使って』って表示になってますけど……」
理央の声で、柚希以外は自分のリストバンドに視線を落とす。
【リストバンド使えないとはなぁ】
【使えてもどこに出るか分からないとか】
【普通はないもんなぁ】
【あったらこんな気軽にダンジョン潜れないし配信も見れないぞ】
【緊急離脱装置とかダンジョンでのHP制とか、安全がある程度あるからこそのダンジョン配信だもんなぁ】
【ダンジョン協会「ただいま救護班や臨時のパーティーを送っています。 その助けを待たれるのがベストですが、もし通路から敵がなだれ込んでる来るようでしたら即座に全員でリストバンドを使用してください」】
「あ、はーい。 あの、今ダンジョン協会さんがコメントに……」
ときおり通路の方から、モンスターのうめき声や硬い扉を叩く音。
だがやはりびくともしないシルバースライムに、4人は安心していた。
【シルバースライム……テイムできたら最強じゃね?】
【いや、ついでにユニコーンもテイムできたら最強の盾と矛が手に入るぞ】
【じゃあその最強の盾と最強の矛、どっちが強いの?】
【矛盾の話は止めろぉ!?】
【草】
【いやまあ同じテイマーのモンスターだし、ありえないけどな】
【でも、やっぱりユズちゃんって……】
【ちょっとおかしい……】
【お前……俺たち末裔にケンカ売ってんのか?】
【違う違う……ああいや、あのちょうちょ具合はちょっとおかしいけど……】
【ああ、それはちょっとおかしいからしょうがない】
【草】
【ユズちゃんのチャームポイントだからな!】
【ユズちゃん、今度ひなたちゃんと一緒にちょうちょ見上げる配信とかやらない?】
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