103話 怒られて恥ずかしくて、月岡さんが気になって
「きゅい! きゅい!」
「ぴぎっぴぎっ!」
「もー! ごめんってばぁー!」
「……これ、何があったんですか……?」
「その……柚希さんが、揺れが収まったと思って立ち上がってしまったところに……」
あいかわらずに頭の上でげしげししてくるおまんじゅう、髪の毛をぐいぐい引っ張ってくるチョコ。
すっごく心配してる気持ちが届いてくるけど……結構痛いんだってば。
「ちょうど大きめの岩が俺たちの上に……いや、柚希さんが立ち上がって、スライム……だっけ?が守ってくれたおかげで岩が砕けたから、俺もケガせずに済んだんだけどね……」
「え、ええ……こんなに大きな岩……いくら中級者の月岡さんでも……」
【モンスターたちに怒られ続けるユズちゃん】
【涙目でかわいい】
【結果的にはユズちゃんの行動が正解、でも怒るしかないからなぁ】
【でもやっぱでけぇな、岩】
【50センチとかないか?】
【今は砕けてるけど、もっと大きそうだぞ】
【こんなの降ってくるんだ……ダンジョンの更新ってこぇぇな】
【というか運悪かったら *かべのなかにいる* になってたところだぞ?】
【生え替わり……ダンジョンの中身が総とっかえだからなぁ……】
【ひぇっ】
【リストバンドも、一応身体に異常が起きた瞬間に作動はするだろうけどさぁ……】
【死にはしないだろうけど怖すぎて】
土煙が収まったそこは、狭い通路になってた。
……ってのを落ち着いて話したいんだけども、僕の頭の上で2匹がお説教してるから集中できない。
【2人がすれ違える程度の広さな通路か】
【狭いな】
【モンスターも居ないか】
【岩が落ちてきたのは想定外だけど、予想よりは安全っぽい?】
【いや、ダンジョンの生え替わり……更新の期間はダンジョン内が不安定だって言うし】
【理央様ー! あと月岡ぁ! リストバンドで戻るよう言ってー!】
【月岡ァ!】
【お兄さんかわいそう】
【だって、ユズちゃんに上目遣いされてたんだぞ?】
【なんかユズちゃん、さっきからちらちら見てるんだ……】
【おのれ月岡ぁ! 今すぐ距離取れぇ!!】
【俺の手元にあるげろげろの始末も取れぇ!!】
【草】
【しょうがないよ、ユズちゃんの視聴者の大半はユニコーンの末裔だから……】
「ほーら、みんなと話すから柚希先輩へのお説教は後でねー。 ……ふぅ。 さて、どうしましょうか」
「あ、ありがと、理央ちゃん……」
頭をげしげし、髪の毛ぐいぐいから解放された僕は、ほっとひと息。
……光宮さんの手元のおまんじゅうは、まだ僕に向かって脚をしゅっしゅって突き出してる。
あと、チョコは……なんか波打ってる……だからごめんってば。
【まだ怒り足りない様子の2匹】
【おまんじゅう……もっと叱ってやってくれ……】
【ユニコーンはまだ分かるけど……スライムのは……何……?】
【さぁ……?】
「……モンスターさん、来ないみたい……?」
「廊下だから、巡回ルートじゃなければ来ない、でしたか……」
「念のため、そっち側はひなたさんに任せても良いかな。 俺はこっち側を」
「あ、はいっ」
「……でも俺は、今すぐにリストバンドで戻るべきだと思う。 さっきは手元すら見えなかったし、頭を守るので精いっぱいだったけど……」
月岡さんが、マントをばさっと……何あれかっこいい、僕もやりたい……しながら通り過ぎる。
「……すんっ」
……けど、さっきまでより濃い血の臭い。
それも、ケガとかしたときのじゃなくって、お母さんとかの……。
これ、月岡さん……まずいんじゃ?
あ、だからマントでさりげなく隠してるのかな。
「あの……」
「……駄目です。 まだ生え替わりの影響か、電波が不安定みたいで……」
「配信のコメントも、ちょっと止まったと思ったらだーっと流れて来ますもんね……」
「? リストバンド、また使えないの?」
「いえ、使えます。 使えますけど……電波状況が悪いと、変なとこに飛ばされたりして事故りやすいって……」
……まぁいっか、マントで隠せてるんなら。
みんなだって月岡さんのこと「男の人」って思ってるだろうし、「ハーレム築いてる」って視聴者さんたちも思ってるみたいだし……きっと、かっこつけてるとしか思われないよね。
……けど、マントってかっこいいよなぁ……いいなぁ。
僕、かっこよさとは無縁だから、せめてそういうのでなんとかならないかなぁ……。
【ああああああ】
【ああああああ】
【理央様! 理央様! あ、危険じゃないです】
【ある意味で危険です、ユズちゃんが】
【吊り橋効果……】
「……柚希先輩!」
「え? 何?」
月岡さんのマントが、肩のとこの防具から出てるのをぼんやり見てたら、頭にどさっとおまんじゅうを載せられる感覚に、光宮さんががしっと振り向かせてくる感覚。
「ちゃんと! 私たちの話! こっち見て! 聞いてください!」
「? うん、聞いてるよ? 脱出したいけどリストバンドが不安定だから困ってるんでしょ?」
「……そうです、分かれば良いんですっ」
ぷりぷりしながら、チョコも手渡してくる光宮さん。
……光宮さんって、こうやっていきなり怒ってくることあるんだ。
お母さんとか女子とかに相談しても、それは僕が悪いって言われるし……何でなの?
【きょとんとしている】
【やっぱりなんにも分かってないユズちゃん】
【ユズちゃん……君はそのままでいて……】
【ころっと行っちゃいそうな怖さがあるけど、それがユズちゃんのかわいさなんだよなぁ】
【まぁ、今回ので本当に危険ならシルバースライムが守ってくれるって分かったし】
【それ、男にニコポしちゃうのとか守ってくれる?】
【あああああ】
【どうして……どうしてあの子は……】
【やっぱり世の中※なんだ……】
【うう……】
【草】
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